メイドと二人の背の高い男
己の浅慮を呪うのはやぶさかではないが、この状況は非常にいただけなかった。
どれくらいいただけないかと言うと、見た瞬間に不味いと思うぐらいに、いただけない。この状況を打破できるなら、俺も今頃はメイドなんぞやってなくて、もっと真っ当な人生を歩んでいただろう。
結局、千晴の携帯電話が使用可能になるまでの間、俺達はゲームセンターで時間を潰した。
仮面を被っている千晴は言葉遣いや身のこなしこそいつもと違うが、根っこは一緒だ。それならば、一刻も早く元に戻してやるべきだと思い、何かに夢中になれる場所を探した結果だ。
家でゲームをしたときに、千晴はけっこうゲームを楽しむ人間だとわかったのが幸いした。レースゲームやシューティングを中心に何度かプレイするうちに、次第に千晴は元に戻っていった。
「あぅぅ、恵一、そんなに前に出ると、すぐにやられちゃいますよぅ」
いつもの、ちょっとおっかなびっくりした様子の口調を聞いて、逆に俺が落ち着いたのだから、俺達は平和な人間だと思う。
普通なら、仮面を被った千晴の方がきびきびとしていて、話しやすいはずなのにな。
携帯電話を受け取った千晴は、終始御満悦だった。
顔をほころばせ、お下げをひょこひょこ揺らしながら歩く千晴に、俺は思わず相好を崩した。
しかし、である。
「よぉ、さっきはよくもやってくれたな」
ごく最近。いや、ついさっき聞いたことのある声を聞いて、俺と千晴は硬直した。
「まさか、二人ともそんなに出来るとは思ってなかったぜ。まあ、それでも面子は取り戻さなきゃいけねえ」
くるりと、振り返る。十人近い、いわゆる不良たちが、俺と千晴の後ろに着いていた。先ほどの金髪が先頭に立っている。
「先に手を出したのは、そっちだろ。ほっといてくれないか?」
二人ならともかく、この人数では分が悪すぎる。
いくら千晴が護身術を身につけているとしても、これでは取り囲まれて終わりだ。そもそも、もう仮面なんて被らせる気はないので、そんなことは意地でもさせないが。
「言っただろ。面子の問題だってよォ」
金髪は俺の言葉を一笑に付して、それを合図に男達が俺達を取り囲んだ。
「ここじゃ何だ。もっと落ち着ける場所へ行こうや」
「……千晴、逃げれそうか?」
「あぅぅ……流石に、仮面を使っても無理です」
「よし。じゃあ使うな」
それなら、それでいい。俺が意地でも護るだけだ。
周囲を見る。俺達の様子がおかしいことに周囲も気付いているようだが、声をかけたり割ってはいるような人間はいない。
誰だって、こんなことに関わり合いにはなりたくないよな。俺だって、そうする。周囲を責めたらいけない。
俺が、あのとき自制してきちんとやり過ごしていればこうはならなかったはずだ。これは、俺の責任でもある。
「わかった。せめて、この子だけでも許してやってくれないか?」
「アホ。そいつに投げられたヤツが一番重傷だってんだ」
くそ、千晴までしっかりターゲットに入ってる。ますます俺はアホだ。自分の御主人様を危険に晒してしまうなんて。
「ほら、着いてこいよ。逃げたら、どこまでも追っかけるぞ」
金髪の言葉は例によって俺を笑わせるような陳腐なものだったが、流石に笑いは込み上げてこなかった。周囲には目をぎらつかせた十人以上の不良共。
平和で穏やかな陽桜市にも、こんな奴らがこんなにいたなんて、わからないものだ。
「……わかった。着いていく」
ここは素直に従って、隙を見て千晴だけでも逃がそう。うまく俺が囮になれば……いや、無理か。流石にこの人数を相手に一人で立ち回っても、千晴を追うヤツも出てくるだろう。もっと、何かいい方法を考えろ。そう、何か。こいつらに気付かれずに、助けを呼んだりできれば。
「大声出したら、ここでやっちまってもいいんだぜ?」
「……くそ」
やっぱり、知られちゃ不味い。探せ。緊急時なんだから、たまには俺の脳味噌もまともに働け。
