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Buy SMG

「そもそも初心者がやる買い方じゃないんや。譲歩したらどう?」


「世界No1のBabyAiM(ベイビーエイム)買い方(Buy)なら極めれば最強なんだろ?俺が2週間後に活躍するには普通じゃなくて特別な事をしないとダメなんじゃないか?」


BabyAiM、現在のVAULTの買い方(Buy)はこうだ。

アサルトライフル  2500P

オートアーマー 1500P

隠密剤500 P

加速剤 500P

奇襲を成功させるためにシャランガからの助言で確立した買い方。問題点は詰みの状況からの打開が難しい事と高いプレイスキルが要求される事。1vs1なら優位だが、多数が相手になると本人の高い力量が要求され、習得(慣れる)には才能が必要で習得時間も不確定性が高い。その為、猛者や集団行動が多い大会で現在のヴォルトが選択するにはリスクが高すぎる。簡単に言えば、ハイリスクハイリターンな完全な実力勝負。


そして、コーチのnyakaが提案するのは、

アサルトライフル  2500P

オートアーマー 1500P

煙幕 500P×2 or フラッシュ 1000P

BabyAiMの買い方に比べれば爆発力は劣るが、詰みの状況でも対応できる。1vs1の優位がなくなる代わりに大会で発生しやすい対多数を乗り切れるという利点が大きく、習得(慣れる)までの時間は短い。簡単に言えば、ミドルリスクミドルリターンの道具の影響が高い実力勝負。


どちらも身体能力が優れたヴォルトに適した買い方であり、その才能に依存するか否かの違いだ。

半日前の決心もあり、自分の才能を信じるヴォルトと、コーチとして不確実な手段を選べないにゃかの議論は平行線のままだ。

会話がヒートアップしていき、お互いに敬語を気にする余裕すらなくなっていく。


「2週間後に活躍したいなら譲歩するんや。BabyAiMはエイム力や身体能力だけでなく、マップ理解や射線管理、道具使用の練度が完璧だから敵にデバフをかけずとも自身の強化で幾つもの窮地でキルを重ねてきた。彼が目立つことで他が動きやすくするというチームとしての戦略上の理由もある。ヴォルトはパルクールという特殊な技能で身体能力だけなら良い勝負になるかもしれない。でも、他の部分では天と地ほどの差があるのは明らかや。未来で彼を目指すとしても2週間後の完成度を高めたいなら今は諦めるべきやね。」


シャランガからの助言、そして今聞いた世界No1のプレイスタイル、この2つが結びついた事で明確な道標ができた。短期的な目標として2週間後に勝つ事、長期的な目標として世界No1のプレイスタイルを身につける事、そして最終的にはそれを独自のモノに昇華したい。ヴォルトは自分を貫き通すと決めた手前、自身の才能を諦める訳にはいかない。


「ただの活躍じゃダメだ…、皆が俺に振り向く程の大活躍をしたい。シャランガの横で胸を張るにはそれぐらいが必要なんだ。ハイリターンの為ならハイリスクだって受け入れる。」


nyakaは、うぁ…めんどくせぇとでも言いたげな顔だ。実際、自分が相当な我儘を言っているのは理解している。だが、世界一と同じというアイデンティティを捨てるのはエンターテイナーとしても許容しがたい。

ハイリスク?才能依存?なんぼのもんじゃい!師弟の対立はより彼の決心を固めていった。




「埒が明かんな、質問を変えるわ…。」

結末の見えない議論、そしてヴォルトの決心の強さを悟ったのかにゃかは切り口を変える。人の心理を学ぶ者として、今の彼の心情は厄介だ(めんどくさい)と察したのだ。

ヴォルトもこのままでは埒が明かない事を理解しているので抵抗はない。


「ヴォルトは自分がどんな性格だと思うん?」


「うーん…、人からは“我が強い”とはよく言われるかな。」


「うん、そう思う。今の状況とか正にね。そこで、もう一つ質問。“我が強い”と“芯が強い”の違いはなんでしょう?」


「ん?ほぼ同じ…意味で使われてない?」


我が強いと芯が強い。

なぜこの質問をされたかは分からないが、無駄話でないのは確かだ。


「近しい意味合いで使われるんやけど、この二つ言葉の相違点が君自身を理解する上で重要になる。ヴォルトは我の強い人間やけど、芯の強い人間ではない。この数日間の行動の芯を考えれば分かるんやない?」


言われてみればそうだ。この数日間の行動の源に芯はない、あったのは我だ。俺は試合で失敗した不安を〝自分が自分である為に〟と我を持って納めようとした。決して、シャランガの様にBFカルナバルで世界に挑むという強い芯があった訳ではない。

