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メイド、文化祭の終了

 教室に戻ると、芦田女史がメイド服を着て、華麗に立ち回りしていた。

「あら恵一さん、どうですか?」

 芦田女史はにこやかに微笑みながら、くるりとその場で回ってみせる。うむ、大人の魅力にメイド服が合わさって今までの誰よりも違う力がある。

「裏では戸田さんが高木と二人で動いてくれているよ。客も少し落ち着いたし、なんとかなった」

 雄介がやや疲れた表情で教えてくれた。どうやら俺達が抜けた間も相当客が来たのだろう。元気そうなのは疲れを知らない姫子といつもにこにこしている天橋ぐらいだ。涼子も、山下も、巴も、あの漣もどこか疲れた感じがしている。

「よし、俺達も早速出る。巴と漣、休憩させよう」

「ああ、二人ともよく働いてくれたしな。巴ちゃんは物腰も丁寧だし、漣ちゃんは裏方で相当頑張ったし、本当に助かるよ」

 雄介は早速二人を呼び止めて、休むように言った。流石に疲れが溜まっているらしく、巴も漣も素直に雄介の言葉に従う。

「じゃあ、あとはよろしくお願いしますね、お兄さん」

「ぬかるなよ」

「おう、ゆっくり休んで来い」

 俺は二人の頭を軽く撫でてやり、すぐにオーダーを取りに向かった。

「……漣、やっぱりお兄ちゃんほしいよ」

「ふむ、こんな兄なら、悪くないな」

 二人の呟きは、聞こえなかったことにしておいた。





「よし、後30分だ。新しいお客さんはもう入れないし、ゆっくりしてくれ。後は俺と実加子で動くから」

 あれからさらに数時間、交代を交えながら、ようやく文化祭の終わりが見えた。

 俺たちは雄介の言葉に従って、山下を残して隣の教室へ移動した。

「お疲れ様です、今飲み物を淹れますので」

 教室で動いてくれていた戸田のおっさんが皆に順番に麦茶を渡してくれた。この人にも影ながら世話になった。芦田女史といい、三人娘といい、本来なら俺が引き受けた助っ人だと言うのに、本当に助かった。

「ありがとう、せっかくの休みに」

 俺にも麦茶を出してくれた戸田のおっさんに頭を下げる。

「いえ、久しぶりに若い人と一緒に動けて楽しいひと時でしたよ。特に高木さん、若いのに中々……この戸田、ただ長く生きただけの爺に思えました」

「いや、僕のほうこそ戸田さんと話が出来て有意義でした。是非一度、ゆっくりとお話をしたいものです」

 隣にやって来た高木が、珍しく真正面から人を称えた。流石、年上の人間には礼節を尽くすらしい。

「戸田さん、私たちはそろそろお暇しましょうか」

 いつの間にか普段着に着替えていた芦田女史が戸田のおっさんに話しかけた。戸田のおっさんはそうですな、と頷いて、疲れた様子も見せずにたおやかに微笑んで見せた。

「それでは皆さん、今日は楽しかったです」

「お疲れ様でございました。ごきげんよう」

 それだけ言って二人は足早に教室を出て行った。最後まで残っていればいいのに、と思ったのだが。

「打ち上げやら、後夜祭やらは、若い人間だけのほうが盛り上がると思ったんだろう。戸田さんや芦田さんは中々頭が切れるね」

 高木はそれだけ言って、ふうと大きな溜息をついた。こいつも今日だけは口以上に身体動かしたようだ。

「さて、君達は着替えるといい。後夜祭、出るのだろう?」

「そういえば、そんなイベントもあったな」

 去年は面倒くさいのでサボってしまったのだが。

「恒例のフォークダンスも健在だよ。僕もどうやら、参加せざるをえないらしい」

 高木が苦笑して呟いた。なるほど、天橋に誘われたってわけだ。見た目とは裏腹に、天橋は押しが強い。

「君は誰と踊る?」

「いや、特に相手はいないが」

「それなら……否、やめておこう。君が踊りたい相手と踊るといい」

 意味ありげに笑って、高木は天橋のところに歩いていった。

「何を話していたんですか?」

 近くに居た巴がやって来た。

「いや、後夜祭でな。誰と踊るかって……」

「え、踊るんですか?」

「それがなぁ、相手がな」

「それなら……」

「それなら?」

「ち、千晴と踊るのはどうですか。兄妹なんだし、今まで離れ離れだったんですし、いい思い出になりますよ」

「千晴とか……」

 御主人様……か。なんか気恥ずかしいが、まあ妥当な線かもしれない。御主人様も俺以外に踊れるやつなんていないのだろうし。否、仮面を被っている今なら誰でも大丈夫かもしれないが。

