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短編

厚氷を割る君は

作者: 黒檀

 私の通う高校には、若き小説家がいる。


「ふうん。『若き才能・山本忠也は奇想の系譜に名を連ねた!』だって。ちやほやされちゃって、いい気にならないでほしいものね」

 大衆向け文芸雑誌を牛乳雑巾よろしくつまむ、親友の川久保(かわくぼ)麟太郎(りんたろう)。苦々しげな口調にふさわしく、数秒後にはその書評も読まずに教室の隅に放り投げた。

教室後方の黒板のど真ん中に当たり、があんと激しい音をたててそれは床に落ちた。なかなかに力を込めて放たれたようだ。こういった豪快な腕力を見ると、ああ、この人はやはり男だなあ、とくだらないことをあらためて思う。

彼が投げた雑誌にぶつかりそうになったクラスメイトは、気をつけなさいよと麟太郎に怒鳴った。不機嫌なとき、自分に非があろうとも彼は絶対に謝らないので、私が代わりに謝るしかない。彼女は怒りながらも拾ってくれて、しかも私たちの座っている席まで渡しに来てくれる。私は深々と頭を下げた。が、雑誌が返ってこない。頭を上げてみると、彼女は開かれたページを読んでいた。

「山本先輩の新しい記事かぁ。さすがは我らが壱国(いちこく)高校新聞部。毎度毎度、チェックが早いね」

 血の気が引いた。麟太郎に向かってそのネタを言うとは、良い度胸じゃないか。おそるおそる振り返ると、彼はにっこりと微笑んでいた。

「ありがと。やっぱり新聞部部長としては、我が校の英雄様の動向は逐一チェックしておかなきゃね」

 英雄“様”、と侮蔑の調子があることに気がつかないだろうか。

 彼は乙女よろしく頬杖をつきながら、もう片方の手ではシャープペンシルを指で高速回転させている。苛立っているときのくせだ。私は半ば奪い取るように雑誌を取り戻した。彼女は少し驚いていたけど、仕方がない。ありがとうと誠意を込めて伝えればなんとかなった。記事を楽しみにしているね、と笑って去っていった。

「あ、私は新聞部じゃないよ」

 その訂正は聞こえていなかったらしい。彼女はすっと教室を出て行ってしまった。

 私は新聞部員でなくて創作文芸部員。新聞部で、しかもその部長であるのは麟太郎の方。いつも一緒にいるせいで、おなじ部活の仲間だと思われている。この学校において、麟太郎があまりにも有名な新聞部部長兼編集長であるからだ。美人・文武両道・富裕層と三拍子揃ったタレント(と言うべきか否か)の持ち主でもある。

 ライフスタイルのリッチ&フェイマスを誇りに生きる麟太郎は、ぐしゃぐしゃになった哀れな「山本先輩」の記事を睨みつけて口を開いた。

「そうよ、チェックしておかなきゃ。どんなに気に入らない相手だろうとね」

 そんなわけで、我こそが女王様たらんとする麟太郎は、今のところ壱国高校いちばんの有名人である山本忠也(やまもとちゅうや)先輩を敵視していた。山本先輩は数ヶ月前、とある文学賞の特別賞を受賞し、特別な推薦があって本が発刊された。つまり、小説家である。

 クリエイトに歳は関係ないらしく、「圧倒的な才能を感じさせる創造力」や「読者を飽きさせない発想力」、「緻密な文章構成能力」や「著者の背後にある膨大な読書量を思わせる」「誠実さ」が評価のポイントだったとか。創作文芸部に籍を置きながら一作として提出していない私には、そんなむつかしいことを言われてもピンとこない。擬音であらわしてくれ、擬音で。

 そのうえ、彼の作品を読んでいない(!)ので、この雑誌の言うような奇想なんていう賞賛が突拍子もないものに思える。書を読まずに人を見て判断するのはよくないのだろうけど、でも、言いたい。山本先輩を遠目に見た限り、あまりにも普通で取り立てて語るにふさわしい特徴などない男子学生にしか見えなかった。

 彼はとても地味で存在感がなく、この報道がなければ名前すら知らないでいたはずだ。それこそ、おおよその生徒が。なぜなら彼は、いつだって一人だから。聞くところによると、友達が一人もいないとか。一人でいるような人だと知れたのも、彼が有名になったからであって。そんな彼の頭から、どんな奇想が飛び出てくるというのだろう。ちょっと興味があった。

