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めしやがれ!  作者: 四浪久間
5/9

漫画と涙と男と女

 

 私は小学校からずっと女子サッカーをやっていて、クラブチームに所属していた。

中学校では部活に入らず、授業が終わるとすぐにママンが車で迎えに来て、そのままクラブチームの練習に向かう毎日。平日は練習、土日は遠征。長期休みも合宿とホントにサッカー漬けの毎日で、私も大変だったけど、送り迎えに弁当作りと、ママンもホントに大変だったと思う。ありがとうママン。

 そんな私に中2の終わり、高校からスカウトの話が来た。女子サッカーの強豪高で、全寮制の高校だった。

そりゃもうママンとパパンと大喜びしたわさ。


そこでサッカーできるなんて信じられなくて。


努力が報われたんだって。


夢に一歩近づいたんだって。










 ーーーだからね、思ってもみなかった。こんなに簡単に終わるなんて。







 右膝蓋骨粉砕骨折。


 です、と。

 病院で目覚めた私に医師はそう告げた。














 


 久々のオフの日、本当~に久々のオフだった。定期テストだろうが遠足だろうがおかまいなしの練習が、ぽっかりと空いたその日。学校終わったらカラオケに行こうと友達と約束していた。帰って着替えたら現地集合ね!そう言われて楽しみにしすぎて、自転車かっ飛ばしちゃったんだよね。


 相手の車は一時停止無視。つまり、出会い頭にどっか~んといっちゃったらしい。

ただ、相手がスピードをずいぶん落としていたから膝の皿の骨折だけで済んだと。命があって良かった、と医師は言う。








 ーーー私は女子サッカー部のない高校に入学した。






 全治にどれ位かかったのか、良く分からない。退院してもリハビリと診察でしょっちゅう病院に通ってたしね。

 そのうちリハビリが必要なくなって、時々痛む膝は、近所の接骨院で診てもらうようになった。




 そこで私はあの漫画に出会った。




 サッカー漬けの毎日を送っていた私は、読書とは無縁だった。

読む時間がないし、そんな時間があったら寝ていたかった。家にも漫画の類いは無かったし、入院していた病院のキッズルームには漫画や小説があったが、その時の私はただぼんやりと息をして1日をやり過ごしているに過ぎなかった。







 そこの接骨院には院長の趣味であろう、ちょびっと、いや大分古い漫画が置かれていた。



 友に騙され恋人を奪われ、閉鎖されたエリアで傭兵のパイロットをせざるを得なかった男の話とか。


 胸に黒い十字架を持つ主人公が、自転車のスポークを武器に悪を退治する話とか。


 マリオネットを連れたスリの話とか。



 いやもうね、めっちゃ読んだわ。むしろ読みたくて毎日通っちゃったわ。かなりの時間入り浸ったわ。

そんでね、不思議な事に私が読み終わると入れ替わるの、別の漫画に。

もー!!ありがとう院長!



その中にあったんだな。


 最初は絵がキレイだなと。

 表紙のカラーがね、色鉛筆なんだよね。わーキレーと思って中見たら、内容は結構エロかった……。

 これ、少年誌で大丈夫なのー?!的な。


 いや、今にして思えば全然大丈夫なんだけど、今までサッカー脳で来ちゃったからさ、エロスとは無縁だったのよね。ちょっとドキドキしちゃった訳さ。いや、若いね。

今じゃ多少のエロスも乙女の嗜みとして聞き齧っております。


この漫画の話、聞きたい人いるかしら。いなかったら聞き流しておくれ。


その漫画はね、初めて読んだ剣と魔法の世界モノだったんだ。


古の邪悪な魔法使い。

みんなその魔法使いに夢中になっちゃうんだけど、彼の心を占めるのはたった一人の女の子。

あれなんか、こうして説明するとわりとよくあるハーレム系??


初めて読むファンタジー。かつキレイな絵。魅力的なキャラ逹が繰り広げる、時にコメディ、時にシリアス、結構なお色気シーンもありつつなその漫画に、そりゃもうどっぷりとはまっちゃった訳なんだけど、私が知った時には既に未完の状態だった……。

最後の方は不思議な感じになっていて、お色気もマシマシで、私の初恋のおっさんはほとんど出なくなっていた。まぁ、もともといっぱい出てた訳じゃないんだけどさ。



漫画がこんなにワクワクドキドキするなんて知らなかった。

実際にいたらこの位の身長かなぁとか、声はどんな感じかなとか、想像するのも楽しかった。



私の空っぽになった何かは、おっさんのお陰で埋まったのだ。



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