「まあ、そのときになったら考えるわ」

「あはは、お兄さんらしいですね」

 巴は少し楽しそうに笑った。そして、大きく肩で息をする。どうやら相当疲れたらしい。

「少し、座ろうか。着替えるのは、後でもいいだろ」

「そ、そうですね」

 俺と巴は教室の端で腰を降ろし、壁にどっかりと背中を預けた。

「流石に疲れたな。巴にも世話になった。ありがとな」

「いえ、楽しかったですよ。恥ずかしかったですけどね」

「まったくだ」

 今ではもう慣れてしまったが、ふりふりのスカートを着て笑顔で接客するのは当初、かなりの勇気が必要だった。周囲のざわめきが全部自分を笑っている声に聞こえて、なんだかいたたまれなくなったのだ。今にしてみれば、祭りにはこれくらいなんということはないのだ。むしろ、休学中の俺にとってはいい思い出になったとも言える。

「んぅ……」

 隣で巴が微かに吐息を漏らす。見ると、疲れが溜まっていたのか、寝てしまっていた。不安定に頭が動く。

「巴、どうせならもたれてろ」

 俺は軽く巴の身体を寄せて、ちょうど巴に肩を貸すような状態にした。これなら、まあ多少なり眠りやすいだろう。

 しかし、今日は本当に色々あった。メイドの格好は昨日から覚悟していたことだが、思った以上の客の入りと、女装チームへの人気。そして何より、御主人様の許婚という伊達という男の存在。

 こう、どこか皮肉的な、高木に似ているが、どこかざらっとした感じの男。俺を動揺させることを承知で御主人様の許婚と名乗り、そして御主人様とは結婚する気はないと言った、不可思議な男。

「……仁科」

 声がかかる。見上げると、伊達―――もとい、高木が立っていた。

「伊達に会ったらしいな」

「―――知り合いか?」

 そういえば、伊達も高木のことを逐一気にしていたようだ。何か因縁でもあるのだろうか。

「知り合いというより、互いに好かない関係というかな。気が合わない」

 高木にしては、珍しく感情的な意見である。

「伊達は……悪い男ではない。物腰も穏やかで、人当たりもいい。しかしな、あいつは……」

 高木はふと、そこで言葉を切った。

「高木?」

「いや、これは仁科には関係のない話だった。すまない、忘れてくれ」

 本当に今日は珍しい。高木が言葉を間違えるなんて。まあ、疲れているということもあるのだろう。ここは素直に、聞かなかったことにしておく。まあ、そうは言っても、忘れられるものでもないのだが。

「それよりも、巴ちゃんと仲睦まじいな。まるで恋人だ」

 俺の肩に頭をもたげて寝息を立てている巴を見て、高木が苦笑した。まあ、見るところから見ればそう映るのだろうが、御主人様の友達だし、なんだか妹みたいな気がして、これといって不自然には思わない。

「妹みたいなもんだ」

「そう言えば、姫子ちゃんも当麻の妹―――漣ちゃんも、『お兄さん』と呼んでいたな。妹がいっぱいだな、仁科は。まるでゲームのようだ」

 俺は12人も妹を作る気はない。というか、元々妹なんてひとりも居ない。

「まあ、巴ちゃんは兄が欲しいと言っていたし、ちょうどいいだろう」

「なんで高木が知ってるんだよ」

「なに、世間話でね」

 そう言えば、巴がメイド服着てきたときも、高木ははしゃいでいた。巴がお気に入りなのだろうか。まあ、巴は年齢から見ても礼儀正しく、良識があるし、高木の好みなのかもしれない。それを言ってしまったら、天然選手権で一位をとれそうな天橋の立場がなくなってしまうのだが。

「ふむ、そろそろ時間だ。僕は後夜祭の準備に行くよ。生徒会の仕事だからね」

 そう言って高木は巴の頭を軽く撫でて、珍しく普通に微笑んで出て行ってしまった。

「……あれ?」

 高木に撫でられたおかげでか、巴が目を覚ました。とろんとした目を少しこすって、俺の顔を見上げる。

「わ、す、すみません。もたれちゃって……」

「いいって、疲れてたんだろ?」

 恥ずかしそうに俯く巴の頭を再び撫でてやる。なんだか、本当に妹のような感じになる。

「……お兄さん、さっきも撫でてくれましたか?」

 目を細めながら、おずおずと巴が尋ねてきた。

「いや、さっきは高木だったな。どうしたんだ?」

「その、なんていうか。ちょうど、夢を見ていたんです。お兄ちゃんができる夢……優しくて、なんていうか、頼もしい……高木さんが、撫でてくれたんですね。なんか、本当にお兄ちゃんに撫でられてる気がして、目が覚めちゃいました」