「でも、見えるようだわ。あんなイモ臭い奴の書くものなんて大したことないに決まってる」

 だからこそ麟太郎は苛立っている。(彼が思うところの)劣った人間が、自分よりも大きな世界で活躍し、この壱国高校というコミュニティにおいて自分よりも有名であるという現状に。折もあろうに、新聞部の十二月特別増刊号が山本忠也特集を組むとなってしまったとは。いかに麟太郎がセレブであろうとも、民主的になされた議会の決定は覆せない。かくあって、きいいとハンカチを噛んでいるというわけだ。噛みすぎてそろそろ破れるかもしれない。

「まず、小説の題があたしの美学に反するの。あんなV感覚的な題、お断りだわ」

「麟太郎もまだ彼の作品を読んでないの? 編集長のくせに、」

 小ばかにした言い方が気に食わなかったのか。麟太郎は麗しい(おもて)を寄せて、人差し指を突きつけてきた。

「なによ、あんたこそ読んでないんでしょう。あの男に原稿を頼むんじゃないの」

 う、と切り返しにつまった。

 私は私で、創作文芸部の部長からある仕事を任されていた。

 創作文芸部は季節に一回、部員の作品をまとめて冊子にして発表している。入部以来、一度も作品を提出していない私は、ペナルティの意味で営業を任せられた。それが、「山本忠也から原稿をブン獲ってこい、それを冬季号の目玉にするから」というもの。ようするに、機関誌に寄稿してもらえるよう頼み込め、ということになる。

「そのことなんだけど、お願い。そんなこと、私一人じゃできない。だから一緒に頼みに行こうよ。どうせ麟太郎も取材を頼むんでしょう」

「厭よ。あんたみたいな垢抜けないのと一緒に仕事をするなんて」

 眉間にしわを寄せる。どれほど自分が愛しいんだ、きみは。

「だからこそだよ。麟太郎みたいなイケメンと対峙したら、山本先輩は緊張しちゃうよ。だから、緩衝材として、イモ臭い私がいれば場が和むでしょ」

 女としての譲れない部分もあっさり譲って、麟太郎のプライドを優先させた。それに見合った報酬を得るためなら、いくらでも自分を卑下してやる。むしろ、守るべき私の誇りだなんて、彼の靴下ほどの価値もないに決まっている。……いや、彼の靴下は何千円とするだろうからまだ高いか。ともかく、それこそ麟太郎や山本先輩という人間と私とでは、違うステージの存在だとわきまえられるくらいには控えめなはずだった。

 麟太郎は顎に手を当てて眉間にシワを寄せながら、あらためて私を観察している。ふうん、とか唸って、考えたふりしちゃって。どうせ嬉しくなるようなことは言われないから、さっさと席を立って帰ることにする。

「これから先輩の本を買いに本屋に寄るけど。麟太郎はどうする。そこでそのまま唸っている?」

 そう煽ってやると彼は、およそ通学にふさわしくない上等な鞄を肩に掛けて立ち上がった。

「待って、あたしも行くわ。一人であいつの本を買うだなんて、惨めすぎて泣けてきちゃうもの」

 その感覚がわかれば、私のさっきの頼みもわかるはず。私なんかが期待のホープに話しかけるだなんて、惨めすぎて涙が出るよ。麟太郎を連れて行きさえすれば、あとはきみが勝手に話を進めてくれるはず。そんなズルイ期待とともに、上質な黒の外套のボタンをしめている親友を眺めた。最後のボタンに取り掛かるとき、彼は一瞬動きを止めた。

「やだ、チョークの粉がついてる。だから嫌なのよね、このコート掛け」

 親切心で置かれているちゃちなコートハンガーをも足蹴にする女王様であった。女王様だけど、スタイリッシュなそのコートを着込めば、まるでモード界の王子様のようだ。制服のスラックスも、こっそり細身に仕立てているのだから呆れる。





 翌朝、「おはよう」と隣に座った麟太郎の顔を見て、ぎょっとした。いつもつやつやと美しい彼の顔に、不穏なくまができていた。

「麟太郎、それ、」

 言いかけた私の言葉を遮って、彼はお気に入りの鞄を机に打ち付けた。

「ええ、くまよ。あたしの美しさの何割かが損なわれていることは謝るわ。でも、それが何かあんたに迷惑が?」

 別に、としぼんでいく自分の声が情けない。

 麟太郎は、先輩の本を一夜でぜんぶ読んでしまったらしい。たかだか五、六万字なのでそれ自体は驚くこともない。ただ、それを受けて、山本忠也に関する雑誌の記事やらネットの評やらに目を通していたら朝になっていた、とのこと。ずいぶんなはまり込みようだと指摘すると、おまえは読んでいないのかと逆に追求された。おっしゃるとおり、私はまだ読み始めていない。

