第24話「完成目前! それぞれの“手”が語るもの」
夜の手芸部室。
ひと針ひと針に心をこめながら、少女たちは静かに作業を続けていた。
「……よし。わたしの“手”、これで完成」
真宵が小さく息をつき、針を置く。
重ねられた布の上には、小ぶりで慎ましい、けれど凛とした手の刺繍。
【“わたしの手”は、誰かを支える手】
「私はいつも、誰かの背中を押すくらいしかできなかったけど……
この手なら、“あなたの背中”を、ちゃんと温められると思う」
静かに、でも確かに。
彼女の想いが布に縫い込まれていく。
【“ひとりぼっちの手”から、“つながる手”へ】
「この手、最初は自分のためだけに動かしてたの」
こよみが、針を動かしながら笑う。
「でも、今はちがう。誰かの服を作って、誰かと手をつないで……
こんなにも、あったかいって思えるなんて。びっくりだよ」
【つばきの決意】
つばきの刺繍は、他の誰よりも繊細で精密。
でもそこには、ただの技巧ではなく――彼女なりの“痛み”と“祈り”があった。
「誰かとつながるって、怖かった。裏切られるのも、拒まれるのも、慣れてたから……
でも、あなたたちのそばなら、きっと――この手は、信じていいって思えた」
【志乃の手は“みんなの中心”】
最後に志乃が針を持つ。
全員の刺繍が並ぶ中心に、彼女の手が重ねられる。
「私の手は……みんなを信じて、みんなと笑える、そんな手でありたい」
言葉は静かに、でもまっすぐに。
「かわいいって、ただの飾りじゃない。
想いをこめれば、ちゃんと人と人をつなげる力になる――私たちはそれを、この服で証明するんだ」
【そして、完成へ】
明け方。
部室に朝日が差し込む頃、最後の刺繍が縫い上がる。
ワンピースには、大小さまざまな“手”がつながり、ひとつの大きな輪になっていた。
それは、彼女たち自身の物語だった。