 あはは、と巴が笑った。

 ―――そうか、巴の兄の理想。普段はぼうっとしていて、いざとなったら頼りになるって。

 どこか、高木に似ている。ぱっと見ただけでは朴訥な男だが、実は頼りになる……もしかすると、高木みたいな男が巴の兄としての理想なのかもしれない。

「巴、やっぱり兄貴が欲しいか?」

「え……はい。そうですね、この前も言いましたけど、憧れます。さっきも、漣のお兄さんが来てたんです。優しそうで―――漣はネクラって言ってたんですけど、私は……」

 そう言えば高木も漣のことを当麻の妹、と言っていた。高木を指名したカップルの男も当麻であったし、彼が漣の兄だったのだろう。確かに優しそうな男だった。

「そっか。なあ、巴。兄弟って血の繋がりだけなのか?」

「え、血が繋がっているから兄弟でしょう?」

「そうだけどさ、そういう普通の兄弟みたいな関係って、血のつながりが必要なのか。別にそんなものなくたって、お互いが兄弟だって思えれば、それでもいいんじゃないかと思ってな」

 兄弟になる、というのは無理でも、兄弟と思い合えるということは、別に難しいことではない。

「誰か、兄になってほしいヤツがいればの話なんだがな」

「………そうですね。お兄さんは千晴のお兄さんだし、無理ですから……やっぱり高木さん……でしょうか。今日初めて会っただけですけど、なんていうか、すごくかっこよかったです。私が恥ずかしがっていたときも、なんだかあっという間に気を楽にしてくれて」

「そうか、そうだよな。やっぱり高木だよな」

 俺も中々、いい目をしている。高木も巴を気に入っているようだし、高木の性格からして断るとも思えない。

「あ、けど高木さん、恋人がいるんですよね。確かに歳は離れてますけど、いきなり他所の女が妹になったって言って、平気なんでしょうか?」

 あ、そう言えば天橋のことを忘れていた。確かにいきなりほとんど面識のない女の子を妹にしてしまったら、流石の天橋も気を悪くするのではないだろうか。

「そんなことないよー」

「ぬぁっ!?」

「きゃっ!?」

 いきなり目の前に天橋が現れた。いつの間にこっちに来ていたんだろうか。

「流石に恋人になるって言われたら困るけど、妹なら私はかまわないよ」

 吃驚する俺達をよそに、天橋はのほほんと言う。流石高木の彼女だけあって、行動が読めない。

「いいのか?」

「いいよ。聖人の妹なら、私の妹も同然だしね」

 出た、既に夫婦です発言。

「あ、寝取るのは駄目だよー」

「寝取る?」

「おいおいおい待て。中学生に何を言ってんだ」

 なんだか、ほんの少しだけ高木の苦労がわかった気がする。確かにすごくかわいいのだが、この調子ではひやひやものだ。

「冗談だよ。じゃあ、後でちゃんと聖人に言うんだよ。もし断られたら、私から言ってあげるからね」

 既にお姉さん気取りである。素で天然だが、なんというか、普通にいい人でもあるらしく憎めない。

「はいはい。それくらいにしときなさい。それより、そろそろ着替えないとね。男子はここでいいから、女子は更衣室に行くよ」

 半ば呆れた目をして、涼子がパンパンと手を叩いて皆に言った。皆、一様に動き出す。

「って、男子俺だけじゃん」

 雄介はまだ店だし、高木も出ている。

 実はメイド服、ひとりでは脱げない。構造が面倒な上に、後ろ手で解かないといけないものが多すぎる。

「涼子、手伝ってくれ〜」

 ちょうど教室を出て行こうとしていた涼子に助けを求める。

「な、なんで私なのよ!」

「他に頼めるか。それに俺にこれを着せたのも涼子だろ。最後まで面倒見ろ」

「い、妹さんがいるでしょ!?」

 確かに、それもそうなのだが、なんというか―――恥ずかしい。確かに毎日顔をあわせているし、一つ屋根の下に住んでいるとはいえ、出会ってようやく一ヶ月になるかならないかである。