「どうして続きを追わないで平気でいられるの。あんたの感性って、ほんとうにイモみたいなものね。いいえ、イモにも申し訳ないわ。もろこし、もろこし並みよ」

 麟太郎は再びイモを引っ張り出して私を叱った。(おまけに、なにが気に食わないのかコーンをイモ以下と設定している。)昨日は、その本を書いた当人をイモ臭いとけなしていたはずなのだが。どうやら、彼の中でイモ以下であるのは私だけになってしまったようだ。この調子では、「もろこし臭いあんたは取材に同行させない」なんて話になるかもしれない。それだけは避けたかった。


 そうして私は一日中ずっと、教科書で隠しながら山本先輩の著作を読み続けなければならなかった。麟太郎は、「感心、感心」という憎らしい表情で、私のせこせこした様子を隣で見守っていた。褒められた行為じゃなかろうに。

 私が山本先輩だったら、こんな読まれ方はごめんだ。少しずつでもいい、一文を・一言一句を、言葉の流れを、金平糖の瓶を空にしていくような優しさで読まれたい。そうでないなら、読まれないほうがましだ。

 そう思ったとき、不意に私の両目は潤んだ。そうだった、私は、そんな物語が書きたいから・いつかは誰かにそんなふうに読まれたいからこそ、創作文芸部に入ったんじゃないか、ということだ。そのように扱われるにふさわしい物語がすぐに書けるわけじゃない。でも、そうなるための努力を私はしただろうか? 何一つ発表していないのに? 

 もう一つ。なにか突っかかっているものがあった。でも、その正体を暴く前に、感傷はぷつりと切れた。

「どう、どうよ。すっごくいいでしょう」

 麟太郎だ。鼻をすすった私の右肩を揺すり、叫んだのだ。慌てて瞬きをして、潤みを引っ込ませた。

 感動の涙を流すような作品なのだろうか。そんな書評は聞いたことなかったけど。どんな場面だったっけ、と本に目線を落とした。こんな読み方をして、内容なんて入ってくるわけがない。私の頭の処理能力はべらぼうに低い。

 ところが、目に入ったのは、隠れ蓑である化学の教科書の方だ。

「――本校の山本の著作ですか。先生も読みました。とても面白い作品でしたね」

 化学の教諭が取り上げて、ぱらぱらとページをめくっていたのだ。焦った私をよそに、麟太郎は「ですよね」と立ち上がった。

「ボクなんて、徹夜して読んだくらいです。見てくださいよ、このひどいくま」

 にこーっと、横柄な笑みで麟太郎は首を傾げた。たぶん、かばってくれているのだ。そのくせ、私ときたらぼうっとしていてまるでひとごとだ。

「わかりますよ。それはもう、授業中でも読み続けたくなるくらいにはね」

 先生は退かない。それに対して麟太郎は引き際が潔い。お手上げの形に手をあげて私を見下ろした。

「でも、授業は授業。申し訳ありませんが、没収です。許容できるものではありませんね、残念ながら」

 正しく残念そうに眉を寄せた先生。そんな顔ができるなら、謹んで没収を受け入れましょう。すみませんでした、と私は立ち上がって素直に頭を下げた。言い訳なんてないから。先生はしつこくなく、放課後になったら化学準備室で返してあげようと微笑んだ。先生が正面の黒板に向き、私が着席しようとしたとき。麟太郎が椅子を蹴った。目的物を失ったからだは、だるま落としの要領でまっすぐ床へと引き寄せられた。したたかに尻を打った。痛い。

 しりもちの音に驚いた先生は、振り向いた。何ごとか、という顔をしている。涙目で麟太郎を睨むと、「お・バ・カ」を無音で言われた。彼は何でもないんですぅと先生に笑いかけた。

「もろこしが……いいえ、鷲田(わしだ)さんが座り損ねたみたいですぅ」

 いけしゃあしゃあと。

 無様にはい上がって、のろのろと椅子に座った。くすくす笑いが聞こえてくるけど、私はこういう扱いにもう慣れっこだ。恥ずかしさなんて感じようもない。……終わってる。いっぽう、女王様の麟太郎はというと。鉛筆を回しながら小声で「この間抜け」とか「どんくさい」とか責めてきた。もとはといえば、きみのちょっかいが原因なのに。

 ――と、そう考えたけど、気付く。違うのだ。これは、「授業中に本を読んじゃいけない」って話じゃない。もちろん、間抜けであることやどんくささとも関係がない。ただ、私が悪いのだ。言い訳なんて、できないじゃないか。

 

