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地獄の始まり①

この世界に天国はあると思う?……答えは否だ。この世界は地獄でしかない。世界は残酷で私から大切なものを奪った。


♢♦︎♢♦︎


雨音と雷鳴が鳴り響く。真っ白い壁には赤い血がついていた。そこには白髪の少女が倒れていて、その少女の前に黒髪の少女が立っていた。


「ハァハァ。お願い私を殺して……」


「……」


黒髪の少女は何も言わなかった。ただ手に持っていたナイフを白髪の少女の首に向かって振った。黒髪の少女の目からは涙がこぼれ落ちた。


私は大切な人を殺した…………。


♢♦︎♢♦︎


レイオス郊外の裏道。


黒の美しい長髪をなびかせた少女立っていた。その頬には血が付着している。彼女の名はティア・メルトール。


ティアの下には四肢がバラバラになった男の死体が落ちている。


「もぉーーー。ティア、やりすぎだよ。またリーダーに怒られちゃうよ」


そう言いながら白髪で短髪の少女が出てきた。少女は童顔で声も含めて少し幼さが残っている。彼女の名はレイナ・モルティス。


「こいつは民間人を11人も殺してるんだぞ。苦しんで死ぬべきだ」


「そうだけどさー。リーダーは『どんな命だろうと死ぬ時は安らかに』って言ってたじゃん」


「……うん」


私は心の底では理解できなかった。なぜ関係ない人を殺した奴を苦しませずに殺さなければならないのかを……。


♢♦︎♢♦︎


レイオス郊外のとある地下の隠れ家。


茶色で長髪の女が椅子に腰を下ろして新聞を読んでいた。彼女の名はアリア・ゼフィール。


「死刑囚を乗せた護送車が巨漢に襲撃され、衛兵は1人を残して全員死亡。死刑囚及び襲撃犯は消息不明だってさ。こっちに仕事が回ってくるかもしれないね」


「だったら私が全員ぶっ殺してやるよ」


赤色で短髪の顔に傷がある少女がそう言った。彼女の名はフレア・アストリア。


「私が堕としに行った方が早くない?」


クリーム色で長髪の少女がそう言った。彼女の名はノエル・クローディア。


「あぁ?ノエル、私に喧嘩売ってるのか?」


「相手は男なんでしょ?私のテクが刺さるに決まってるじゃない」


「もういい。テメェからぶっ飛ばしてやるよ」


「これだから脳筋バカは嫌いなのよ」


フレアとノエルが喧嘩していると手を叩く大きな音が聞こえた。叩いたのはアリアだ。


「2人とも喧嘩はダメよ」


その一言で喧嘩していたのが嘘かのように静まった。


ノエルは自分の部屋に戻り、フレアは近くの椅子に腰をかけた。しばらくの間沈黙が続いた。


しばらくすると階段の方から音が聞こえた。


「リーダー、今帰ったよ」


レイナは明るい声でこちらに走ってきた。その後ろを静かにティアがついてくる。


「頬の血……ティア、もしかしてまたやりすぎたんでしょ?」


「だって……」


「だってじゃないの」


そう言ってアリアは新聞で軽くティアの頭を叩いた。


「いつも言ってるでしょ。『どんな命も死ぬ時は安らかに』って」


「なんで……あいつらは無関係の人をたくさん殺してるんだぞ。罪を償わせるべきだ」


「私たちは殺し屋なの。裁く立場じゃない。それに私たちは殺した人たちの命を背負わなければいけないの。その意味がわかるわよね?」


「……」


私は答えられなかった。何度言われても分からない。


「約束して私たちオリオンはどんな命も苦しませずに殺すということを」


こういうことを言う時のアリアはいつも真剣な表情をしていた。


――――オリオン――――政府公認の殺し屋の一つ。


アリア・ゼフィール(23歳);オリオンの創設者。オリオンのリーダーで指揮官としての才を持つ。殺しの技術も一流。


ノエル・クローディア(19歳);オリオンのサブリーダーでセクシーお姉さん。誘惑の才を持つ。ティアとレイナのことを可愛い妹だと思っている。


ティア・メルトール(15歳);オリオンの中では1番の新人。戦闘能力は高いが殺し屋としてはまだまだ半人前。レイナのことを1番大切にしている。


レイナ・モルティス(15歳);ティアをオリオンに誘った張本人。銃の扱いが得意。ティアのことをものすごく信頼している。


フレア・アストリア(17歳);喧嘩っ早い性格があり、よくノエルと揉めている。身体能力が高く、単純なフィジカル戦では今まで一度も負けたことがない。


この5人で構成されている。


――――――――――――――――――――――――


私たちは仕事の疲れを取るために就寝した。


♢♦︎♢♦︎


翌朝。


私はレイナの部屋にいた。


「レイナ!レイナ!早く起きて」


私はレイナの頬を軽く叩いた。


「うぅぅぅぅ。もう少しだけ……」


レイナがあまりにも起きないので私はレイナのベッドを引いてレイナを床に落とした。


ドーン。部屋中にすごい音が響き渡る。


「イタタタ。ティア、もっと優しく起こしてくれてもいいじゃん!」


「何度も優しく起こしたよ」


レイナは朝に弱い。なので毎日私が起こすのが日課になっている。


寝ぼけたレイナを引っ張りながら私はみんながいるリビングに向かった。


「相変わらずレイナは朝が弱いな。もう10時過ぎだぜ」


椅子に寄りかかり、足を組みながらフレアが言った。


「フレアちゃんは朝から元気ですね」


レイナの声はまだ寝ぼけていた。


「おうよ。殺し屋たるもの常に元気じゃないとな」


「うるさいわよ」


あくびをしながらノエルが入ってきた。ノエルがこんな遅くにおきてくるのは珍しい。


「あぁ?やるか?」


「すぐ喧嘩に持ち込むのあなたの悪い癖よ」


「もういい。ぶっ飛ばしてやんよ」


フレアとノエルは顔を合わせれば毎日のように喧嘩していて、これをいつもアリアが止めている。しかし、今回はリビングにアリアの姿はない。


「2人とも喧嘩はダメだよ」


目が覚めたのかレイナが大きな声で言った。


「チッ」


「レイナちゃん、ごめんね」


2人の喧嘩はレイナの一言で幕を閉じた。2人ともレイナには頭が上がらないらしい。


私はその喧嘩をひと通り見終えると、朝食の準備を始めた。


3人分の朝食と4人分のコーヒーを作り、テーブルに置いた。


「ティアの料理美味しいんだよね」


レイナは席につくなり美味しそうに頬張った。私はその隣に静かに座った。


しばらくの間黙々と食べているとレイナが言葉を発した。


「リーダーは?」


「アリアなら上から呼び出しをくらったって言って朝早くに出ていったぜ」


コーヒーを片手にフレアが言った。


「呼び出しって、もしかして昨日のことじゃないの?」


「昨日?依頼でなんかあったのか?」


「またティアがやりすぎちゃって」


「だって……」


「はははははは。いいじゃねーか。やりすぎくらいがちょうどいいんだよ」


私はみんなといるこの場所が心の底から楽しかった。だからこそずっと続いて欲しかった。続くと信じていた。あの日までは…………。

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