第23話「見えてきた完成形! だけど、思わぬハプニング!?」
全国大会まで、残り二週間。
部室には、仕上げ作業に没頭する手芸部メンバーたちの姿があった。
「袖のフリルはこれで仮固定OK! 志乃、後ろ見てくれる?」
「うん、いい感じ……この“手の刺繍”、本当に綺麗だね。こよみちゃんのセンス、すごいよ」
試作から改良を重ね、ついに見えてきた“完成形”。
テーマ「つながる手」を象徴するように、全員の手形モチーフが一枚のワンピースに縫い込まれていた。
「なんか……本当に“私たち”って感じするね、この服」
【嵐の前の静けさ】
放課後の柔らかな日差しの中、
部室には穏やかな時間が流れていた。だが――
バチッ……!
突然、部室の照明がすべて落ちる。
「えっ……? 停電!?」と詩織が声を上げた次の瞬間――
「わ、わわわわ……!! ミシン、止まってる! しかも――!」
つばきが青ざめて叫んだ。
「今、メインパーツの一部、刺繍中だった……! データ飛んだ……かも……」
全員が固まる。
「ま、まだパターンの記録はあるはず……!」
天音が急いでPCを開くが、データはうまく読み込めない。
【試される“つながり”】
「ここまで来て……もうダメなんて、言いたくない」
志乃の声は震えていた。
けれどその手は、まだワンピースを離していなかった。
「……やろう。もう一度、みんなで刺繍しよう。最初からでも、きっとできる」
「“つながる手”は、刺繍データじゃなくて、わたしたちの気持ちにあるんだから!」
こよみが強く言う。
詩織は深くうなずき、
「……じゃあ、急遽手縫い対応で! 今から分担しよう!」
【再始動】
夜の部室に再び灯りが戻り、手芸部は全員で縫い直しに取りかかる。
「予定よりは遅れるけど……きっと、前よりいいものができる。みんなで“つながる”ために」
その言葉通り、夜が更けても、針を動かす手は止まらなかった。




