VAULT vs Susano
やっとこさ、戦闘シーンです。
【VAULT vs Susano】
Ready Fight!!!
射撃練習場と呼ばれる荒野には的が沢山あり、遮るものなど何もない場所だったのだが、梵の地形編集によってVAULTとSusanoの間には高さ3メートルの長方形のコンテナが置かれた。これでお互いの身体は視認できない。
俺の強みはやはり機動性…、エイムに自信がない今は機動で有利を作りだすべき…。風の噂で射撃戦は高所有利と聞いたことがある。しかも相手は刀……。高所から一方的に撃ち下ろすべき。ヴォルトは当然かの如く3メートルのコンテナの上にウォールランで登っていった。
私の強みは近距離戦。同年代なら敵はいないほどの剣術を持つ。目の前のコンテナ…普通に考えれば上に乗れる筈はない。しかし、確実にヴォルトくんは登ってくる。高所を取られれば一方的に撃たれる事になるのでコンテナに出来るだけ近づき射線を減らす。
……、コンテナの上で足音がする…確実に上から来る!
コンテナの上に登ってみたのは良いものの……、
いねぇ。
冷静に考えれば見渡しのいいところに敵がいれば一方的に撃ててしまうので、そんな所にいる訳はない。考えられる選択肢は2つ…、距離を取り見えない場所に隠れたか、逆に距離を詰めてコンテナに張り付いているか。
時間的なことを考えれば張り付いていると考えるのが必然。
ヴォルト は慎重に下を覗き込んでいく………、そしてコンテナの四端の内の1つに敵はいた。視認したと同時にアサルトライフルの引き金を引く。しかし、スサノに避けられた。
近距離で発砲された銃弾…常人なら避けれる訳はない。しかし、スサノは上を警戒し続けていた。だから、赤い射線が見えた瞬間に反応する事ができ、初弾を避ける事に成功した。彼女が避けれた理由…それは剣道で磨き上げた無駄のない動きにある。重心をズラさず、すり足という最低限の動きでの回避を可能にしていたのだ。剣道日本一…言い換えれば日本で1番敵から斬られない女は射撃初心者のエイムを軽々とかわしていく。
初弾を外した!?
奇襲の失敗で焦る気持ちを抑え引き金を引き続ける。アサルトライフルの強みは連射…、敵を撃ち続ける事ができるのだが当たらない。
当たらない理由は勿論エイム力不足やスサノの反射神経であるのだが、真上からの銃撃は的が小さいので更に当てづらい。それを瞬時に直感したヴォルトはコンテナから飛び降り、アサルトライフルを構える。地上に移動した事で頭だけしか見えていなかった敵が全身を捉える事ができ、的が大きくなる。
これなら当たる!弾倉に残る最後の一発を狙いを定めて発砲した。
発砲された銃弾は一直線にスサノに向かう。
これは避けきれないと察する……が、
本能が負けを拒絶する。瞬時に抜刀、そして銃弾に狙いをつける。
Susanoは銃弾を斬った。
「はぁ?まじか!?」
「日本一舐めないでよね?」
「くそがぁぁ!!」
ヴォルトはリロードしながらスサノから離れようとするが、近距離戦では相手の独壇場だ。ヴォルトは斬られ、光の粒子になった。
【Congratulations! Susano】
刀を鞘に戻し、戦場に一礼。
「ふぅ、ありがとうございました。」
ヴォルトはリスポーンし、試合を観戦していたSharangAは拍手しながら2人に近づいてきた。
「素晴らしいね、想像以上に良かったよ。違うゲームを見てるみたいだった。」
「発砲した銃弾をぶった斬るなんてそんな事できるかよ??」
「目の前で見せつけられたから出来るとしか言えないけど、普通はできないかな。まぁ、君が3メートルのコンテナを軽々と登ったのも普通じゃないよ?」
「上から撃ってればいいのに、私の土俵に来るからよ。」