 放課後になって、化学準備室に向かう。

 一階のその部屋に向かう途中、窓のそとを見た。橙が辛うじて残っているけど、ほとんど藍だ。数分もしないうちに完全な夜が降りてきて、寒さも厳しくなるのだろう。この街ではもう何度も雪が降った。からだが硬くなる冷気や、日が落ちる早さが侘しい。あたたかくて柔らかなマフラーが、いかほどの慰めになると言うのだ。八月三十一日に、「いよいよ明日から新学期が始まりますね」なんて全国放送を耳にすると、なんともやりきれない気持ちになる。この高校では、とうに学校生活が始まっているというのに。いや、八月を思い出すには、もう寒くなりすぎていた。

 サッカー部が半そでで走っている。マネージャーの子が寒そうに肩を縮めている。ジャージの袖を口元に当てて自家発電している。それを見ていたら、からだが震えてくる。ブレザーのボタンを閉めて、セーターのすそをのばした。タイツなのでそこそこには寒さをしのげるが、スラックスを許可してくれる方がなんぼかありがたい。スカートの下にジャージを履くのは「並んで歩くのが恥ずかしいからやめて」と麟太郎に禁止されている。シルエットの美学的に許せないそうだ。彼は、出来の悪い男性器だと言って聞かない。出来がよければいいのか、と聞いてみたい。

 ノックをして声をかけ、暖房の効いた室内に逃げ込むように入った。ところが部屋は暗かったし、寒かった。(たぶん)誰もいないのだ。プリントや教材、古臭い木製の棚などが林立した準備室内では電気のスイッチの場所も判然としない。雑然とした迷路のようになった床を歩き奥へと向かう。我がクラスの化学を担当している先生は化学科の中でも古株で、奥のほうの席を与えられていたはずだった。

 あと少し、というところで、手前の席の机に足が引っかかってしまった。それだけならまだいいけど、端に置きっぱなしにされていた珈琲カップが落ちてきた。危ういところでキャッチはしたが、わずかに残っていた(しかも、おそらくミルクと砂糖入りの)ものがかかってしまった。だらしのなさに悪態をつきながら乱暴にカップを戻して、プリーツ・スカートにかかった珈琲を睨む。想像できると思う、私なんかがハンカチなんて高尚なものは常備していない。

「大丈夫、」

 誰もいないと思っていたのに、ぬっとハンカチが差し出された。あまりに幽霊じみた、人間の登場にびびってしまっていたのだと思う。ぐわしと鷲掴みにして受け取っていた。

「ありがとう、」

 そのまま口が閉じなかった。そこにいてハンカチを差し出してくれたのは、ほかでもない山本忠也先輩だったからだ。そのとき思ったのは、まずいな、ということだ。授業中にあなたの本を読んでいて没収されただなんて、知られたくない。そんな片手間で読まれていたと知ったら、彼はどう思うだろうか。

 固まっていたからだろう、先輩は再び大丈夫かと聞いてきた。大丈夫です、と答えて借りたハンカチで拭こうとした。でも、ふけなかった。それはハンカチというよりはミニタオルで、白で、しかも可愛い猫の柄だった。それに茶色の液体を吸わせるだなんて、なんだか申し訳なくて使えなかった。

「山本先輩。すみません、やっぱりいいです。すぐに帰って洗えば大丈夫です」

 我ながらよくやった。そう言ってしまえば、先生から本を返してもらうのを待つ必要もないし、ハンカチを借りることもない。嘘もついていないし、上出来だ。ところが、先輩は私の腕をつかんで帰してはくれなかった。

「待って。きみ、これを取りにきたんじゃないの」

 先輩は、あの本を差し出して言うのだ。勘弁してくれよと心の中で叫んだ。こんなとき、嘘がつけない。

「やっぱり。この先生は、僕のクラスも受け持ってる。『授業中、おまえの本を読んでいた生徒がいたぞ。没収したけどな』って言われた」

 後ろめたくて、返す言葉がなかった。差し出された本を受け取る手は、きっとひどく冷たかったはずだ。

「先輩は、どうしてここに」

「ただ、先生に化学の質問しに来ただけ。先生がいないから、勝手に椅子に座ってふんぞり返っていた」

 それが冗談なのか真面目な言葉なのかもわからなかった。なにしろ山本先輩は無表情だったから。彼の声色が泣きたいほどにやわらかくなかったら、怒っているんだと判断して逃げ帰っていたと思う。もちろん、今でも逃げ帰りたいけど。

「先生には内緒にしていてね」と、再び椅子に沈み込む。一体全体、あなたは何してるんだ。


 私は本を胸に抱いて彼に背を向けた。失礼します、と付け足すように言って。どうして彼は、面白かった? と聞かないのだろう。どう思った? とも聞かないのだろう。私の姿勢には何も感じなかったのだろうか。

