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悠久な再会  作者: 天空瞳
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1・プロローグ

初めての異世界恋愛もの。

よろしくお願いします。


 王立マリアント魔法学院。

 そこは国中の魔力を有する子ども達が集められ、学問や魔法を学ぶ場所。

 

学院内では、貴族も平民も同じ。

 だけど一部の上位貴族の選民意識は高く、その子ども達は同じ学院の平民を見下す。

 そのせいで、貴族の子どもと平民の子どもの確執はいつもどこかで起こっている。

 

そして今日も、一人の平民の女子生徒が、貴族の女子生徒数人に取り囲まれ学園の中庭に追い詰められていた。


「ちょっと、あなた!平民のくせに王子殿下に近寄るとは、なんたること!?ご自分の身分をわかっていらっしゃるの?」


 女子生徒の剣幕に、追い詰められている女子生徒は涙目で、あうあうと言葉を発することができなくなっていた。


「なんとか言ったらいかが?」


 移動教室だったのだろう、胸に抱いた教科書を抱きしめて、泣き出しそうな女子生徒は、何も言えずに怯えていた。


(そりゃ、あんな人数に囲まれたら、怖いわよねー)


 その状況を近くの植え込みから覗いている、私。

 子爵令嬢五人、男爵令嬢三人に囲まれている平民の女子生徒は、最近の第二王子殿下のお気に入り。


 この国、レイバティ王国は、周りを海と山に囲まれた資源豊かな国だ。

 隣国とも同和条約が締結されていて、平和である。


 王と王妃の仲も良く、二人の間には王子が三人、王女が二人いる。

 王女二人は自国の公爵に一人、隣国に一人嫁いでいった。


 第一王子は妃を娶り、次期国王となるために、公務をこなしている。

 第二王子と第三王子は、魔法学院にいる。


 そして、第二王子が、くせ者だった。

 何がくせ者かってこの王子、女癖が悪い。


 第一王子と第二王子は、八歳差で、すでに第一王子が王太子になることが決まっていたから、甘やかされて育った。

 だから、好きなことをしている。


 貴族だろうが平民だろうが、好みの女性を見つけるとすぐに口説く。いつも周りを女性に囲まれていた。


(一応、顔はイケメンなんだけどねー)


 第二王子の顔を思い出して、乾いた笑いを浮かべた。


 王家にだけ受け継がれる、紫がかった銀色の髪は、肩までの長さで首の後ろで一纏めにされ、金色の目は切れ長で、その笑顔を見た女子生徒達は、頬を赤く染め、気絶していく。


(目の奥はいつも笑っていないけどねー)


 ため息を飲み込んで、目の前の動向に視線を向けた。


 可哀想な女子生徒を助けに行くか、それともこのまま傍観するか。

 考えていると、噂の第二王子が側近二人と数人の女子生徒を引き連れて現れた。


 側近二人に何か指示をした第二王子は、取り囲んでいる令嬢達に視線を向けた。


「おや、どうしたんだ?そんなところで」


「こ、これは殿下!どうしてこのような所に!」


 平民の女子生徒を取り囲んでいた貴族令嬢達が、慌ててカーテシーをするが、それを第二王子は笑顔で止める。


「楽にしていいよ。ここは学院だし」


「あ、ありがとうございます」


「で?こんなところで何をしているの?」


 笑顔で聞かれた貴族令嬢達は、冷や汗を隠すように扇で口元を隠し、視線を彷徨わせる。


「い、いえ、何も。それでは、失礼いたしますわ!」


 全員逃げるようにその場を立ち去っていった。


(令嬢が走るなよー)


 取り残された平民の女子生徒は、ポカンと口を開けて、令嬢達が走り去った後を見つめた。


「さて、もうすぐ授業が始まるよ。君も行くといい」


 ニコリと微笑まれた女子生徒は、頬を染めお辞儀をして去って行った。


(はぁ。よかったよかった)


 事なかれ主義の私は、問題に首を突っ込みたくないので、殿下が収拾をしてくれてホッと息を吐き出した。


(さて、私も見つからないように戻るか)


 そろりと足音を立てないように植え込みから離れ、ようとしたところで肩を掴まれた。


「ひっ!」


 驚いて振り向くと、そこにはさっきまで殿下の後ろにいた側近二人だった。


「な、なぜ……」


 見つからないように気配を消していたのに、あっさりと捕まったことに驚愕した。両方から手を掴まれ、殿下の前に連れ出される。


「やぁ、やっと見つけたよ。ディアナ嬢」


 やっと見つけたと言いながら笑うその顔は、目の奥が笑っていない。


「……お手間取らせ、申し訳ありません、殿下」


 冷や汗がダラダラと流れる。視線を合わせたくなくて俯いていると、顎に手を添えて無理矢理上を向かされる。


「そう思うなら、どうして毎回同じことをするんだろうね?ディアナ嬢?」


 殿下と視線を合わせたことで、後ろの令嬢達の怒りの顔が見えて恐ろしさで震える。


(あなたの取りまきの令嬢達が、怖いからです!)


 心の中で罵倒して、引きつった笑顔を殿下に向ける。


「あ、ははは……」


「まあ、いいよ。それじゃあ一緒に着いてきて貰おうか」


「……はい」


 側近二人に挟まれて、しぶしぶ殿下達の後を付いていく。


(どうして、こうなった……)


 ため息を吐いて、空に視線を向けると、どこまでも青い空だった。


 

ありがとうございました。

面白い、続きが読みたい等評価いただけたら励みになります。

よろしくお願いします。

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