「撃っても全部避けるじゃんか!」
「エイム力も含めて練習あるのみだな。勿論オンラインでもゲーム内で会えるから練習は付き合う。それでどんどん上達してくれ。スサノも立ち回りも含めて必要事項は教えていく。」
「「はーい!」」
「そして、1ヶ月後の大会に出場する。」
あ、こいつまたサラッと重大発表しやがった…。
「えーと、まだ俺たちルールすら知らないんだけど?」
「大丈夫。練習すればいい。」
「私たち剣道とか動画とかあるんだけど…。」
「大丈夫。夜でも練習できる。」
駄目だ。聞く耳持たない…。付き合いは短いがこれだけは分かる。こうなったら意思は変えない。
「まぁ、成り行きでここまで来たけど面白そうだし、やるか!大会!」
「そうね。どうせやるなら競技シーンで本気の戦いをしたいわ。」
「2人の特異性は武器になる。大会でもインパクトを与える筈だ。2人が失敗したって、俺が勝ちを譲らない。必ず優勝できる。」
「初めて1ヶ月で優勝できたらヤバいわ!でも、期待してるぜ?シャランガ。優勝を目指そう。」
「日本一の私を日本一じゃなくしたら許さないんだから!」
「その言葉言ってみたいわ…。」
「ふふっ、とりあえず練習あるのみね!これから宜しく!頑張りましょう。」
「「おう!」」
3人はカルナバルベースを立ち去った。
彼らのチームは1ヶ月後に開催される大会で業界に衝撃を与える程の大きなインパクトを残す事になるのだが、それはまだ少し先のお話。
◇ ◇ ◇ ◇
「ふぅ、お疲れ。結構時間かかったし、ルール説明はまた今度だな。次からはオンライン上で会おう。」
「梵くん、学校にもちゃんと来るんだよ?」
「えー、大会前は行きたくない…。」
「駄目です。」
「は、はい。」
「(月城さんの言うことは従っとけ…。)」
「(あぁ、なんかやばい気迫を感じた。)」
「ん?なんか言った?」
「「い、いえ!なにも!」」
「それじゃあ解散ね。また明日学校で会いましょう。」
月城さんだけ地下鉄が違う方面だったので先に分かれた。颯と梵はホームで電車を待っている。
「あ、そうだ。梵。」
「ん?」
颯は梵の肩を組む。
「家帰ったら、ログインしてくんね?ちょっと面貸せや。」
「え、やだ。なんか企んでる顔してるやん。」
「散々振り回してるんだから、少しぐらいいいだろ?」
「えぇぇーーー……。」
◇ ◇ ◇ ◇
その日の夜、MeTubeのヴォルトのチャンネルに一本の動画が投稿された。
タイトル:
【重大発表】BFカルナバルはじめます。大会も出るぜ!スペシャルゲストあり。
「やぁどぉも!パルクールMeTuberのヴォルトです!タイトルにもある通り、今日から僕はBFカルナバルを始める事にしました。今から登場するスペシャルゲストに誘われて今度開催される大会に出場します。早速、登場して貰いましょうか!BFカルナバルU-17日本代表のSharangA くんでーす!」
「あ、シャランガです。……こ、こんちわ。」
「あれ?いつもと雰囲気が違うね?緊張してる?」
「え、いや。(おい、お前後で1on1でボコってやるからな?)」
「まぁ、緊張を解しながらやって下さい。(え、やだ。絶対に負けるじゃん〜。)」
「わかった。(お前、ゆるさん。)」
「それで、今いるこの場所はゲームの中なんですが…………、」
結局梵は1時間以上、動画撮影に付き合わされた。
颯は想像以上に再生数が多かったのと、普段振り回されている梵に仕返しできて嬉しいそうだったとさ…。
動画のコメント欄では、SharangAとヴォルトが知り合いだった事に驚いていた。
大会の出場に関しては、応援コメントが多数だったが、一部BFカルナバルを舐めすぎという批判コメントもあったとか…。
次回、ついに本格的にゲーム開始!