「涼子との方が付き合いは長いんだよ。千晴とは最近会ったばっかなんだ」

 何度も言うが本当の妹でもない。口に出せないのが悲しいところだ。

「……ワケあり、みたいね。仕方ないか」

 涼子は大きく溜息をついて、俺の後ろに立った。


「ねえ、恵一。よかったら、話を聞くけど?」

「ん?」

 背中で幾つものリボンを解きながら、涼子はふと呟いた。

「妹さんと最近出会ったばかりって、おかしいじゃないの。昔聞いたときは、確か弟が一人いるだけだって、アンタが言ってたんだし」

「ああ、まあ色々あってな」

 巴たちについた嘘は俺が外国にいたから、突然兄という存在が出来たということだった。まさか、涼子にその嘘を使うわけにもいかない。

「言いたくないこと?」

「どちらかというと、言ってはいけないこと、だな」

 秘密にしろ、とは一言も御主人様の父親から言われたことはない。しかし、なんというか―――あまり周囲に教えていいようなものでもないと思う。妹と二人暮しだけでも、十分に妖しいのに、本当は妹でもなんでもない、大財閥の御令嬢のメイドをやっているとは、流石に言えない。俺のプライドだって、小さな女の子を御主人様と呼ぶことを知られたくないと言っている。

「休学するし、妹できるし……ま、ただのクラスメイトに教えられるようなことじゃないわけね」

「ただのクラスメイトって……一応、親友だって俺は思ってるんだけどな」

 そう。御主人様との生活が始まってからは、高木という友人が俺の親友となったわけだが、それまでは間違いなく涼子が俺の親友だった。気兼ねなく喋れて、他愛もない口げんかなんかもして、お互い言いたいことを言える関係だったはずだ。

「私はね、恵一。アンタを親友とは思ってないよ……いきなり会えなくなったってのに、何も言わないヤツなんて、親友って呼びたくないわよ」

「―――すまん」

「かまいやしないわよ。別に……親友でいたかったわけでもないし、ね」

「……おいおい、辛辣だな」

 ようやく全て脱ぎ終えた俺は、制服に袖を通して、涼子のほうを向いた。

「そうでもないわよ」

 涼子はふふっと、さびしげに笑って、やがて俺が下半身はパンツ一丁だということに気付いて、顔を真っ赤にさせて後ろを向いた。

「普通、ズボンから穿くわよ!」

「んなもん俺の勝手だ!」

 ズボンも穿いて、ようやくメイド服とおさらばできる。

「さってと。お、もうすぐ後夜祭始まっちまう。ってか、もう皆グランドに集まってるし!」

 時計とグランドを見て慌てる。別に出る必要もないのだが。

「私、まだメイド服じゃない。どうしよう、間に合わないわね」

 涼子があーあ、と溜息をついた。

「ん、踊る相手でもいたのか?」

「え、そういうわけじゃないけどね。学校のイベントだし、出ておいたほうがいいかと思って」

 こいつは、変なところで真面目だ。サボっても文句は言われないし、そもそも4分の1以上がサボるという後夜祭のフォークダンスなのに、だ。去年は、女友達と踊ったと言っていた気がする。そこまでして出る必要があるとも思えないのだが。

「恵一の所為ね。一人で着替えもできないんだから」

 涼子は大仰に溜息をつくと、やれやれと言わんばかりに肩をすくめた。なんというか、少し悔しいような申し訳ないような。

「……ん、あ。そうだ、こうしよう!」

 妙案を思いついた俺は涼子に近づいて、頭に乗っかっている白のフリフリの飾りを取った。

「あ、何するのよ」

「いいから、エプロンも脱いじまえ」

 そう言って素早く涼子の背中に回りこんで、エプロンの紐を解く。

「あ、こら、馬鹿。何する気……こ、こんなところで、駄目だよ……」

「何言ってんだ。ほら、見てみろ。これでバッチリじゃねえか」

 エプロンと頭の飾りを取ったメイド服は、多少見てくれはおかしいが、黒いドレスと言えなくもない。踊りの場にドレス、悪くはない。

「ま、まあ……これならね。でも、踊る相手いないのに、こんなカッコしてたら、余計おかしくない?」

「そこらへんは俺に任せろって」

 いかん、もう本当に時間がない。

 俺は珍しくいじいじとしている涼子の手を取って、走り出した。

「あ、恵一!?」

 吃驚して、なすがままに走り出した涼子が不思議そうに俺の名を呼んだ。

 まったく、肝心なときには勘の悪いやつである。

「相手なら、俺がやってやるよ。荒っぽいエスコートでよけりゃあな」

 

 


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