第21話「春、再び。全国大会と、あたたかい手のぬくもり」
季節はめぐり、春。
校門の桜が満開になるころ、手芸部にも新たな風が吹いていた。
「ついに来たわね、全国高校手芸・服飾大会――!」
朝の部室に響いたのは、詩織の気合十分な声。
テーブルの上には、全国大会の案内状が置かれていた。
「主題:"つなぐ"」
手芸や服飾を通して、人と人との想いをどう“つなぐ”かを競う、テーマ展示形式。
【新学年、そして新メンバー】
志乃たちは新学年に進級し、部活にも新入生が加入。
中でも注目は――
「はじめまして。1年の黒川こよみです。かわいい服、大好きですっ!」
元気でちょっとドジな新入部員。けれど“布選びのセンス”は、部内でも一目置かれるレベル。
「今年は、“あたたかくて、つながれるかわいい”を作りたい」
志乃の言葉に、部員たちは大きくうなずいた。
【つばきの帰還】
その日の放課後。部室のドアが、静かにノックされる。
「……お久しぶり。転校、間に合ったわ」
そこにいたのは――東堂つばき。
霜月女学院を退学し、なんと志乃たちの高校に転入してきたのだ。
「私も“あたたかい手のぬくもり”を信じたくなったの。
あなたたちとなら、それが作れる気がして」
驚きと喜びの混じる沈黙のあと、志乃が微笑んだ。
「ようこそ、私たちの“かわいい”へ」




