地獄の始まり③
ゼビア・オーウェンが住んでいる館。今日は赤い満月が暗い夜を照らしていた。
黒スーツの男といかにも高そうな指輪や腕輪を身につけた男が会話をしている。
「ゼビア様、本日は月が綺麗でございますね」
「私は男の人に告白される趣味はありませんよ」
「ゼビア様は今宵の月を上回る美しさでございますね」
「どうしたんですか?普段とは全く雰囲気が違うではないですか」
「今宵は素晴らしい夜になるのです」
「素晴らしい夜とはなんでしょうか?」
「空に輝く鼓星が沈むのです」
黒スーツの男は不敵な笑みを浮かべていた。
「ですのでゼビア様……」
黒スーツの男はゼビアに耳打ちをした。
「そうですかわかりました」
今夜この場所でオリオンの歯車が動き出す。
♢♦︎♢♦︎
ゼビアの館の近くの裏路地。
少女たちの会話が聞こえる。
「今回の依頼を整理しますよ。今回はオーウェン商会長の暗殺です。おそらく身体警護をしている方々がいます。できるだけ殺さず無力化してください」
「わかってるよ。な?ティア?」
「うん」
「ほんとですか?不安なんですけど・・・・特に2人はいつもやりすぎですからね。リーダーに怒られるのは私なんだから」
「今回は大丈夫だ。今回は」
少女たちは会話を終えると屋敷の裏口に向かった。
裏口には厳重に鍵がかかっていたので、それをレイナがピッキングして解錠すると3人は中に侵入した。
侵入するとすぐに屋敷を巡回する警護兵5人に見つかった。
「そこの女ども、ここはオーウェン商会長ゼビア様の屋敷であるぞ。止まらなければ撃つ」
そう言って腰から拳銃を取り出した。私たちはそのまま突き進む。
パンパン。銃声が鳴り響く。それを全員が綺麗にかわす。
「私に任せろ」
フレアが警護兵に向かって間合いを詰めて、1番手前の警護兵をひと蹴りして吹き飛ばす。そして、回し蹴りでもう1人を薙ぎ倒す。
「貴様」
パン。警護兵がフレアに向かって近距離から拳銃を撃つ。それをフレアは持ち前の反射神経でかわし、顔面に向かって拳を入れる。そして残りの2人を蹴りで薙ぎ払った。
「言ったじゃないですかやりすぎですよ」
レイナが顔を膨らませて言う。
「そうか?手はしっかり抜いたんだからセーフだろ」
「セーフじゃないですよ」
レイナは少し呆れているように言った。
そして3人はゼビアの屋敷の中心部までたどり着いた。そこには大きな扉があった。
「2人とも気を引き締めて」
「おう」
「うん」
そう言うとレイナはドアを開けた。ドアを開けると書斎がありその前に私たちに背を向けてゼビアが立っていた。
「私を殺しに来ましたか」
なぜバレてるの?この情報を知るのは一部の人のみ。
「知ってるみたいだな。なぜだか知らないがそんなのは興味ねぇ・・・・死ねーーークソやろう!!」
フレアはゼビアに向かって殴りかかった。するとフレアとゼビアの間に黒スーツの男が入ってきてフレアの手を止めた。窓が開いている。そこから入ったとしか考えられない。だけどここ4階だぞ!?
「いい打撃だ。あぁあなたの思いが伝わってくる」
「なんだテメェ。きもちわりぃ」
そう言ってフレアは足で黒スーツの男の顔を蹴ろうとする。それを黒スーツの男は片腕でしっかりと防ぐ。
「フレア避けて!」
パン。臨戦態勢に入ったレイナが拳銃を放つ。それを黒スーツの男は軽くかわす。
私はこの状況からゼビアを殺すのが最善の策だと判断してナイフを持ち、ゼビアに向かって斬りかかった。
キン。金属が擦れる音がした。
「あぁーめんどくせぇ」
髪がボサボサしていて、目には大きなくまがある二十代くらいの男が目の前にいた。
「殺されたくなかったらそこをどいて」
私の言葉を聞いてその男は頭を掻きながら言った。
「あぁーめんどくせぇ。ボスはこんなガキどもの相手をするために俺を行かせたのか。あぁーめんどくせぇ」
こっちを睨みつけてくる。その視線は全く隙がなかった。こいつ強い。
「おいガキどもレイナはどいつだ?」
空気がピリついた。こいつらレイナを狙っている。
私は間合いを詰めて斬りかかる。
キンキン。それを軽々と男ははじく。
一方レイナとフレアたち。
「おりゃ」
フレアの攻撃を全て黒スーツの男は捌いていく。全て捌き終えるとフレアのみぞおちに向かって蹴りを入れる。フレアはそれをギリギリでガードする。しかし顔がガラ空きになってしまいそこを殴られた。
「いってぇー」
フレアの頭から血が出る。そこにさらに追撃を加えようとするがレイナの銃弾がそれを遮る。
「まずは後ろの方を殺した方が良さそうですね」
そう言うと黒スーツの男はレイナに向かって飛びかかる。
「レイナ逃げろ」
レイナはとっさにその場でしゃがんだ。黒スーツの拳はレイナの頭上スレスレを通った。
「あなたがレイナですか」
黒スーツの男はそう言うとレイナを狙うのをやめ、フレアに再び向かった。
黒スーツの男はフレアに猛攻を仕掛ける。
「レイナ以外は殺していいと言われていますから」
こいつ、さっきまで全く本気じゃなかった。フレアはその攻撃を捌ききれず攻撃をくらう。
一方のティアもレイナが誰だかわかった瞬間、本気になった目にくまがある男の猛攻によって倒れていた。
「ハァハァ」
「ガキが調子に乗るからだ」
圧倒的な強さだった。私たちはなすすべもなく倒れた。
唯一立っているレイナは黒スーツの男に銃を撃つも軽々とかわされて、手刀が首に刺ささった。
「うっ」
レイナは気絶した。
そして黒スーツの男はレイナを担ぎ上げ目にくまがある男とゼビアと共にその場を後にする。
「レ、イ、ナ……」
開いている窓から風が入ってきて男たちの手の甲を隠していた袖がめくれた。
私は霞む目からはっきりと捉えた。その甲に書いてあったのはサソリであると。