 それとも、今のはチャンスだったのだろうか。「我々の雑誌に寄稿してください」と頼むための。そう思ったときにはすでに、再び化学準備室の戸を開けて叫んでいた。

「山本先輩。我々文芸部のために、短編を一本書いてくださいませんか」

 錬太郎、きみがいなくてもちゃんと言えたよ。そうか、惨めだと思っていたのは、ないはずだと思っていたちんけなプライドが泣き喚いていたせいだ。今の私には、そんなもん、屹立してなどいない。ぽっきり折れているんだ。





 翌朝、「おはよう」と隣に座った麟太郎の顔を見て、ぎょっとした。いつもつやつやと美しい彼の顔が、不穏な苛立ちに覆われていた。

「麟太郎、どうしたの、」

 言いかけの私の言葉を遮って、彼はお気に入りの鞄を机に打ち付けた。すうと息を吸い込んで、そして叫んだ。

「なんなのよ、あの男」


 話を聞けばこうだ。

 なんと彼は昨日、私を裏切って山本先輩にインタビューのアポイントをとりにいった。ところが、にべもなく断られて逆恨み中というわけだ。山本先輩が恨まれる謂れはないのだが、彼としては新聞部の威信もかかっているので必死なのだろう。

「そうは言っても、さすがに第二案、第三案とあるんでしょう。山本特集は諦めて、次の案でいけばいいじゃない」

 十二月は数ヶ月先とはいえ、準備をしていればあっという間にやってくる。

「厭よ」

 彼は昂然として腕を組んだ。予測していた反応なので、ため息しか出ない。

「あたしがこれでいくと宣言したら、それでいくの。あんなイモ男にこのあたしが断られただなんて、そんな格好悪い報告、部員たちの前でできやしないし」

 イモ臭い、からイモ男に降格だ。そりゃ、ラオコーン像のラオコーン(の肉体)に恋する男にとっちゃ、山本先輩みたいな人間はイモ中のイモだろう。

「抜け駆けするからでしょ。罰が当たったんだよ」

「本を没収されるようなヘマをやらかす落伍者と足を揃えてやる暇はなかったの。縁起悪いし。それに、恋はいつでも惚れさせた者勝ちよ」

「今は恋の話じゃないってば」

「とにかく、惚れさせれば勝ちなの。だから、もう一回あんたをつれてアタックするわ。この大地に生える純朴なもろこしみたいなあんたをみたら、チューヤンも落ちるでしょ」

 誰だよ、チューヤンって。と、突っ込み損ねるほどにはぎくりと硬直していた。

「それは、だめ」

 どうしてよ、と麟太郎は目を細くした。この男は勘がいいから心臓に毒だ。私が嘘をつけなくなったのも、だいたいは彼のせいだ。

「だいたい、あんたがあたしに付いてきてって頼んだんじゃない。なぁに今更しり込みしてるのよ。蹴るわよ、そのデカ尻」

 ばっと、間違いなく控えめな尻を手で覆ったけど、本当に蹴られるわけがない。彼はそういう下品な行為が嫌いだ。

「実は、私も頼んだの、昨日。でも断られたから。取れなかったら取れなかったでいいんだ、きみたちとは違って、私たちは彼の原稿がなくても発行できるし……」

 珍しく、茶々を入れないで聞いているなと思ったが、違った。彼はぶるぶる震えて憤怒の形相だ。

「なによ! あんただって抜け駆けしてるじゃないの!」

 尻を蹴られはしなかったけど、ネクタイを、首が千切れるほどには引っ張られた。昼ドラじみたヒステリーとともにネクタイを引っ張るのは、上品に勘定されるらしい。


 昼休み、創作文芸部の部長のもとへ出かけた。山本先輩に断られた旨を伝えると、彼は快活に笑った。意外な反応に少し面食らう。

「別に構わないよ。本気で欲しがったわけじゃないし」

 はあ、とあいまいな返事をした私を座らせて彼は弁当の続きを食べ始めた。そのもごもごした口のまま、彼は喋る。

「半分は冗談だよ。悪かった」

「なんでまた、そんな思い付きを」

 呆れながら、昨日作ったスカートのしみのあとを爪でいじっていた。

「冗談、というか、嫌味、かな」

 嫌味? 私は首をひねった。

「だって、鷲田。おまえ、部に入ってからそろそろ二年経つのに一作も書き上げてないだろう。おまえが書かないなら、部外者の山本先輩のものでも載せちまうぞって話だよ。来年の春には引退だし、ここで書いておかないと冊子に載らないかもしれない。それでいいのか?」

