常識という牢獄
プレイヤーネームのおさらいです!
SharangA シャランガ (水篠 梵)
VAULT ヴォルト (南条 颯)
Susano スサノ (月城 八都寧)
今回は説明が多くて申し訳ないです。なんとなくで読んでいただければOKです。
約束の時間。
3人は近くのホテルを借り、BFカルナバルにログインした。ログインするとeスポーツ部部長二戸陽菜のアカウント“NitoO”からカスタムマッチの招待が来ていたので承認ボタンを押した。
VAULTは待機ロビーにワープした。
待機ロビーはコンビニぐらいの大きさで、先程訪れたeスポーツ部の部室が再現されていた。
「あれ?なんで部室にいるの?」
「待機ロビーは設計できるからな。eスポーツ部側が再現したのを設定したんだろ。」
「というか、ヴォルトくん来るの遅くない?ゲーム内でも遅刻?」
「承認の仕方わかんなくて手こずった。」
「まぁ、ヴォルトらしいな。」
待機ロビーには3人だけではなく対戦相手のeスポーツ部の3人もいた。
部長二戸陽菜のアカウントである“NitoO”、眼鏡をかけて言わずとも分かる頭脳派の“TeLeS”、一言でいえばマッチョ“CASTLE”の3人だ。
そのうちの1人テレスが口を開く。
「部長の言ってた事は信じがたかったけど、2人は黒髪だし、1人は見慣れないスナイパーライフル持ってるし……、本当に初心者2人とフロア100みたいだね。」
「はい!また理解できない事言われました。SharangA、説明して。」
「フロア50以上の人は髪色変更できるから“黒髪=初心者”。フロア100に到達すると自分でオリジナルスキンをデザインできるから“見慣れないスナイパーライフル”。」
シャランガは面倒くさそうに端的に伝えた。
言われてみればヴォルトとSusanoしか黒髪はいないし、シャランガは男心がくすぐられるスナイパーライフルを持っている。服装も2人だけ初期スキンなので同様なのだろう。ちなみに、シャランガが紫髪、ニトが赤髪、テレスとキャッスルが茶髪だ。
「今回は3vs3の変則マッチ。だから試合開始前に作戦会議の時間を10分取るわ。マップはテンボス、BO1の一発勝負。OK?」
「なるほど!色々と準備してくれてありがとうな、NitoO!」
ヴォルトは笑顔でニトに礼を述べた。その笑顔は颯が好きな二戸にとっては致死量ともなる破壊力だ。
「むひょっ、(咳払い)。じゃあ、は、始めましょうか。私たちがTeamWhiteであなたたちがRedね。」
6人全員がワープし、戦いの地“Ten Bosch”へと降り立つ。
【仙ヶ谷高校 紅白戦】
Team Red
Gunner SharangA
Gunner VAULT
SPECIAL ONE Susano
→Blader
Team White
Gunner CASTLE
Officer TeLeS
SPECIAL ONE NitoO
→Bomber
ヴォルト、シャランガ、スサノは全員スポーン地点に降り立つ。
「うぉ!なんだここ。海外に来たみたいだな。」
「落ち着けヴォルト。時間は10分しかない。お前らにルールを伝える。」
「そういえば私達ルールすら知らなかったね。」
異世界転生したかのような世界観に興奮していたが、ルールすら知らないという事実に冷静になる。
「まずは武器・道具を買う。こっちの屋台に来てくれ。」
お祭りでよく見る屋台のようなところにはたくさんの文字が書かれている。
「このマーケット…通称屋台でポイントを武器・道具と交換する。ポイントは1人5000Pが与えられる。そして、武器の値段はここに書いてある。」
シャランガが指さした先には武器の価格表が貼ってある。
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Gunner用
スナイパーライフル 4000P
アサルトライフル 2500P
サブマシンガン 1500P
ショットガン 1500P
ハンドガン 500P
SPECIAL ONE用
刀 2500P
小刀 1000P
ハンドガン 500P
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「うん、スナイパーライフルが高いって事しかわからん。」
「私は刀を買えばいいのよね?」
「スサノは刀、ヴォルトはショットガンを買ってくれ。」