「……緊急時?」
ふと、頭にのぼった言葉を反芻する。緊急時に、使える。そんなものが、確かにあったはず。
「……け、恵一……」
「千晴……!!」
俺の服をぎゅっと握りしめる千晴を見て、ぱっと俺の脳内に一つの答えが出た。
これしかない。時間さえ稼げば、この方法で、上手く行くはずだ。
俺はポケットに手を突っ込み、大人しく不良達についていく。絶対に気取られてはいけない。バレたら、この場でタコ殴りだ。
「ほら、さっさと歩け」
金髪が俺を小突く。
よし、これがチャンスだ。
「わかってるよ。まったく、なんで俺達が殴られるために歩かなきゃいけないんだよ、畜生!」
「ああ、うるせぇよ。大声出すな!」
「これぐらい言わせろよ。別に周りの奴らに助けてって言ってるわけじゃないだろ。それより、どこでやろうって言うんだよ。この陽桜通りから近いのか!?」
「うるせぇ。すぐそこだよ!」
「すぐそこじゃわかんねぇよ!」
「一々声がでかいヤツだな。まあ、最後の悪あがきってか。死に場所ぐらい教えてやる。こっから歩いてすぐ、工場跡があるんだよ。誰も邪魔できねぇよ」
「工場跡か!」
それだけ大声で言い切り、黙る。
これだけ情報を引き出せば、何とかなる。ついでに、可能性は低いが、もう一手打つか。
使えるモノは何でも使わないとな。
俺達が工場跡についたのは、それから五分ほどだった。
外からでも工場跡とすぐわかるぐらいの、ボロい廃墟で、元々は多くの機械が並んでいたであろう場所は、今やがらんどう。
喧嘩をするにはもってこいの場所と言えた。
「さぁて、とりあえず男から黙らせておくか」
金髪は恨みを晴らすと言わんばかりに、俺を睨み付けてきた。相変わらず笑える顔だ。
「その後、女をみんなで襲っちまうか」
不良共から、下卑た声が漏れる。思わず頭に血が上り、ブチ切れそうになる。
「恵一……あ、あたしは大丈夫です!」
「……千晴?」
「さっき、何かしてましたよね。それなら、熱くなったら駄目です」
「……さんきゅ。落ち着いた」
俺は千晴の頭を少し撫でて、大きく息を吐いた。
千晴は言葉ではそう言いながら、脚はがくがくと震えている。怖くないはずがないのだ。
それなのに、必死で冷静でいようとしている。仮面すら被らずに。
「……そういや、さっきのデブはどうしたんだ?」
俺は千晴から金髪に向き直り、話題の変更を試みた。
今は、少しでも時間を稼がないと。
「けっ、全身強打で病院だよ、クソ!」
「そ、そうか……しかし、仇討ちもわかるが、最初に手を出したのはそっちなんだぞ。俺達だって、喧嘩する気はなかったんだ。第一、さっきお前、俺を嫌いとか言ってたよな。ありゃ何でだ?」
「うるせぇ。てめぇみたいな幸せそうなツラしてるヤツァ、大嫌いだよボケ」
よし、乗ってきた。あとは、最近身につけつつある技で、何とか凌ぐか。
いくぞ、高木の必殺技。やたら良く回る舌。
「そんな地顔に文句を言われても困る。それに、幸せなのはいいことだし、幸せなツラしてるのも当然だろう。見てみろ、俺の隣には、こんなに可愛らしい彼女がいるのだぞ。少々幼い顔立ちながら、ぱっちりと大きな瞳に、ちょこんと可愛らしい鼻。口元はまるでひなげしの花が咲いたかのように愛らしい。栗色の髪はすごく柔らかくて、歩くたびにひょこひょこと揺れるお下げもまた、たまらなく可愛いだろう。それに、とても頭も良いし、運動神経だってかなり良い。絵はあまり上手くないけど、俺みたいな男と一緒に暮らしていても、文句の一つも言わず、むしろ笑顔で俺を褒めてくれるぐらいに出来た子なんだ。それだけじゃないぞ。この子は友達を見る目だって確かなモノだ。個性派揃いだけど、みんな根は良い子ばかり。もう、この子の人柄の良さが友達関係だけでわかってしまうぐらいだ。性格だって、そりゃもう優しくて、ちょっと引っ込み思案だけど、最近じゃ割と自分の意志だって伝えるようになってくれてな。俺としては嬉しい。ほら、今日は携帯電話を買いに来たんだ。自分から何かを欲しがるなんて、ほとんど初めてみたいなモンだ」