 うなだれるしかなかった。書くよりも頼む方が楽だろう、って言われているようなものだ。

 それはいい。ただ、普段の部長はこんなふうに遠回りにものごとを伝える人間じゃない。なにか彼の生々しい感情がそうさせたのだろう。彼の話の続きを待った。

「俺は、正直悔しいよ。創作文芸部でさ、みんなで文学ってものを研究して論をぶつけ合って、作品を見せ合って切磋琢磨している一方、ぽん、と山本先輩みたいな飄々とした一匹狼が賞を取ってしまう。なんだか、『俺は群がっている』って卑屈な気持ちになるんだ。どうしてだろう、みんなとともに高みに向かっているはずなのに・楽しいはずなのに、そんな一瞬、全てが楽しくなくなるんだ。意味がないんじゃないか、って怖くなるんだ。しかも、僕らと歳がひとつしか違わないのに、あんなに洗練された文章を書いてさ。それにあの人理系クラスだろう? 驚異だよ。……敵わないよな。きっと、天才なんだ」

 彼は長く語ると、弱弱しく笑った。情けないな、と箸をしまった。

「部長らしくないな。天才、なんて言葉を使うのは。『天才は1%のひらめきと99%の汗である』、っていつも言ってるじゃない」

 私はそんなの信じていないけれど、部長が言うならアリだと思ったんだ。ところが、それは励ましだよと彼は苦笑した。 

「なあ、鷲田。おまえは思わないのか。この世には、天才と呼んでしかるべき才能があるって。そしてそれは、俺たちを信じられないほど興奮させる。信じられないほど強引な力で。そんなもんに触れちゃうとさ、自分の言い訳だろうが嫉妬だろうが、そんなものもありだと思えてくる。文学的で、人間的だろ」

 彼は格好つけて言う。文学的、ねえ。よくわからないけど、ここに嫉妬の炎が渦巻いる。いや、そうでなければ彼じゃないくらいには思う。ただ、部長の山本先輩に対しての嫉妬は、好意的なのかそれとも敵意を持っているのか、わからずじまいだ。べつにそこの決着をつける必要はないけど。部長はプロを目指しているから、より複雑なのだろう。

 それにしても、と思う。山本先輩と直接的な繋がりを持っているわけじゃないのに、彼の名と作品を知っている私たちは、彼にまつわる一連のできごとで、それぞれ違った立場から違った感情を抱えている。

 私だってそうだ。山本先輩、あなたは怖くないのか。そう聞きたい。誰かの目に触れること、誰か(しかもあなたの場合、とても多くの人間の目に触れている)に何かを思われること、それが怖くないのか。そう聞きたい。


 その晩、私は先輩の作品を読んだ。部長の言ったことが、わかった気がする。





 翌日の放課後の部活で、私は学校裏の土手でマラソンをしていた。マラソン、今の部長が、執筆の体力向上のために創設した悪しき習慣だ。マラソン大会が近いからと言って、最近はコースの長さも倍加された。このメニューに限ってはすっぽかすメンバーがものすごく多い。今日もその例にもれず、参加しているのは、はるか先をいく部長と一年生男子、それから私だ。おっと、忘れていた。もう一人、なぜか、新聞部の麟太郎だ。部長は彼のマラソン参加を喜んでいるのだから文句は言えない。文武両道の彼は当然のごとく長距離もはやい。トップを行くのは彼だった。もう、後ろ姿も見えない。

 私はというと、もう走れないと見切りをつけて途中から歩き出した。そのうえ、何を思ったかコースから外れていった。枝分かれした川の細い方、それに添った道を散歩することにした。この町はすごく寒い。だから、こういう細い川(幅は五メートルとなさそうだ)は一日中凍っていることがある。そんな寒々しい光景は好きじゃないのだけど、ふさぎこんだ今日は徹底的にへこんでやろうと、それを見たい気がした。

 しばらく進んだひときわ暗い箇所、上手の林の木々が影を落としているところに、我が校の制服が見えた。おかしい。あれでは、川の上に立っているようだ。氷の上に乗っているのだろうか。そんなやんちゃな。近づくにつれ、姿がはっきりとしてきた。