「え、アサルトライフルじゃないの?」
「まだエイム力のないヴォルトにはそっちの方がいい。ショットガンは一発撃てば散弾する銃だ。アサルトライフルより当てやすいし、近距離なら威力が高い。」
「OK!とりあえずショットガン買っとく。」
「俺はスナイパーライフルを買う。これで武器は終わり、次はアーマーだ。これを見てくれ。」
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オートアーマー 1500P
マニュアルアーマー 1000P
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「オート?マニュアル?車みたいね。」
「意味合いは一緒だ。オートは自動的に、マニュアルは任意に発動することで銃弾を1発だけ防いでくれるアーマーだ。逆に相手を倒すときはまずアーマーを壊し、その後に止めを撃ち込む必要がある。俺はスナイパーで4000P消費しているからマニュアルだが、2人はオートだ。不意打ちされた時にマニュアルでは反応できないから基本的にオートを買う。」
「スナイパーライフル買うと自動的に身を守ってくれないのか…。大変だな。」
「あぁ。だが、スナイパーライフルはアーマーを突き破れる。つまり、スナイパーライフル相手にはアーマーを持っていようが関係ない。一発でKillできる。」
「おぉ!アーマーを壊さなくてもそのまま倒せるのか。ハイリスクハイリターンって事だな。」
「次に爆弾や薬剤などの道具だが……今回は俺の言うものを買ってくれ。」
「「了解。」」
こうして慌ただしく屋台での買い物は終わった。
3人が5000Pで購入したものは以下の通り。
SharangA
スナイパーライフル 4000P
マニュアルアーマー 1000P
Susano
刀 2500P
オートアーマー 1500P
スモーク爆弾 500P
射線レンズ 500P
VAULT
ショットガン 1500P
オートアーマー 1500P
隠密剤 1000P
加速剤 1000P
「皆、無事に買えたか?」
「うん。シャランガくんの言ったとおりに買ったよ。」
「俺もばっちり。」
「次にマップについてだ。これを見てくれ。」
シャランガはテンボスの地図を広げる。
「俺たちが今いるのは下側のスポーンだ。相手は上側だな。ゲーム前半は後から説明する救難閃光をマップ真ん中の設置場所に設置できた方の勝ちだ。だが、設置には時間がかかる。だからまず重要地点であるA・Bタワーの陣取り合戦が行われ,確保すれば高所から設置の邪魔や援護ができる。
「なるほど、救難閃光の設置が勝利条件だけど設置の為にはタワーを確保しなきゃいけないって事ね。」
「そうだ。そして設置に成功した前半ラウンドの勝者は後半ラウンドが優位になり、後半の勝者が全体の勝者となる。」
「後半を有利にするための前半って事だな。」
「実際に前半勝てば後半も7割方勝てると言われている。」
「じゃあ、前半で勝たないとね。」
シャランガはバックパックの中から炊飯器ほどの大きさの物体を出す。
「これがその前半ラウンドで設置する救難閃光だ。設置には20秒間かつ両手を使うため安全を確保してからじゃないと難しい。今回は俺が持つ。」
「了解!前半ラウンドはA・Bタワーを確保して、安全を確保してから設置な!」
「これって相手を全滅させれば早くない?」
「それを狙うのも一手だ。事前に伝えているようにこのゲームは戦略が非常に大事だが今回はシンプルにしようと思う。」
「題して?」
「VAULT奇襲作戦だ。」
「え?俺?」
「このマップを見て思うことはないか?」
「いやぁ特に何も感じません。しいて言えば建物に登れそうだなぁ……ぐらいしか。」
「まさにそれだ。このマップの建物はタワーを除いてすべて二階建て。つまりヴォルトなら登れる。屋根の上に登れば奇襲し放題だ。」
【ゲーム開始まで残り一分】
「やばっ、もうすぐ始まるぞ?本当にその作戦で行くの?」
「うん。お前ならやれる。」
「がんばって~。」
「んな無責任なことあるかーー!」
「その分ヴォルトくんは責任重大だからね。」
「まじかぁぁあ。」
「しょうがない。奇襲のオススメスポットだけ教えてあげるか。」
「どこどこ?」
「奇襲にオススメの場所はーーーーーだ。」
【ゲームを開始します。】
◇ ◇ ◇ ◇
【仙ヶ谷高校 紅白戦】
