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めしやがれ!  作者: 四浪久間
7/9

ノーミがリュック背負って異世界へ!HEY!



...しーん....。


静かになるとさ、ホントに『しーん』て聞こえるんだね。

これ最初に表現した人スゴいね。

まさしく『それな!』




......。

.........。

............。



うわあああぁ、どーしよー!!

ノミいますかって失礼すぎない?

私ひどすぎない?


でもでも、気になっちゃったんだもん!

野良猫抱っこしたらノミに刺されて掻きこわしてキスマークみたいになっちゃったんだもん!

ノミいないならもふりたいんだもん!

うええぇーーん!!






「あー...まぁ...ノミはいないな。これでも湯屋を経営してるんでな、一応気は使ってる。」


律儀ーーー!!!

答えてくれるなんて律儀ーーー!!



ん???



「タヌさんや、湯屋って?」

「おう。嬢ちゃんとこでは銭湯だったか。」





待て。

情報が多すぎる。



「喋るタヌキ。」

「うん?」

「異世界人。」

「ああ、今月で三人目だ。」

「異世界課。」

「手続きすればすぐ帰れるぞ。」

「はいそこーーーっ!!」




びしぃっ!と指を指す。


「帰れるの...?」

「おう。」


事も無げにのたまうタヌキは、その鋭い眼光を優しく細めた。


笑ったのだ。



「異世界人は、こっちじゃトラベラーって呼ばれていてな。旅行客と同じ扱いだ。旅が終わったなら帰るのが道理だろ。ま、詳しくは異世界課で聞くといい。連れってやるから。」




帰れるんだーーーー!!




そう思ったら力が抜けた。


異世界キターと思っていたら、自分が何のチートも無いのに気付き。


1人でお金もなくてどうしたらいいのか途方に暮れ。


そして喋るタヌキ。


上がったり下がったりだったわ。

そういや、先輩の結婚式で店長がドヤ顔で言ってたな。

『人生には3つの坂がある。上り坂、下り坂、そしてーーーーまさか。』ドヤァーん。


その時は親父ギャグやベエぇーって、周りもドン引きだったけど、わかる!

今ならわかるよ、店長!!


今がまさに『まさか』なのねっ!





ペタンと座り込んだ私に、丸が声をかけた。


「嬢ちゃん立てるか?」


ほさんっ。

スーツのジャケットに黒い前足が乗った。

それはもうちんまりと。


呆けて見つめてみる。

ちんまり。




ーーー想像してみたまえ。

丸くてもっふりした小動物の前足がっ。

わったっしの腕にっ。

そのちんまりした前足を乗せているのだっ。

ほさんっと。




「たぬうううううううぅーーーーーっ!!!」

「ぎゃああああああーーーーーー!!」




私が我を忘れて抱き潰しても仕方あるまい。





「かわいいねかわいいねっ、もふもふだね、あったかいね、かわいいねっ、足が短いねっ、お手々が太いねっ、かわいいね~っ!!」



ぶっといお手々をもみもみ。

あんよの先の固い肉球をすりすり。


それから脇の下を持って、ぷら~んとさせてみる。丸はジタバタともがくが、その様でさえ可愛らしい。

お腹の毛は白く、背毛よりずいぶんと柔らかい。その白い和毛に顔を埋めてグリグリと匂いを堪能した。


「たぬさんいい匂いだね~、お日様と石鹸の匂いだねっ、ちゃんと洗ってもらってるんだね、かっわいいね~!!」

「嬢、嬢ちゃん、離し...頼む...」

「かわいいかわいいっ、たぬさんかわいいね~っ、んーっまっ!」


頭のてっぺんの、丸いお耳の間にむちゅっと唇を押し付けすりすりし、むぎゅーっと抱き締めた所で、私の気は済んだ。



「はぁ...たぬさん最高だった...」



帰れるとわかった私は無敵だった。


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