第29話 サプライズ計画 前編
桜の木の枝、彼はそこで、ある一室を、優しい微笑みを浮かべながら、見守っていた
「・・・」
〈マスター、行かないのですか?〉
「レヴィン ・・今日は会いには行かないよ、 ただ、会うかもしれないってこと」
しばらくして、彼についている腕輪がウィーンと唸る
まるで「あぁ」とでも言うように
〈そういう事でしたか、なら変装魔法は私がやってもいいですか?〉
「物分りが早くて助かるよ」
〈マスターに造られた最高傑作です それに数少ない、マスターのお役に立てるチャンスですから〉
ふふ、と彼は笑う
「それもそうだね、じゃあ、よろしくね」
〈はい〉
うれしそうに答える腕輪──レヴィンは、彼の足元に金色の魔方陣を展開させた
〈どうでしょうか?〉
彼──リーディは、自分の姿を確かめていた
「・・うん、バッチリ ありがとう」
〈この位、サポートロード、できなくては主の支えなど不可能です〉
「そう・・だね」
少しぎこちない笑みを浮かべると、上空に円盤状のものがある、ビルに入っていった
この時、レヴィンは考えた〈マスターの感情が喰われていっている〉と
入り口からすぐ側の、受付嬢の下へ行き、問う
「すいません アンサ=ナイアントの部屋は何処にありますか?」
「・・何故ですか?」
「私アンサの兄でして、少し様子を見たいな、と」
顔をしかめていた受付嬢だが、この言葉を聞くと、「成る程」という顔で、答えてくれた
「あちらの訓練舎の005番になります」
「ありがとうございます、では」
僕は早く妹に会いたいというような顔と仕草を見せ、さっさと訓練舎に向かった
コンコン
と、[005]と書かれた扉をノックする
部屋の中から「どうぞ」と聞こえたので、中へ入る
「失礼します」
「・・何方ですか?」
「貴方の兄・・という事にしていてください」
「何のことだっ! 答えろ、貴様は何者だ!」
ピッ、と二本の短剣をこちらに向け、構える
すると、アンサの顔が驚きに変わっていた
「貴方はもしや・・師なのですか?」
「正解、腕を上げたね」
「・・ハイ!」
パッと笑顔になるアンサ
その瞬間、変装を解く
「師よ、この時期に来るとはもしや・・」
「その通り、僕と一緒に来ない? ・・とても辛く険しい道のりだけど」
「勿論です、どんな道であろうと、師に着いて行きます」
「そう ・・今日はお別れ会?があるんだったよね」
「そうですね・・これからですね」
「うーん、じゃあ・・・」
「こんな流れでいい?」
「それはまた・・面白そうですね」
僕の提案に、悪そうな笑みを浮かべるアンサ
「・・でしょ?」
僕も、悪そうな顔をする
「「ふふふふふふふ・・・」」
この二人、あまり良い性格ではないようだ・・