「あぅぅ……ほ、褒めすぎですよぅ」
「いいや、むしろまだ足りないな。俺は後、一時間は喋る」
「……うるせぇ、うるせぇ、うるせぇえ!!」
俺がさらに千晴の良いところを挙げようとすると、金髪が大声を上げた。くそ、ここからがいいところなのに。それに、あまり時間も稼げていない。
「やっぱてめぇは一遍、死なす」
お、コノヤロウ。中々良いパス投げるじゃないか。いくぜ、再び俺のターン!
「そう簡単に死にたくない。大体、なんで隣にいる子を説明しただけで俺が死なないといけないんだ。もし説明しただけで死ぬ必要があるのなら、世界中で愛を囁く人間が皆、死ななくてはならないだろう。いいか、愛を囁くことがなければ、人は愛し合えない。それがどれほどの危険をはらんでいるのかわかっているのか。政略結婚も影を潜め、今や結婚は自由恋愛。つまり、愛を語るという行為なくして、人は新たなる命を産むことはない。もし、俺の行為に死ぬ理由があるならば、それは人類が滅亡する理由と言うことになる。君は、それほどの重みを持って喋っているのか?」
「な、なんだテメェ。頭おかしいんじゃねえのか?」
「おかしくなどないさ。改めて考えてみよう。いいか、人が生きる理由を、生物学的に考察するんだ。人類に限らず、ありとあらゆる生命体は子孫を残すために生まれてきている。種の保存という言葉を聞いたことがあるだろう。それは、DNAに刻まれた、人間としての本能。否、動物……それよりも、もっと根源的なモノ。生命の本能なのだ。そして、人間は恋せずして子どもを残せない。そういう文化を築いてきた。だから、愛を語る。好きな人と一緒になるために。幸せのために愛を語る。君は、その行為を否定したと言っているのだ。つまり、それは生命を無碍にするということ。命を大事にしないヤツなんて、大嫌いだ」
「あ、あたしだって……そんなこと言う人、嫌いです」
「ああ、そうだよな。ほら、何か反論はあるか。聞こうじゃないか。俺達が納得できる答えを用意してくれたのなら、そのときは大人しく殴られよう」
一気にまくし立てて、少々喉が疲れた。
高木のやつ、よくこんなことして平気だな。
「……あー、もううるせぇよ。考えたら話なんざ聞く必要ねぇじゃねえか。おい、やっちまおうぜ!」
しまった。話が難しすぎたのか、こいつら会話のキャッチボールを放棄しやがった。これだから馬鹿は嫌いだ。
高木を少しは見習え。あいつはどんな暴論だろうが、それに輪をかけた暴論で返して来るというのに。
「まあ、そういきり立つな。まだ焦るような時間じゃない」
「うるせぇ。いい加減黙れ!」
「ち、ここまでか!」
金髪の隣にいたアフロが業を煮やしたのか突進してくる。
こうなりゃ意地だ。タックルをもう一度お見舞いしてやる。
「おらァ!」
「ぐぅッ!」
背中に激しい痛みを覚えて、思わずうずくまる。
このやろう、突進してきたと思ったら、蹴りじゃねえか。
「恵一!?」
「ぬがぁ!!」
千晴の声を聞いて、我に返る。この前のプールで編み出した必殺技だ。
うずくまり、相手の脚が目の前にある今がチャンス。一気に両手を伸ばし、アフロの脚を持ち上げる。
「うが!?」
「どおおりゃああ!!」
思い切り豪快に脚を引っ張りあげ、アフロが尻餅をつく。そのまま一気に立ち上がり、アフロのそのもさもさした頭に、サッカーボールキックを思い切りぶちかました。
アフロは脳震盪にでもなったのか、目を回し、大の字に倒れた。まずは一人。
「くそ、全員で行くぞ!」
「げ!?」
金髪の言葉に、まだまだぴんぴんしてる不良共が一斉に俺めがけて殴りかかってきた。
こっちはアフロの蹴りのダメージも残ってる。避けきれない!
