第4話「“かわいい”は戦えない? 手芸部バトル大会開催!」
朝の校内に突如貼り出された、謎のポスター。
そこには手書きでこう書かれていた。
「部活対抗! 第1回ゆるスポーツバトル大会!」
~部の名誉をかけて戦え!勝者には“部室エアコン権”を授与!~
「……これ、絶対あの生徒会の道化が仕組んだやつじゃん」
志乃はポスターを見上げて、顔をしかめた。
その横で、真宵が静かにうさぎポーチを握りしめる。
「エアコンは……ほしい」
「欲しがるな!! うちの部室、旧校舎で気温38度よ!?」
というわけで――
手芸部、バトル大会に強制エントリー。
【試合会場:体育館裏・特設“戦場”】
実況「さあさあ始まりました、“ゆるスポバトル大会”第一試合!」
実況「第一カードは! “手芸部” vs “筋トレ研究会”!!」
「……試合にならねえだろ!どっちかというと重量差で潰されるだろ!」
志乃が叫ぶ隣で、真宵はすでに試合用エプロンに着替えていた。
背中には、“かわいいは刃”と刺繍された特注スカジャン。
「志乃、武器渡すね」
「武器言うな! これただの……針山付きくまたん型ミトン!?」
「かわいさで敵の戦意を削ぐ作戦」
「地味すぎる!!」
一方、対する筋トレ研は、上半身裸で腹筋6パックのゴリマッチョ2人組。
実況「さあどうなる!? かわいさ vs 筋肉! 夢の異文化交流!!」
「おらあああああああ!!」
筋肉1号が両腕をぶん回しながら突っ込んでくる。
「避けて、志乃!」
真宵の声とともに、志乃は咄嗟にしゃがみこむ。すると――
ブチッ
「なっ……!」
筋肉1号のTシャツの袖が、志乃の“ぬいぐるみクッションカバーパンチ”で破れた。
「このカバー、中に裁縫セット仕込んであったのよ……!」
「地味に危ないな!?」
「次、投げるね」
真宵は糸巻き手裏剣を放つ。意外と鋭い。
筋肉2号、よけきれず顔に当たって視界をふさがれる。
「視界奪取! 今よ、志乃!」
「くっ……いけぇぇぇぇぇ!! くまたんパーーンチ!!」
最後は渾身のぬいぐるみアッパーで、筋肉2号がリング(草地)に沈んだ。
実況「……か、勝ったァァァァ!! 手芸部が!! 手芸部がゴリラに勝ったァァァァ!!」
観客
「うそでしょ……?」
「ぬいぐるみで倒した……?」
「でも……ちょっと、かわいかった……」
志乃「はぁ……勝った……のか……?」
真宵「……かわいいは、戦える」
そうつぶやく真宵の背中は、うっすらと陽に照らされ、どこか神々しかった。