「……山本先輩じゃないですか、」

 完全に足を止めて、川の氷の上に立っているその人を見下ろした。彼は静かにこちらを見上げた。さらさらの黒髪は、薄気味悪い天使の輪を作っている。

「きみは、化学準備室の、」

 そうです。と私はコンクリートの堤防に腰掛けた。なにしているんですか、と、一応の挨拶代わりに聞いてみた。

「べつに、何もしない。ここが好きだから、来ただけ」

 忘れていたけど、彼は受験生だった。気晴らしに散歩に出てきてもおかしくはなかった。

「来ただけ、と言いながらあなたは氷上に降り立つわけですか。制服姿でそんな危ないことをして。薄氷(はくひょう)を踏むってやつですね」

「きみこそ、ここに来ただけで何もしないの。氷を見るだけ見て帰るなんて嘘でしょう」

 そう言われてみれば、氷の上に立ってみたいような気がしてきた。

 彼は再びうつむいて、ローファーで氷をつついていた。氷はなかなかに厚そうで(薄氷にはほど遠い)めったなことでは割れそうになかった。しかも、先輩は私よりも軽そうだ。

「私が降りても大丈夫でしょうか」

「大丈夫じゃない?」

 なんとも無責任な回答だ。

「じゃあ降りますよ。いいですね」

 返事はない。ので、私は堤防の出っ張りを頼りにゆっくりと降りていった。なるべく衝撃を与えないように、そっと氷上に降り立った。山本先輩を見ると、「ね?」という調子で微笑んでいた。ね、と胸を張るほどしっかりした保障はしてくれてなかったけど。

「案外、丈夫なんですね」

「らしいね」と、またそっけない回答。

「先輩、私と話しをしましょう」

「してるよ、もう」

 そうだけど。

「じゃあ、言い方を変えます。私の頼みに応えてください。私個人の、頼みです」

 山本先輩は顔をあげた。そこには少しの驚きも、戸惑いも、その他ありとあらゆる感情は見受けられなかった。ただ、「どんな?」とだけ、言った。

「おととい、先輩のところへ新聞部の川久保麟太郎って男が押しかけたでしょう。あいつの取材、受けてやってくれませんか」

 先輩はしばらく黙ったあとに、できないよ。と言った。

「恥ずかしいから」

「いまさら何を言うんですか。そんな理由で断られた麟太郎の立場はどうなるんですか」

「冗談だよ」

 冗談はもっとにこやかに言うべきです。

「……うまく言えないんだ。僕はすごく、語るのが苦手で。言いたいこともきっと言えない。だったら何か物語を書くほうがずっといい。そして文字として語られたものは、できれば文字のままであってほしい。その願望は、理解されたいとかされたくないとか、寂しいとか寂しくないとか、そんな上等な感情じゃないんだ、僕の場合。たぶん、きっと……そうだ、寝たい、とか食べたい、とか、そのくらいの感情なんだ。文字が文字のままでいてほしいってのは」

 彼の言っていることはなにがなにやら、わからなかった。これはインタビューを受けなくて正解だな、と思った。それにしても例の文芸雑誌には脱帽だ。こんな意味不明の言葉を聞かされても、うまく編集したのだから。それ以外の可能性としては、彼自身、仮面を被ったか。

 先輩はそれきり黙りこんでしまい、足元の氷をローファーのかかとで削り始めた。透明だった氷は、衝撃を受けて白に変色している。私の足元の氷の向こう側では、とるにたらない小さな魚が場所を変えずにひれを動かしている。なにをしているんだろう。

 そのときだ。ばしゃん、と豪快な音がした。足元の魚はすいっと消えてしまった。

「……助けて」

 顔を上げなくても、惨事は見当がついた。

「自業自得ですよ。墓穴を掘るとはまさにこのこと。そこを墓場にしたらいかがです」

 先輩は、ひざの辺りまでどっぷりと冬の川に浸かっていた。私の助けなんか無くたって、十分にあがれる深度だ。しかも、引き上げるために手を差し出せば、あたりの氷も割れてしまうかもしれない。

「我々の機関誌のためにひとつ作品を仕上げてくださったら、助けて差し上げますよ」

 彼は目を丸くした。明らかな顔の動きに、「お」と思った。

「そっちのほうが、できない。そこはきみの場所だ」

「厭味ですか」

「違う」

 彼はいつまでも川から上がろうとしなかった。

「先輩。私はあなたの作品を読みました」

「そう」

「思ったのですよ。世の中には、天才って存在がやっぱりいるんだってこと。そんなの、言われた人間からすれば、うれしくもなんともないでしょう。とくに、努力が伴っている場合は。でも、そういう存在がいると思うことは、――目の前にいることは、すごく、物語的だと思いませんか」

 私はこう言っているのですよ。あなたの存在が、物語的だと。そしてそれは、ここでは私からあなたへの最大の賛辞だということです。あなたの意味不明な言葉よりは、ちょっとは簡単でしょう。“文学的”とか“人間的”なんかより、ずっとわかりやすい言葉でしょう。

