欲深い聖者〜サフランの不純な日常〜
聖アデレイド修道院の朝は、清らかな祈りと煩悩まみれの皮算用で始まる。
修道女サフランは、深く被ったベールの下で、神への祈りなど一秒も捧げていなかった。
彼女の頭にあるのは【次なる獲物】への攻略法だけだ。
★ターゲット1.プラチナブロンドの騎士団長★
「ああ、神よ。あそこに佇むルードヴィヒ様こそ、私の魂(と預金口座)を預けるにふさわしいお方……」
サフランは、計算し尽くした角度でヨロリと足元をふらつかせた。
「お、おっと……誰か助けて……(さあ、その逞しい腕で私を抱きとめて!)」
だが、獲物の胸元にダイブする直前──。
「サフラン! 貧血? 丁度いい、今朝届いたジャガイモ三十キロを地下室に運べば血の巡りも良くなりますわ!」
鉄壁の守護者、鬼の先輩・シスター・マルガリータが、サフランの襟首をガシッと掴み上げた。
「い、いえ、マルガリータさん、私は今にも意識が……」
「口が動くなら大丈夫です。さあ、運びなさい!」
サフランの恋の予感は、泥だらけのジャガイモ袋と共に地下室の闇へと消えた。
★ターゲット2.若きギルドマスター★
数日後。
街の商ギルドの長、カイルが寄付金の相談に訪れた。
(金! 権力! そしてあの整った顔立ち! 完璧だわ!)
サフランは、お茶出しの係を力技で後輩から奪い取った。
わざとらしく胸元を強調し、最高級の茶葉──勝手に院長の私物を持ち出したもの──を差し出す。
「カイル様、お疲れのようですわね。この後、静かな礼拝堂で二人きりでお悩みを聞きましょうか……?」
上目遣いでささやくサフラン。
カイルの顔が赤らむ。
落ちた──確実に落ちた!
……と思ったその時。
「サフランさん! 院長が『私の秘蔵の茶葉が消えた』と血相を変えて探してますぅ! 知りませんかぁ?」
空気を読まない──確信犯の──後輩修道女が、ドアを豪快に蹴り開けて乱入してきた。
「……っ!? し、知らないわよ! 私はただ、カイル様に神のご加護を……」
「あぁ! これ、院長のお茶じゃないですかぁ。カイル様ぁ、申し訳ありません。これ、盗品ですので回収しますねぇ!」
サフランの恋心は、泥棒の濡れ衣──事実──と共に没収された。
★最終決戦.王太子降臨★
ついに──王太子殿下が視察に来る日がやってきた。
これぞ人生最大のジャックポット。
サフランは、修道服を限界までタイトに改造し、香水をこれでもかと振り撒いた。
「殿下……。迷える小羊である私を、どうぞ王宮という名の牧場へ連れて行って……」
王太子が彼女の前を通り過ぎようとしたその瞬間、サフランは渾身の″清楚な微笑み″を浮かべて一歩踏み出す。
「「「サフラン!!」」」
背後から響く、地を這うような低い声──。
そこには、修道院の全メンバーが壁のように立ちはだかっていた。
「掃除はどうしたのですか!」
「懺悔室の予約がパンパンですよぉ!」
「貴女の煩悩で、庭のバラが枯れ始めています!」
「ちょ、離して! 今、殿下と目が合ったのよ! 私の玉の輿が遠ざかるーー!!」
サフランは、騎士団長にも王族にも触れることなく、今日も元気に【強制労働】という名の修行に引きずられていく。
「神様! 私の欲望は、こんなところじゃ終わらないんだからねーー!!」
彼女の叫びだけが、皮肉にも清らかな青空にむなしく響き渡った。
〜〜〜おしまい〜〜〜
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