俺ら2人は対比なんだ。

俺は自分を高める為に、世界を目指している。

あいつは世界を目指す為に、自分を高める。


「自分で腑に落ちたって顔してるね。自己中心的という面で一見同じ性格でも、我が強いヴォルトと芯の強いシャランガでは根本が違う。君は否定したいだろうけど、我が強い人間の根本には〝不安〟があるんや。本来ままじゃ不安やからMeTubeには創った自分を晒す、試合で失敗するのが不安やから自分を主張する、今までの自分を否定されるのが不安やから世界一のプレイスタイルに固執する…。どれもこれも〝不安〟にたいして我を押し通す事で払拭しているんやない?」


不安を感じればそれに対抗する様に自我を強く保つ。自分の行動にはそんな節がある。それこそ今のプレイスタイルに固執する原因は、シャランガの期待・日中にした自分を貫く決意が反故になるのではと不安を感じるからだ。それを自我の強調で解決しようとしたのは文章を遡れば明らかだ。


「そう…だな。強く否定はできない。」


プライドが邪魔をして素直に肯定する事はできない。今の感情すら師匠に見透かされているのではないかと冷や汗を流れる。


「何もヴォルトの性格が悪だとは言ってない。不安を感じながらも果敢に立ち向かう事は簡単じゃない。普通の人間は不安を感じたら避けるもんや。賞賛すべき事をしとる。でも、BFカルナバルはコンマ1秒が生死を分けるゲーム…、ヴォルトがシャランガの横で世界を目指すなら〝不安〟を感じる時間すら削りたい。それを成すのが私、nyaka!日本最高峰の心理学部に所属するにゃかがヴォルトの不安を取り除く!ついでにランク戦で立ち回りの良し悪しも見てあげる。


だから、妥協して。貴方を活躍させる責務がある。弟子を無惨に散らせる訳にはいかないんや。」


「ん゛ぅあ゛ぅうぅ〜。」

只今、葛藤中ですとでも言うべき音が漏れる。師匠が呆れたため息を吐いたのは聞こえないふりをしておこう。


「君が自分を曲げたくないのは分かった。なら折衷案、互いに歩み寄るしかないね。武器をサブマシンガンに変えてポイントを削減する。そうすれば煙幕やフラッシュも買えるって算段や!」


師匠が提案した折衷案はこうだ。

サブマシンガン  1500P

オートアーマー 1500P

煙幕 500P×2 or フラッシュ1000P

隠密剤500 P

加速剤 500P


気になるのは〝サブマシンガン〟だろう。


「あの〜、師匠?俺はアサルトライフルかショットガンしか使った事ないんだけど具体的な違いは?」


「アサルトライフルと比べて、中遠距離に向かない。それと、胴体のダメージも少なくなるけど大差はないかな~…、勿論頭と左胸は一発でキルできる。利点は反動が少ないから初心者でも扱いやすいことやね。」


「つまり、中遠距離の勝負が難しくなるぐらい?」


「そそ。プレイ動画を見る限り距離が近い事が多いし、君のチームには遠距離最強の男がいるから問題ないやろ。遠距離のリコイルコントロール(反動調整)もお粗末だしちょうどいいよ。あ、諦めろって訳じゃないよ。BabyAimの近距離戦から君のモノにしていこうって訳。君の意思を尊重して強要はしないけど、この条件が飲めないなら2週間後の活躍は約束できない。どうする?」


師匠がコーチとしての本音を言っているのは間違いない。それだけでなく、俺の本質まで理解したうえで最適な道標を立ててくれるのは今回の言い合いで理解できた。BabyAim(梵の期待)にも近づける最適なプランだと思う。条件を飲まない理由がない。


「武器をサブマシンガンに変えて梵の期待と勝利を勝ち取る。そして俺が活躍する。最高です。それで行きましょう。」


「は~い」


師匠が不貞腐れながらも一仕事終えたとベンチに横たわる。


「それで…。どんな修行をするんですか、師匠!ランク戦?練習場?俺カッコいい必殺技とか教えて欲しいな。」


「アホか、そんなもんあるわけないやろ。その代わりにかめはめ波撃つんじゃないかって錯覚するほどの非常に厳しく大変な修行をしたるから覚悟しぃや。」


「それ古すぎません?」


「うっさいな!」


「で、何を?」


「最初からサブマシンガンの買い方(Buy)を勧めなかったのは才能次第でどのくらいの時間が必要かが分からんし、時間も少ないからや。でも、間に合わせる必要があるやろ?だから…、今から君を24時間戦える精神状態にします。」


「は?」


「つまり、()()()()()。弟子よ、頑張りたまえ。」


Nyakaは優しく一定の口調で講話を始めた。





.........。


時間がないなら無理矢理フルタイム。

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