ハイライト哀愁でぇと~笑顔見せてよ
ーーーハイライトが消えてる。
我に返った私が見たものは、死んだ魚の様な目をした丸だった。
小さくて愛らしいお耳はペタリと閉じ、お日様香る毛並みはバサバサに乱れ、尖った鼻先の両方から生えているおヒゲはしょんぼりと垂れ下がり。ぐったりと項垂れているその姿に漂うはまさしく哀愁ーーー。
...やりすぎてしまったようだ。
だが、考えてみたまえ。
普段触れあう機会の無い小動物が、自らの意思で近づいてきたのだ。
ほさんと前足をのせたのだよ?
これがどうして尋常でいられようか。
否っ。
いられる訳がない!
いやしかし、いくらここが異世界で、喋るタヌキとは言え野生動物。
人が好き放題にして良い訳ではない。
私がしたのはタヌ権を無視した乱暴な行いであったと反省するに至る。
「すまん、タヌさんよ。次からはちゃんと許可を取る事を約束する。」
「許可しねぇぞ!?」
ガウっと歯を剥き出しにして威嚇された。
丸は小さな前足で乱れた毛を撫で付け、ふうっとため息を付いた。
「...まぁとにかくだ。異世界課はギルドの裏口にある。案内してやるから付いて来な。ちょっと歩くぞ。」
「えっ!」
「なんだ、売り飛ばしたりなんかしねぇぞ?トラベラーは珍しくも何ともないからな。」
驚いた私に、丸はさも心外だとばかりに腰に手を当てて呆れたように言った。
「いや...ちがくてね。」
「うん?」
「タヌさん足短いじゃない?私が抱っこしてった方が早いかなって、いてっ!」
げしっと狸キックが決まった。
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てってって...と軽快に四つ足で歩く丸の後を付いて歩く私。
少しずつ森の木々が少なくなって、舗装された道に出る頃には森をすっかり抜けていた。
森を抜けると家がチラホラ見え始める。
丸太で出来たログハウス風の、いかにもな家もあるが、木枠に漆喰で出来た家もあり、日本の古民家みたいな瓦葺の家もある。
西洋と東洋が混じったみたいな感じ。
教科書で見た大正時代の建物みたいだ。
レトロモダン。スゴ可愛い。映える。
「いや~最初異世界来たってわかった時は嬉しかったけど、魔法が使えないってわかって残念だわ。」
黙って歩くのも何なので、道すがら丸に話しかける。
「ああ。みんなそう言うな。」
「異世界人はみんな魔法が使えないの?」
びっくり。私だけかと思ってたよ。
「当たり前だろ。魔法の無い世界から来たんだからよ。」
「魔法の無い世界...確かに、私の世界は魔法なんて無いけど...。異世界に渡る時に使える様になるんじゃないの?」
それがチートなんじゃないの?
「ないない。そもそもトラベラーは魔管がねぇ。」
まかん。こうさっぽう?
白いターバンの緑の魔王がマントを翻す。
「血管は血液が通る管だろ?それと同じで、魔管は魔力が通る管だ。トラベラーはみんな魔力が無いから魔管がねぇ。」