そうさ勇気は100%やりきるしかもうないさ
たらららんったららららん、たららららったたららららんーでーでーでーー
おっとこれは黒サングラスのあの方がストーリーテラーの、奇妙な物語のテーマソングだったわ。
…死んだのかね、私。
死んだ覚えないけどな。普通にトイレから出ただけだけどな!
て事は、やっぱり転生じゃなくて転移だよね。
突然転移だよね。転移って事は喚ばれたーーー??
まさかーーー。
聖 女 様ーーー!!
いやないわ。それはないわ。もう騙されんわ。いい加減しつこいよね、このくだり。何回聞かせんだうっせぇわっ。まぁ、一応って事で。
だって、森の中だし?
神殿じゃないし?
間違って落とされたとか。
ないない。
だってここに来てから腹時計で小一時間、あれやこれややってるけど、何も出来ないし、誰も来ない。
聖女様だってんならお迎えとか追っ手とか、王子とか神獣とか来るでしょ、天婦羅でしょ。いや間違えたテンプレだわ。
まぁいい。つまり誰も来やしねぇ!!
攻撃魔法は使えなかったけど、癒しの魔法とか試すべき?
いやダメだ、使えないって分かったらもう立ち上がれない。
これ以上ダメージ喰らったらマジで折れる。もう既に折れかかってるのに。
もう、裏切られるのは沢山なのーーーっ!!
つー訳で、聖女説消えました。
消えたはいいけど、気が付いた事があるんだがね、聞いてもらえやしませんか。
ーーー今後どうすんだ、これ。
つまり今の状況って、見知らぬ場所に着の身着のまま一人きり。言葉が通じるかどうかも分からない、お金も無いし力も無い。ただの無力な妙齢の女子。
ヤバくね?これマジでヤバくね?
さっきまで浮かれててごめんなさい。
お家に帰して下さい、いやお家じゃなくてもいいです。
もといた場所に帰して来なさいってママンにも言われるよ?
速やかに早急にスピーディーに帰らせて!!
うわーん、こんな事ならトイレなんか行くんじゃなかった。潔く漏らせば良かったんだ。なんで頑張っちゃったの、私の馬鹿馬鹿馬鹿~!!
取り敢えず、異世界人って事は隠した方が良いよね?!
私は魔力もチートも何もないただの一般的な販売員っ!
スーツしか売った事ないの!しかも今月はまだ1着だけっ!
俺TUEEEEなんて出来ないっ!
うわーん!!!
「おっやおや、騒がしいと思ったら……まぁた異世界人かい?」
びっくぅーんんん!!
急に聞こえたその声にもビビったけど、そうじゃないのそのセリフ!!
「忍者マスターガッ……」
振り替える。慌てて声のした方を振り替える。
「ラ……?」
ーーーいない……?
ああビビった、あの漫画の世界に転移しちゃったのかと思ったよ。
剣と魔法の世界。
女にだらしない邪悪な魔法使い。
の、友人?の忍者マスター。
15歳の女の子にスライムけしかけるとか、最初はどーよとか思ったけど、本当は、絶対に手に入らないただ1人をずっと思ってる純愛なおっさんなのだ。
おっさんがその人をいつから好きなのか、どうして好きなのかはストーリー上では全く出てこないんだけど、チラッと気持ちを匂わす描写が出てくるんだよね。そこにキュンキュンしちゃうんだよ。
でかくてごっつい傭兵みたいな成りしてるのに忍者ってとこもツボる。そんなに存在感ありありで忍べないだろって突っ込みたくなっちゃう。
同じ忍者なら、みんなの初恋は土井先生かもしれないけど、私は違う。
私の初恋の忍者マスターガ……
「おーい、こっちだ、こっち。」
「ん??」
私の妄想はぶったぎられた。
声のする方を振り返っても姿は見えない。
視線を足元に下ろすと、そこには果たしてちんまりとタヌキがいた。