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灰の翼のスィンザ  作者: 見雨 冬一
十一章 金色邪王
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六十六話 トライホーン壊滅


「お前だけは……絶対に許さない!」

 スィンザは風と炎を纏って、九腕大蛇に立ち向かった。


「お前の許しなど、そもそも必要ない」


 九腕大蛇は、スィンザの炎の斬撃を、難無く腕で受け止めた。


「くっ! 鳥人剣、爆風穿ち!」


「あははは! なんだその炎は!」


 至近距離で放たれたスィンザの爆風穿ちに対して、九腕大蛇は防御する素振りも見せなかった。


「バルカナの黒炎の足下にも及ばない、生ぬるい炎だ」


「うう……うぁぁぁぁ!」

「剣技も未熟!」


 九腕大蛇は、スィンザの怒りの斬撃を軽くあしらった。


「そうだなぁ。しかし新しい記憶の練習台程度にはなるか」


「新しい……記憶? まさか⁉」


 スィンザの嫌な予感は、あっさりと的中してしまった。


 九腕大蛇は金色の体を溶かして、若返ったダバロの姿に変身した。


「稽古をつけてやろう。対価はお前の命になるだろうがな」


「ダバロさんの記憶を……」


 その姿は、ダバロの死を意味していた。


「ダバロだけじゃないぞ……」


 九腕大蛇は鹿跳動による、瞬間移動のような速さで、スィンザの目の前に現れた。


「……獣戦、闘角突砕拳!」


「ぐぅああッ!」

 スィンザは防御する間もなく、腹部に凄まじい衝撃を受けて吹き飛んだ。


「そうか。この細い腕では、この程度か。

まあいいか。まだまだ試したい技はある」


 九腕大蛇は、自身の掌から金色の剣を作り出し、地面に倒れたスィンザにその剣先を向けた。


「まずは、お前のその奇妙な翼から切り落としてやろう」


「――そうはさせるかよ!」


 何処からか突然現れたグラゼルターカが、九腕大蛇に斬りかかった。


「お前も生きていたのか。出来損ないのバカ息子が」


「お前……よくも俺の仲間を!」


 グラゼルターカの奇襲の斬撃は、金色の剣によって阻まれた。


「リ、リーダー……」


「無事か⁉ スィンザ!」


 スィンザに背を向けて九腕大蛇と対峙するグラゼルターカの左腕は、肘から下を欠損していた。


 上腕部には止血のためと思われる紐状の何かが、しっかりと巻き付いていた。


「あははは! 元々弱いお前が、片腕を失ったら何もできないに等しいじゃなか」


「白銀等級を……舐めるなよ!」


「――うおおおおぉ!」

 グラゼルターカの言葉を合図に、今まで息を潜めていたラゼラスが九腕大蛇に突進を仕掛けた。


「獣戦、闘砕突(とうさいとつ)!」


 その突進による奇襲は見事に成功し、ダバロの姿をした九腕大蛇を弾き飛ばした。


「まずは真っ二つだ! 獣戦、角振剣!」


 吹き飛んで体勢を大きく崩した九腕大蛇に、グラゼルターカは追撃を加えるために剣を振り下ろした。


「……獣戦、鹿跳螺旋角(ろくちょうらせんかく)


 九腕大蛇はダバロの技を使って、空中に剣で大きな円を描き、体勢を整えて見事な受け身を取った。


「ぐあぁぁぁッ!」

 九腕大蛇の反撃によって、グラゼルターカの右腕は切り落とされ、鮮血が噴き出した。


「「リーダー!」」

 スィンザとラゼラスの声が重なった。


「出来損ない息子として生まれ、凡才の弟子としてここまで来てしまったお前の結末は、本当に哀れなものだなぁ」


 右腕を失い、その場に膝を落としたグラゼルターカに、九腕大蛇は容赦なく剣を振り上げた。


「九腕大蛇!」

「獣戦……闘角流し」


 グラゼルターカを救うために殴りかかってきたラゼラスを、九腕大蛇は見事な剣技で受け流してしまった。


「獣戦、鹿跳螺旋角衝波」

「がぁッッッ!」


 さらに九腕大蛇は受け流しから繋げるように、身体を回転させ、剣に生じた衝撃波をラゼラスの後頭部に叩き込んだ。


 ラゼラスは俯せの状態で地面に叩き付けられ、そのまま気を失った。


「そこをどけ。小娘」


 両腕を失い、痛みと戦うようにうずくまるグラゼルターカを庇って、スィンザは再び九腕大蛇と対峙した。


「弱く、才能もないやつが……」


『……おい、ダバロ。なんであの子引き取ったんだ? 明らかに向いてねぇだろ』


『そんなことはないぞ、バル。

あの子はすばらしい剣の才能を秘めている。

あの子がトライホーンに留まることを選んでいる間は、その芽が出るまで付き合ってやってもいいと思えるほどだ。

それに、あのソウル・ゲートとも、いずれ折り合いをつけるだろう……』


 その記憶は、引き出していないのに九腕大蛇の中に突如現れた。


(これは、ダバロの記憶か?)


「……?」

 突然動きが止まった九腕大蛇に、スィンザは戸惑いを見せた。


「スィンザ。お前は逃げろ。

お前の飛行速度なら、必ず奴を振りきれる」


「リ、リーダー?」


 スィンザは、自身の背中側から聞こえてきた、グラゼルターカの言葉を受け止めきれなかった。


「ぬぉぉぉッッッ!」

 次の瞬間グラゼルターカは、スィンザの背後から駆け出した。


 地面に落ちていた剣を口に咥えたグラゼルターカは、九腕大蛇に捨て身で攻撃を仕掛けたのだ。


「リーダー!」


「ん? なかなか面白いことをするじゃないか」


 九腕大蛇は考え事をやめて、金色の剣でグラゼルターカの剣を叩き落とした。


「ぐあっ」

「父の技で引導を渡そう。さらばだ。グラゼル!」


 無防備になったグラゼルターカの胴体に、闘角爆砕拳が叩きこまれた。


「ぐおおおおお!」

 グラゼルターカの体は、撃ち出された砲弾のように城壁方向に飛んで行った。


「胴体を粉砕してやろうと思ったのに……だが、まぁいいか」


「うぁあああ! お前だけは! お前だけはッッッ!」


 スィンザは、グラゼルターカの命令よりも怒りを優先してしまった。


「そうだ。次はお前だ。……獣戦派生、星繋ぎの角衝波!」


「がぁ⁉ はっ……」

 瞬きする間もなく、スィンザは全身に数え切れないほどの衝撃波を撃ち込まれた。


「そういえばお前、『奴』と一緒にいたなぁ。

奴がこっちに来る時に、お前の死体をみたらどう思うだろうな」


 一瞬で、ほぼ全身を負傷したスィンザは、なすすべ無く首を掴まれ、物のように持ち上げられた。


「お前の記憶は必要ないから、城壁に叩き付けて殺してやる。

ぐちゃぐちゃになったお前の姿……

奴はお前だと気がついてくれるかな? 

まぁそれも、奴が生きていたらの話だがな」


「ぐぅ……あぁぁ……」

 スィンザは人外の腕力で、城壁に向かって凄まじい速度で投げつけられた。


 薄れゆく意識と、うるさい風の音の中で、不意にダバロの教えを思い出した。


『スィンザ、上手くいかなくて悔しいか? 

もし悔しいのならば、地面の砂ではなく、剣を握れ。

その剣は必ず、お前になにかしらの答えをもたらすだろう』


 スィンザは、その教えに従うように、ブリーズソードの柄を必死に握りしめた。



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