【Team Red vs Team White.】
【Flashラウンドを開始します。】 ※前半ラウンドのこと。
カウントダウン開始
5…4…3…2…1…
戦いの始まりを告げる警戒音が鳴り響く。
警戒音と共にAサイドへ向けて走り出すのはTeam Whiteつまりニト・テレス・キャッスルのeスポーツ部3人だ。
「スキャンどうだった?」
「開始直後にBサイド側に抜ける通路に向けてスキャンを撃った所・・・例のフロア100はBサイドで間違いないです。」
情報を集めが仕事であるオフィサーを務めるテレスは敵の最大火力シャランガがBタワーに向かった事を把握していた。
「ラッキーね!フロア100の化け物なんて無視してAタワー確保しましょう。」
「安心してくだされ、部長殿。どんな敵がおろうとも私の筋肉がすべてを粉砕します。」
高校生とは思えない風貌のキャッスルは筋肉を見せつけながら走る。
「あ、ありがと。期待してるわ。」
「部長、キャッスル。この角を曲がればAサイドだ。一応、敵に気を付けて!」
「「了解!」」
3人は同時に角を曲がる。3人同時なら敵がいても人数差で勝てるからだ。
「いない!ってことは!」
「僕たちは最速でここまで来ました。それで敵影が見えないということは敵が全員B側か設置場所にいるという事。油断は禁物ですが確実にAタワーは確保できます。」
集めた情報から導き出されたテレスの読みは正しい。
彼らは警戒を怠らずAタワーに入った。
「さて、これからどうしましょうか。」
「まず、このタワーの最上階の5階に向かいます。アサルトライフルを持つキャッスルを5階に配置して次の動きに繋げます。僕も目視で情報を集めたいので部長は1階に残ってもらっていいですか?」
「わかった。ここで警戒してる。気を付けてね。」
「僕たちは上に行くだけなので大丈夫ですよ。危ないのは最上階での敵スナイパーからの射線ぐらいです。」
「相手のスナイパーはフロア100の化け物だから油断はしちゃだめよ。」
「いつも以上に射線管理に気を付けながら上で情報を集めてきます。」
テレスとキャッスルはAタワーの階段を登っていく。二階、三階、四階と順調に登って行った。最上階に登る前、シャランガのスナイパーを警戒し4階にキャッスルを残し、1人でテレスは最上階5階に状況を確認しに行った。
はるか遠くのBタワーに注意を向けたとき…………、
ショットガンの発砲音が鳴り響く。
いるはずのない敵…ヴォルトの一発でマニュアルアーマーしか持っていなかったテレスは崩れ落ちる。
「なぜお前がここにいる!?」
集めた情報を考えれば彼はここにいるはずはない…。なぜここにいる!?答えは見つからず、テレスは光の粒子になり消えていく。
テレスが読みを間違えたのも無理はない。テレスが集めた情報から導き出された読みは間違いなく正しかった。しかし、集めた情報だけでは正確な答えを導き出せなかった。
ある1つの情報が足りていなかったのだ。
“VAULTの動きは常識で考えてはいけない。”
この情報を手に入れていれば結果は変わっていたかもしれない。
「残念だったな。俺は常識に囚われないのよ。」
【VAULT killed TeLeS.】
VAULTの勝報・TeLeSの敗報はアナウンスによって遠くのプレイヤーにも伝えられた。
しかし、アナウンスされずともその情報を目の前で確認した男が1人。
「目の前で仲間がキルされるとは…あぁ、なんて屈辱だ。筋肉の裁きを受けさせてやる。」
キャッスルはアサルトライフルを構えながら下の階から階段を登ってくる。
「おぉ?マッチョマン、脳みその中まで筋肉になってなきゃいいなぁ?」
ヴォルトはショットガンを構える。
2人の銃声は同時に鳴り響いた。
二戸ちゃんは颯に「ありがとうな、NitoO」と呼ばれたときに、アカウント名を下の名前にしておけば、名前呼び体験できたのでは!?と後悔していたらしい。
ヴォルトが既にAタワーにいた理由については次回きちんとやります。
読んでてよく分からなかった方へ!
前半ラウンド(Flash)のまとめ!
①お互いが持っている救難閃光を設置すれば勝ち。
②安全に設置するために重要地点を確保すべし。(今回ならA•Bタワー。)
③安全を確保したら設置位置に設置→Win
④まどろっこしければ敵を全滅させてから設置すればOK
⑤この前半ラウンドを勝て後半が有利になる。
⑥後半ラウンドを勝てば勝利!