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灰の翼のスィンザ  作者: 見雨 冬一
六章 カルシャの虎
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三十三話 スィンザ対ザニー

 


 先に動いたのは、ザニーだった。


 その優れた身体能力を使った、超人的な飛び込みで一気に距離を詰めた。


「ニャハハハ!」


「…………」

 スィンザは、鳥人特有の優れた視力でその突撃を難無く避けた。


「ふ~ん?」


 ザニーは(かわ)されることがわかっていたかのように、スィンザを目でとらえ続けていた。


「じゃあ、これはどうかな? 獣戦(じゅうせん)……角衝波(かくしょうは)!」


 ザニーは、再び急接近して、裏拳をスィンザに放った。


(これは受けちゃだめだ!)


 本能的にそう感じたスィンザは、自分の右側に向かって、転がるようにその技を避けた。


 スィンザの直感は的中しており、ザニーが放った裏拳は、爆発のような衝撃波を放った。


「その技で、セブンアローズの人を倒したの?」


 スィンザは、押しつぶされたように変形した鎧を思い出した。


「せぶんあろーず?」


 ザニーは、聞いたことがない単語に首を傾げた。


「あなたが、さっき倒した人たちのことだよ」


「剣を使う人と、魔法を使う人のこと?」


 ザニーは、両手の猛獣の爪を振り回しながら、スィンザを攻撃し続けた。


「そう!」


 反撃する隙を見せないザニーに対して、スィンザは防戦一方になっていた。


「強い人を倒すとね、ザニーは強くなれるんだ」


「……強くなってどうするの?」


 スィンザは、ザニーの爪を剣で受けとめた。


 ザニーの爪は魔力で覆われており、それはアザーの〈魔刃武装(まじんぶそう)〉にとよく似ていた。


「〈タリナ〉を守るんだ。ザニーが、タリナを守ってあげるんだ」


 ザニーはその強靭な腕力で、スィンザの剣を押し込んだ。


「そうなんだ!」


 スィンザは、ブリーズソードから突風を発生させてザニーを遠ざけた。


 突風に吹き飛ばされたザニーは、受け身を取るように豪快な宙返りを披露した。


「……スィンザちゃんは、なんでザニーと戦うの?」


「スィンザでいいよ。私もザニーって呼んでるから……」


 スィンザは反撃の時を見逃さず、魔剣から再度突風を巻き起こし、ザニーに防御姿勢を取らせた。


「私の理由はただ一つ! 

私たちの街で暴れないで。いろいろな人が困るから!」


 スィンザは風そのものになったかのような素早い動きで、防御姿勢のザニーに剣を突き付けた。


「……うん。ごめんなさい。でも……」


 ザニーは素直に謝りながら、スィンザの剣に素早く腕を絡ませて、それを巻き上げた。


「うあ……」


 スィンザの後方の地面に、巻き上げられて、飛ばされたブリーズソードが突き刺さった。


「でも、あのバーモは、たおさないといけないの」


 剣を一瞬で失ったスィンザは、武術を体得した猛獣を目の前にして、死を覚悟した。


「――はい。ザニーの勝ち」


 ザニーは、その巨大な肉球つきの両手で、スィンザの顔を挟んだ。


「……え?」


 殺されると思っていたスィンザは、ザニーの行動に拍子抜けした。


「じゃあね。バイバイ」


 ザニーは、呆気(あっけ)にとられるスィンザを置いて、街に戻ろうとした。


「ま、まって! ザニー!」


「なに?」


 スィンザは、どうしてもザニーを再び九腕大蛇に会わせるわけにはいかなかった。


「どうしてザニーは、あの人がバーモだと思うの?」


「ザニーはね、たくさんのバーモを倒したんだ。

だからわかるの。あのおじいちゃんからは、バーモと同じ臭いがするんだよ。

スィンザにはわからないの?」


 ザニーは、会話に応じる気があるようだった。


「私も知ってるよ。

でもね、あのバーモは普通じゃないの。

街の中で戦ったら、街がメチャクチャになっちゃうんだよ」


「ザニーなら大丈夫。

この前もこ~んなにおっきいバーモをたおしたんだよ! 一人で!」

 

 ザニーは子供のような言動と、自信過剰さをみせた。


「……ザニーは今、何歳なの?」


「えっとね……たぶん七歳かな」


 ザニーは、自分の指を曲げて数を数えながらそう答えた。


「な、七歳⁉」


 スィンザは、その衝撃的な返答に驚きを隠せなかった。


(も、もしかして、虎の獣人だから⁉ 

虎の獣人ってこれからさらに大きくなるの⁉)


 スィンザがこれまで出会った人物の中で、もっとも身長が高かったのは筋骨隆々のバルターカであった。


 ザニーは、バルターカよりも細身ではあるが、身長はほぼ同じくらいであった。


 これから常人と同じように成長期を迎えて、今以上に大きくなるザニーの姿は、もはや想像もできなかった。


「な、七歳ならもっとダメだよ! 

お父さんとお母さんはなんて言っているの⁉ 

たぶん危ないことはしないでって、言ってるんじゃないの?」


「……お母さんは、このまえ、病気で死んじゃったよ。

お父さんは、タリナが小さいときに……バーモにころされたんだ

……だから、ザニーがバーモをたおして、強くならないとダメなんだ……」


 ザニーは、悲しげな声でそう言った。


「そうだったんだ……。ごめんね、つらいこと聞いて……」


(タリナって、たぶん妹さんのことだよね? 

女の子の名前だし。

それで妹が小さい頃にお父さんがバーモに……。

でもそうしたら、ザニーはいつからバーモと戦っているの? 

どうしてこんなに優れた武術を会得しているの? ……本当に七歳なの?)


スィンザは謝りながら、ザニーそのものに対する疑問が浮かんだ。


「いいよ。べつに。でももうジャマはしないでね。

あんなバーモがいたら、タリナが安心できないから」


「ごめんね。それはできない。お願いだからやめて」


 スィンザの言葉に対して、ザニーは苛立ったようにみえた。


「ザニーより、弱いくせに……」


 ザニーの両手の体毛が逆立った。


「獣戦、鹿跳動(ろくちょうどう)、虎式……」


 ザニーはその場で飛び上がると、瞬間移動のような速さでスィンザに急接近した。


「鹿跳動⁉」


 その技は、グラゼルターカや、ダバロも使用する戦闘用歩行術だった。


 スィンザは、彼らとの戦闘訓練の中で、その技を見ていた。


「――獣戦、虎牙斬(とらがざん)


 スィンザに急接近したザニーは、両手を上下に勢いよく交差させた。


「うっ!」


 スィンザは、身をひるがえしてその技を避けた。


 鉄さえも簡単に両断できそうなその技を見たスィンザは、ザニーが今まで手を抜いていたことを知った。


「グルルルル……」


 ザニーは獰猛な声を発した。


 フードを目深に被っていても、彼女のその眼光の鋭さは認識できた。


(絶対に諦めるな。たとえどれだけ相手が恐ろしくても、最後まで勝利を諦めるな!)


 スィンザは、アザーの言葉を思い出し、自分を奮い立たせた。


 その後もザニーは、鹿跳動による変則的な高速移動でスィンザに襲いかかった。


(死角に入られなければ、まだ避けられる!)


それに対して、スィンザはその優れた動体視力と、持ち前の高い集中力を生かしてザニーの猛攻を躱し続けた。


「よし! これで希望が見えた!」


 そしてスィンザは、ザニーの猛攻を避けながら、地面に突き刺さったブリーズソードを回収することに成功した。


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