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コワくて不思議なファンタジー空想科学に泣けるいろいろ短編集

アブダクションに、来てほしい

作者: 大盛こもり

約1400字のショートショート

「・・・です。次の話題は、あ?はい・・今、臨時ニュースが入りました・・・UFOです!円盤状の飛行物体が多数飛来しています。全国各地で目撃されているとのことです!これはフェイクニュースではありません!!あ、今!映像が入りました。これはライブの映像です。フェイクではありません・・」



 202X年X月XX日、その日を境に世界の空は宇宙人の飛行物体で埋め尽くされた。

 人々はそれをUFOとは呼ばない。もはや未確認ではなくなったからだ。

 人々はそれを、アスシップ、と呼ぶようになった。



「・・博士、宇宙人の目的は、やはり侵略と考えてよろしいのでしょうか?」

「いや、ご覧の通り彼らの科学力は我々を遙かに超越しています。単純に攻撃されれば我々の敗北は明らかです。なのに彼らは手を出さない。それどころか・・」

「はい、そうなんですよね。それどころか彼らは定期的に我々をアスシップに迎え入れてくれる」

「そう、あなたのような若い方たちをね。私のような老人にはお声が掛からない。ところで」


 博士が発言の間を取って司会者の目を見つめた。その瞳に疑念の色が浮かぶ。


「あなた方は、いや、あなたご自身はアスシップの中で、何をされたんですか?」

「い、いや、それはこれまでも各機関で証言しておりますので・・・この資料映像をご覧ください」


 博士の質問に言い淀む司会者だが、画面はすぐ、アスシップにアブダクションされた人間たちの証言映像に切り替わった。


 アスシップにアブダクションされるのは国籍、男女を問わなかった。ただ、老人と子供は除外される。


 証言に共通しているのは、夜中に気が付くとアスシップの中にいる、朝になれば帰される、そして、その間の出来事について全員が細かく覚えている、と言うこと。


 そして彼らの証言は全員が一致していた。


 彼らは口を揃える。


 あれは素晴らしい体験だった。また行きたい。


 宇宙人は・・・すばらしい。


 人類は定期的に繰り返されるアブダクションを待ち望むようになった。


 その翌年から、すべての地球人が大きな問題を抱えるとは知らず。


 そして、100年が過ぎた。



「まぁまぁ掛かりましたねぇ」

「ホント、まぁまぁ掛かったけれど、上手くいったんじゃないかしら?」

「ええ、もしあの時人類に攻撃されてたら、我々はひとたまりもなかったですからねぇ」

「地球に来るまでにほとんどのエネルギーを使ってしまって、武器も使えなかったものね」

「それでこの作戦ですよねぇ。たいしたエネルギーも必要ありませんし」

「そうね。私たちは人類をアブダクションして、底なしの快楽を感じる不妊薬を与えただけ。たったそれだけで・・」

「たったそれだけで人類は我々に依存し、我々なしでは生きていけなくなりました」

「思ったとおりだったわ、人類は生きる目的を見失ったし、子供が生まれないことすらも受け入れた」

「はい、人類は寿命を迎えてどんどん死にましたね。そして今日、最後の人類が死にました」

「聞いてるわ。105歳で死んだのよね。あの頃生まれていた地球人の子供が」

「地球の時間で100年掛かりましたからね。ですが我々の星の時間に換算しますと」

「そうそう、たったの1ヶ月だったわねぇ、と~っても早かった」


「地球人の寿命、短くって良かったわぁ~」


「では地球、いただき・・ます (*^_^*) 」






アブダクションに、来てほしい    了

連載形式の短編集にも入っています。

そちらもご覧いただくと、嬉しいです。

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