001 災厄の始まり
『――非常事態宣言です!! ――繰り返します…非常事態宣言です。これは訓練ではありません……』
ゥウウウウウゥゥゥゥ…………!
街中が怯えと緊張に染まるほど、暴力的な音量でサイレンが響く。アナウンサーの悲鳴ともに不吉なサイレンは、ビル郡に反響し平和だったはずの街をぐるぐると取り囲んでいる。
またかとイライラしながら教室からシェルターに移動する。「今月でもう3回目だぞ」友人の岳が授業が中断された解放感かまたは不安からかいつもより大きな声で言った。「だからなんだよ」と鬱陶しさもありぶっきらぼうに返事をする。
そんな話をしながら歩いているとシェルターに到着して、今にもヒステリックを起こしそうな、若い女教師の川島が「みんな落ち着いて」と何度も言っている。
その川島の声をかき消すように階段から大胆に自衛隊が現れた。
「安心してください、我々は対神専門特殊部隊カグツチです。今からみなさんの身の安全は保証します。」
カグツチの隊長であり俺の上司の筋骨隆々の男、斉藤武智中佐が言った。すると、シェルターの中にいる人たちは一筋の希望の光を見つけ安心した表情になった。
その様子をぼーとしながらみていると、岳が「行かなくていいのか?お前の所属している部隊だろ」不思議そうに聞いてくる。「能天気なやつはいいな」と皮肉って返した時、部隊の方から視線を感じ呼ばれていることに気がついた。
迷宮のような様相をしたシェルターの中の人々の間を縫いながら進むと「早く来い」と副隊長の雪女とも思わせる冷たい口調で催促する。「うざっ、黙っていれば美人なのに」と誰にも聞こえないように愚痴る。
そしてシェルターから移動し、天災対策仮本部に着く。
すると隊長が「全員揃ったようだな…」と周りをみわたしながら言う。そして一呼吸すると
「諸君、今回の緊急天災局地瞬時警報は前回までの誤報や訓練によるものではない。天災対策機構HIEからの情報では日本に最初の降臨した神のイザナギ、イザナミに匹敵すると連絡がきた。今までの無力な人類では、なすすべなく蹂躙されていただろう!! だが!! 我々は聖遺物によって神々に対抗する手段を得た。今回こそは悪夢を我々の手で跳ね除け平和を護るのだ!! 皇国の興廃この一戦にあり!! 」
この発破に、日本対神部隊の最精鋭である彼らは神に対する怒りと仲間に対する敬意を持って戦いに挑もうとしていた。
だが、それに対して彼の目は神の掌の上で踊る道化を見た時のような冷たいものだった。
そして、余韻も冷めて各々が準備し始めた頃に通常部隊が動きはじめた。爆音とともに戦車や戦闘機、大砲が神を覆う繭に向かい攻撃をする。目立つ外傷は出来ていないが、集中砲火を受けている部分は少しずつほつれてきていた。
半刻程たち微かなほつれが繭全体にできた時、通常兵器による攻撃は徐々に弱くなっていった。
攻撃が止み、建物が壊れて動きやすくなった街を僕らの部隊が鍛えてあげられた足で全力疾走しながら移動していた。
その時突如、繭から核が落ちた時のような衝撃が飛んだ。壊れた街やさっきまで激しく攻撃していた兵器や兵士まで一つ残らず吹き飛ばされる。まるでこのステージに立てるのは選ばれたものだけだと宣告するためのようなものだった。
***
「旅人よ、厄災を防ぎ幸福を呼べ《蘇民将来護符》」
部隊の1人が発動した聖遺物の結界に最後尾にいた俺は入ることが出来なかった。衝撃波に直撃すると強風に煽られたわたげのように吹っ飛ばされた。
電柱だったものにぶつかり止まった。背中にくる激しい痛みにフラストレーションが溜まる。コンクリートの粉塵が舞いどこが上下左右すら分からなくなりうずくまった。
やっと粉塵が落ち着き陽の光がさした頃、ゆっくりと目を擦り背中の痛みを堪えながら身体を起こして立ち上がる。神聖な眩しさを感じ額に手を当てながらゆっくりと前を見るとそこにいたのはだった。女神のように完成された美しさの少女がいた。
「貴方はだあれぇ?」
これが彼女との出会いだった。