 おとといの涙の半分は、この人の尊さに対して捧げたようなものだ。この人の物語に対してではなく。それは侮辱かもしれない。だから、それは黙っていた。

 先輩は、きょとんとしたままだった。

「いいから、助けてよ」

 とも言った。仕方なく先輩の手を握った。信じられないほど冷たかった。昨日、私が差し出した手よりも冷たかった。

 氷は一瞬だけピシリと音を立てたけれど、私のところまでは割れなかった。なかなかに根性のある氷だ。彼が川から脱出するとき、私の手にはいかほどの力もかからなかった。

 マラソン途中でよかった。首にかけていたタオルで先輩のスラックスを拭いて、私のジャージを履いてもらった。私は下にハーフパンツを履いていたのだ。

 その全部を受身で見ているものだから、少し腹が立った。自分で勝手に落ちたくせに。恋人でもない人間のベルトを外したのなんて、きっと、後にも先にもこれきりだろう。

「なんだか、漏らした人みたい」

 地上に戻るなり、ブレザーの下にジャージを履いている自分を見下ろして彼は言った。

「漏らしたようなものですよ。恥ずかしさは似たようなものです。だから、恥じてくださいよ」

 先輩の水を吸ったローファーと靴下は、がっぽがっぽ・ぐっちゃぐっちゃと、聞いているこっちの足がむずむずしそうな音を出していた。この人は、ひょっとしたら相当のバカなんじゃないだろうか。

「なんできみは、自分の作品を発表しないの」

「こっちこそ聞きたいことはありますよ。どうしていつも一人ぼっちなんですか。それじゃあ、安っぽい雑誌に『青臭い自己表現のために小説という手段を借りた――つまり、媒介の代替可能性があるということだ――、いまどきの若者の代表なのかもしれない』なんて馬鹿馬鹿しいことを書かれても仕方がないですよ」

 意地悪で言ったのに、彼は真面目な横顔で答えた。

「一人でいたいという欲望と、物語を発表したいという欲望は別物で、しかも、僕の中では矛盾しない」

 やっぱり、山本先輩はよくわからない。

 おまけに、阿呆らしいことに気づいてしまった。先輩はちっともイモ臭くなんかなかった。それどころか、可憐だった。川に落ちたのが微笑ましいくらいには。





 翌朝、「おはよう」と隣に座った麟太郎の顔を見て、ぎょっとした。いつもつやつやと美しい彼の顔は、いつにも増して輝いていた。

「麟太郎、何があったの。もしかして、」

 言いかけた私の言葉を遮って、彼はお気に入りの鞄を机に打ち付けた。

「できたのよ。チューヤンの記事」

 彼はにっこり笑って見本の記事を私に差し出した。なんとそれは、昨日の私と先輩のやり取りだった。しかも、水増しと捏造の具合が尋常じゃない。言葉も無く彼を見た。彼は真っ黒のマフラーを解いているところだった。

「イモ系男子のチューヤンがてこてこ歩いているのを見つけて、あとをつけて観察していたのよ。そうしたら、怠惰なもろこし系女子がぼてぼてとやってくるじゃないの。面白くて隠れて聞かせてもらったわ。――あと、写真もね」

 と、私が先輩のスラックスを脱がせている写真をちらつかせた。取り返そうとすると、その長身を生かしてすらりと上へと手を上げた。私では届かない。無様にすがるのはやめた。あとで買い物に付き合ってやれば、ネガは私の手元におちるだろう。うん万もする黒い布きれが売っているような店に。そう比喩すると、彼はすさまじく怒るけども。

「本人の許可が無いじゃない。そんなの倫理に反してる。きみのモットーは『センセーショナルで倫理的』、でしょう」

 彼はコートを脱がずに再び席を立った。

「そう、今のままでは倫理に反してる。だから、許可をもらいにいくのよ。……あんたも行く、チューヤンの教室」

 行く。私は彼の記事を読みながら彼の後ろに従った。

「こんなの、絶対に許可が出るはずない」

「そう? 面白いと思うんだけど」

 先輩の教室の前で、最後の「センセーショナル」な一文に目が釘付けになった。

 記事の中の「私」は先輩に、「どうして自力で上がれるのに、助けを求めたんですか。小説と何か関係が?」と聞いている。それに対し「彼」はこう答えた。

 ――ただ、君の手を握りたかったから。

 麟太郎の文にしては、えらく下品で俗っぽかった。わかってるよ、私のレベルに合わせたとか言うんでしょう。この捏造の安っぽいやりとりは、彼から私への励ましなのだ。でも、素直にありがとうなんて言ってやるもんか。気持ち悪いな、と麟太郎に言ったら「もろこしにはイモがお似合いよ」と笑った。大声で麟太郎は先輩を呼んだ。本を読んでいた山本先輩は、例の無表情でこちらを見た。ああ、この人のどこがイモだっていうんだ、親友よ。

 麟太郎がいないときに、記事の中の「私」と同じことを先輩に聞いてみようか。いや、結果は知れている。意味不明な答えが返ってくるに違いない。


 彼の座る席の向こう、外は雪が降っていた。

 壱国高校三年、山本忠也。当時満十八歳。受賞作の題は、『薄氷を割る』であった。


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