十五話 高速飛行型バーモの襲撃
「よし! じゃあ、情報収集の続きやろう!」
元気を取り戻したテリルは、スィンザの手を引いて立ち上がった。
「そうだね! やろう、やろう!」
スィンザがベッドから立ち上がると同時に、街の中に警報が鳴り響いた。
「な、なに⁉」
「これ……たしか、バーモの出現警報だ。
街の中にバーモが侵入した時に鳴るやつ!」
テリルは、街の過去を記録した魔法道具を見たことがあり、今回のものと同じ音を聞いたことがあった。
「飛行型のサードランクバーモだ!
城壁を飛び越えて来やがった!」
スィンザたちが宿舎の外に出ると、バーモハンターたちが城壁に向かって移動していた。
「なんでみんな城壁に⁉」
「城壁には、〈対空魔弾砲〉があるの。
普段なら、それを使って飛行型の侵入を防いでいるはずなんだけど、今回はなんで――」
「――今回の相手は〈高速飛行型〉らしい。
城壁の対空砲の弾幕を抜けてきたようだ」
テリルの疑問に答えたのは、右足を引きずって宿舎の外に出て来たバリゼだった。
「「バリゼさん!」」
「数日ぶりだな。二人共。
街の中に入られたら、我ら鳥人が直接対応する他ないだろうな。
ということで、行ってくるよ」
バリゼは、長い銃身の魔弾銃を手にして、その漆黒の翼を広げた。
「ソウル・ゲート。バード・オブ・スカイ」
バリゼは、カラスの魂を持つ鳥人である。
彼は、痛みのある右足を庇いながら、左足で地面を蹴って飛翔した。
「バリゼさん、回復痛が……」
「スィンザ、わたしたちもできるだけ高い所に行こう!
わたしの魔弾銃とスィンザの強化風穿ちなら、援護できるかも!」
「そ、そうだね。宿舎の屋上に行こう! あそこが一番近いから」
スィンザとテリルは、そう言って宿舎の中に駆け込んだ。
スィンザは、慣れた手つきで、自身の長い髪を一つ結びにしながら走った。
今回、街に飛来したバーモは三体だった。
巨大なトンボのような姿をしたバーモ。
ツバメのような翼を持つバーモ。
巨大なハエのような姿のバーモ。
「なんだ、あいつら、速すぎて砲撃が当たらねぇ!」
いずれのバーモも、城壁の魔弾砲の弾速を上回る速度で飛行していた。
「きゃああああ!」
「逃げろ! 地下だ! 地下に逃げろ!」
さらにその強靭な外皮による高速体当たりで、街の建造物を手当たり次第破壊した。
バーモが破壊した建造物の破片が街の中に飛散し、人々はパニック状態に陥った。
このサードランクを撃ち落とすには、それなりの飛行速度でできるだけ接近し、魔弾を翼か胴体に当てなくてはならない。
さらに逃げ惑う人々がいない場所に撃ち落とす必要があり、その難易度は城壁の外で行うバーモハントと比にならないほど高かった。
「クソ! なんという速さだ。万全であっても難しいというのに……」
バリゼは、長い銃身を支える左手にも重度の回復痛を患っていた。
その痛みで照準が定まらない上に、そもそもバリゼは狙撃重視型のハンターであり、今回の相手はあまりにも分が悪かった。
バリゼの殺気を感じ取ったツバメ型バーモは、一直線に彼に向かって行った。
「よし! その速度なら、回避はできないはずだ!」
バリゼは、分厚い鉄板さえも容易く貫く魔弾を発射した。
「きゃあばはぁぁぁぁあ」
ツバメが型は、鋭い鳴き声と共に体を傾けて、バリゼの魔弾を難なく回避した。
「なにッ⁉ ぐあああぁぁぁ!」
バリゼは、魔弾を回避した勢いのまま突っ込んで来るツバメ型バーモの突進を、回避することができなかった。
「バリゼさん!」
「そんな!」
宿舎の屋上に上がったスィンザとテリルは、墜落するバリゼに対して、声を上げることしかできなかった。
「――ソウル・ゲート! 〈フェアリー・エフェクト〉」
屋上に上がったスィンザたちの後ろから、全身が緑色の炎で包まれたルモーンが現れた。
フェアリー・エフェクトは、魔人の開錠語である。
「物質生成魔法、グリーン・スロープ」
ルモーンは、スィンザたちには目もくれずに、緑色の滑り台を魔法で作り出した。
宿舎の上空から墜落したバリゼは、その緑色の滑り台の上に上手く落下し、それを使って屋上に滑り降りた。
「あぶねぇ。ギリギリ間に合った……」
ルモーンは息を切らしながら、膝に手をついた。
バリゼが滑り終えた緑色の滑り台は、霧散するように消失した。
「無茶してんじゃねぇよ。バリゼ」
ルモーンは、横たわったままのバリゼに回復魔法をかけた。
「……行けると思ったんだが、思っていた以上に……
体が言う事を聞かなかった」
バリゼは口から血を流しながら、自虐的に笑った。
「けぁああああぁぁぁ」
ツバメ型バーモは、倒れたバリゼ目がけて追撃をしかけた。
「させない! 鳥人剣、風穿ち!」
スィンザは、フレイムボールから炎を吸収して、ツバメ型に風穿ちを放った。
ツバメ型バーモは、風穿ちの螺旋状の爆風に乗るように一回転して回避を行い、スィンザたちから離れて行った。
「な、なんでお前たちがここに⁉ それにスィンザ……お前……」
魔導士であるルモーンは、以前とは見違えるほど魔力の質が向上したスィンザの姿に驚いた。
「ルモーンさん、バリゼさん。
回復痛の中、無理をしないで下さい。
バーモは、私が倒してきます!」
スィンザは、ブリーズソードから発生したそよ風を全身に纏った。
「ソウル・ゲート。バード・オブ・スカイ」
開錠語を唱えたスィンザは、空中に飛び上がり飛行型バーモに戦いを挑んだ。
「無茶だ! 戻れ、スィンザ!」
スィンザのバーモハンターとしての等級は、見習いの白色等級であり、その対応範囲はセカンドランク対応の補助であった。
今回のサードランクバーモは、中級の青銅等級の対応範囲であり、スィンザでは明らかに経験が不足していた。