「ぐッ!?」
こめかみ辺りを殴られる。咄嗟に腕で身体をガードするが、その瞬間、背中を思い切り殴りつけられる。
「うぐ……ぐあああっ!?」
バランスを失い、倒れる。
ここぞとばかりに、男達が俺を蹴り飛ばしてくる。必死で身体を丸め込み、ガードに徹するが、徐々に身体が麻痺していくのがわかる。
「け、恵一ッ!」
「うるせぇ、てめぇは後だよ!」
「うぬ……ち、千晴に手を出すな!」
千晴の大声で一瞬、男達の動きが止まる。その隙に、目の前にいた男の股間を、思い切り蹴り飛ばした。
「おおおおお……!?」
男が声にならない声をあげて倒れる。すまん、緊急事態とは言え、そこは痛かっただろう。
「くそ、こいつまだ!」
「いい加減、大人しくしろ!!」
「け、恵一〜〜ッ!!」
再び俺への攻撃が始まる。千晴の泣きそうな声がギリギリで俺の意識を保っているが、ガードしている腕に感覚がもうない。このままじゃ、すぐに……
「うわ!」
「ぎゃあッ!」
「アッ――!」
意識を失いそうになったときだった。不意に数人の男達の悲鳴が聞こえ、俺への攻撃がストップした。
一体、何が起こったのか……そう思い、顔を上げる。そして、ようやく俺は、自分の作戦が成功していたことを知った。
「ふむ。よもや仁科と千晴ちゃんが不良に絡まれるとはな。こういう喧嘩は不良同士でするものと思っていたが」
「高木は机上の空論ばかりだね。こいつを呼ぶ必要は無かったと思うのだけど……けど、俺を呼んだのは正解だ」
俺の目の前には、二つの長い人影。
相変わらず学生服を着たひょろ長い男と、彼に良く似た、細身だが鍛え上げられた身体を持つ男。
高木聖人と、伊達倭。
「な、なんだてめぇら。双子のクセに似てねぇ!」
「やれやれ。僕と伊達を双子と間違えるとは……」
「万死に値する」
次の瞬間、俺は我が目を疑った。伊達が少し動いたかと思うと、その長い足が男の顎を打ち抜いていたのだ。モーションが全く見えなかった。同情の一人息子で強いとは思っていたが、まかさここまでとは。
「このとおり、体格は似ていても全く違うんだよ。余計なことを言うから、こうなる」
「ふむ。それではまるで僕が弱いようだな。納得がいかん」
伊達がやれやれと肩を竦めると、高木が眉をしかめて近くで呆然としていた男に殴りかかった。
「え……うがッ!?」
予想外の攻撃に男は沈没する。高木は動きこそ伊達と較べるまでもないが、長いリーチを完全に活かしきった、相手の間合いを惑わすような動きをする。荒々しいのに頭脳プレーとは、流石高木。
「倭さんに、高木さん……け、恵一が呼んだのですか?」
「あ、ああ……携帯電話でな」
からくりはこうだ。
男達に囲まれ、工場跡に向かうときに、俺はポケットに入れていた携帯電話を一切見ずに操作した。
まず、スピーカー状態にして、電話に口を近づけなくても聞き取れるようにして、大声で現状を高木に伝える。やたらと大声で、セリフじみた物言いをしていたのは、そのためだ。
そして、それを録音して、伊達にメールで送った。伊達に送る他にも、まとめて数人に送ったので、誰か気付いてくれると思ったが、格闘技の経験者である伊達が駆けつけてくれたのは僥倖と言うしかない。
突然現れた二人の男に浮き足立つ不良共の間をすり抜けて、千晴が俺の元にかけつける。
「恵一……大丈夫ですか?」
「ああ。ガードしてたから、腕とか背中は痛いけど、さほどダメージはない」
実はそれでも全身痛いんだけど、そこはそれ。男の矜持。
「……恵一は嘘が下手です」
千晴は泣きそうな顔をしながら、それでもくすっと笑った。どうやら、お見通しらしい。
千晴は俺の頭を自分の膝の上に乗せて、俺を楽な体勢にしてくれる。
「高木と伊達に加勢しなきゃいけねぇ」
「大丈夫ですよ。倭さんは道場の師範代ですし、高木さんだって……ちょっと想像してたより強いです」
ちらりと、俺と千晴が二人のノッポを見る。
四人を相手にしながら一発の攻撃も貰っていない伊達。
圧倒的なリーチと、伊達のフォローもあってか、一人ずつ確実に仕留めていく高木。
「くそ、逃げろ!」
「阿呆、僕の友人を殴っておいて、逃げるとは言語道断」
「珍しく意見が合うな。全員断罪してくれる」
逃げ出そうとする不良にも容赦ない。背中を思い切り蹴り飛ばし、体勢を崩したところにトドメをさしている。
つか、あの二人、マジで強い。あっという間に、不良共は全員、地に伏せていた。
「ふむ……まあ、こんなものか」
「思っていたより弱かったね」
二人はやれやれと肩を竦め、同時に俺のところに歩いてくる。
「うむ、千晴ちゃんは護りきったようだな。それでこそメイドだ」
「仁科君の身体に異常も無いね。打ち身だからしばらく跡が残るが、勲章のようなものさ」
二人がそれぞれ肩を貸してくれる。それに引っ張り上げられるように俺は立ち上がり、心配そうに様子を見ていた千晴の頭を軽く撫でた。しかしこいつら、背が高いので貸された肩も高すぎて、捕まった宇宙人みたいになってしまっている。
「このまま帰るのも青春のようで悪くはないが、恥ずかしいだろう。千晴ちゃん、すまないが戸田さんに連絡して、迎えを寄越しては貰えないだろうか?」
「は、はい……あ、でも連絡、どうしたら取れるか……」
千晴はおろおろと周囲を見渡す。戸田のおっさんの電話番号は俺も千晴も覚えている。だが、千晴は普段、家の電話か公衆電話でしかかけたことがなかったんだな。だが、今は違う。
「千晴、良かったじゃないか。早速、使うときが来たみたいだぞ」
「え……あ、はいっ!」
千晴はぱっと顔を輝かせ、スカートのポケットから携帯電話を取り出し、ちょっとワクワクした様子でダイヤルしはじめた。
「しかし、助かったぞ。お前らが来なかったら、マジでシャレにならなかった」
千晴が戸田のおっさんに連絡を取る間に、現在進行形で俺を助けてくれている二人に礼を言う。
「何、当然のことだ――」
「俺には持論があってね」
二人が同時に口を開き、俺越しに互いを見て、そっぽを向く。忘れてた。こいつら仲悪いんだっけ。
「「友達を大切に出来ない人間は、誰も大切に出来ない」」
そして、何とも奇妙なことに、二人とも同じフレーズを呟いた。
二人は驚いたように再び顔を見合わせ、そしてさっきよりも一層激しくそっぽを向いた。
「なるほどな」
俺は一人頷き、二人にばれないように笑いを噛み殺した。
こいつらが仲が悪い理由がわかった。似すぎているからだ。勿論、良い意味でな。
「御主人様は中学生」は恋愛要素を意識しつつ、つい友情を基軸に据えてしまう頭の悪い作者が書いた作品です。