左上を指す短針
お久しぶりです。VCT観戦が終わったので投稿再開致します。最高だった〜!!
もし、この小説を読んで少しでもe-Sportsに興味を持った方が居れば、5月末の世界大会を是非見て下さいね!
最近は色んな配信者さんも筆者が大好きな某Vから始まるゲームをプレイしているのでそこから興味を持ってくれれば嬉しい限りです。
と、好きなゲームの宣伝はここまでにして本編の開始です。
帰りのリニアモーターカーで梵はすぐにスマホを触りだしたので、颯はボーっと密度の濃い今日を思い返していた。
梵と駅前のカフェで話し合うだけの予定が、京都に行きなんと古都大学教授が間接的にコーチをしてくれる事になった。教授の研究の為に毎週レポートを書く事になったのは不本意だがトータルで見れば得、、、なのか?
冷静になって考えてみれば、コーチにもピンとこない。彼女は心理学の教授、撃ち方などの技術的な指導ではなく所謂メンタルトレーナー的な立ち位置になるのだろう。トッププロスポーツ選手にとってメンタルトレーニングが重要視されているのは知っているが、それが未だ基礎動作に不安がある自分に必要とは思えなかった。正直な気持ちを吐露すれば今でも技術的コーチを雇いたいぐらいだ。
だが、梵曰くVAULTが辿り着くべきプレイスタイルは常識的な基礎との相性が悪い。簡単な例で言えばストッピングショットとランニングショット。基本的には止まって撃たなければ銃はブレてしまい、敵に狙いを定める事は難しい。BFカルナバルを始めて真っ先に気を付ける事が「止まって撃つ」なのだ。何も知らずに自身の天性の身体能力のみでランクタワーを駆け上がった颯は「走りながら撃つ」が身についている。技術的なコーチを雇えば真っ先にストッピングショットに修正されるが、颯の身体能力を活かすには悪手とされるランニングショットの方が良いと梵は言っていた。
自分の目指すべき先は初手から王道を外れている。そのことを再実感した事で自分の気持ちの整理はついた。経験で培うエイム力では先人に追いつくのは難しい。ならば徹底的に自分の身体能力を活かした独自のプレイスタイルで対抗するしかない。
脅威の身体能力×ランニングショット
実は梵が憧れている世界No1チームのガンナーはこのプレイスタイルだ。颯のランニングショットに、八都寧の剣術。自分のチームメイトに理想の手札が揃いつつあることに梵はニヤリと笑みを浮かべた。
◇ ◇ ◇ ◇
自分たちの最寄り駅に戻ってきた2人は簡単に夜ご飯を食べ、帰路が分かれるところで少し立ち話を始めた。
「今日はお疲れ。俺これからも頑張るわ!とりあえずランニングショットを極めようと思う。」
「今日はわざわざ京都行かせて悪かったな。詳しく聞きたかったらコーチに聞けばいいよ。彼女なら取捨選択して颯の成長にベストな情報だけ伝えてくれると思う。」
「コーチって院瀬見教授の部下って人でしょ?一応プレイヤーネームは教えて貰ったけど何も知らないんだよね。」
発言しながら、俺って何にも知らねぇなと昨今の自分の状況を心の中で嘆く。
「チームメイトがお世話になるってメッセージ送っといたから、家に帰ったらゲーム内でフレンド申請すればコンタクトとれるよ。なんというか、普通ではないけどいい人…………だと思う。」
…………が非常に気になるのけど、早ければ今夜その謎は解けるからいいか。
「大会までに最強になっとくから待っとけよ!」
渾身の笑顔で梵に投げかけた。梵はいつもの表情を崩さないが、口角が少しだけ上がったように見える。
「あぁ、八都寧を含めた俺たち4人は明日からチーム練を始める。颯は大会前日に合流してくれ。仲間すら把握できない行動をした方が次の相手には効果的だ。」
「俺はそれまでの2週間まだ見ぬコーチと特訓って訳だな!また別行動になるけど頑張っていこうぜ。」
「勿論。じゃあな。」
後ろ姿でひらひらと手を振りながら梵は家路についた。そんな姿を見送りながら既に始まっている情報戦を感じ背筋を伸ばす。だが、情報戦やら作戦やらはアイツに任せる。俺の今日からの任務はただ強くなる事だ。予選で足を引っ張った分、今度は活躍してやるぜ。
往路よりも軽い足取りで復路は歩いていく。
◇ ◇ ◇ ◇
「さて」
家に到着するや否や、教授から貰った封筒を開ける。この封筒の中に自分がお世話になるコーチの名前が書かれているらしい。その名前を憶えてBFカルナバルにログインしフレンド申請を送ればコンタクトが取れるはずだ。
封筒の中に入っていた手紙らしきものを開封する。
――――――――――――――――――――――――
2050年2月14日
仙ヶ谷高校 南条 颯 様
古都大学倫理学部次世代心理学科
教授 院瀬見 零
Title: VR心理研究サンプル提出の依頼
時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、この度の話し合いによって南条様にはVR心理研究サンプルを提出して頂く運びとなりました。
つきましては、毎週月曜日の23時までに以下をレポートに纏めてメールアドレス[Zero.xxxxxx@koto.ac.jppp]に送信頂きますと幸いです。
記
1.今週の自分とBFカルナバルを始める前と比べて変わった点はありますか?
2.人に銃を向ける事に対するあなたの心情の変化を教えてください。
~~~~~~~~~~
18.以上を踏まえて他に何かありますか?
以上
お忙しいところ大変恐縮ではございますが、よろしくお願い申し上げます。
と!
形式的な文章はここまでにしてレポートは幸いですとかじゃなく絶対に送ってね♡
〆切りを守れなかったらどうなっちゃうかは梵ちゃんか奈加に聞いてちょうだい。
あ、奈加はあなたのコーチの名前ね。水瀬奈加。彼女を通じて間接的に私もコーチングできるところはしていくわ。
今日の21時にランクタワーの50階で待つように言ってあるから、プレイヤーネームKNP_nyakaにフレンド申請送って会ってみてね。
では、これからよろしくーー!
―――――――――――――――――――――
絡みにくいよりはマシなのだが、大学教授にしてはカジュアルすぎる。そして本文はあまりにも強制力が高い気がするのだが…、リコール制度って何日後まで有効だっけ?まぁリコールを行使できる訳がないし、今の自分の立場上そんな事できない。
一通り勉強嫌いの脳が不満を言い切ったところで、ふと短針が左上を指す時計を見て違和感を覚えた。リニアモーターカーを乗ったといえど、京都から帰って夜ご飯を食べゆっくりと帰れば22時を過ぎるのは普通だ。それでも違和感を拭えない…。自分の直感が手元にある封筒に原因があると警戒音を鳴らし、もう一度文章を読んでみる。
〝今日の21時に〟
手紙にはあからさまにおかしい部分がある。今は22時過ぎ、教授から指定されたコーチである水瀬奈加さんとの待ち合わせ時間は21時…。うん、遅刻だわ。今さっき手紙を読んだからどうしようもないけど、遅刻だわ。
数多の遅刻を繰り返した颯も今回ばかりは仕方がないと言い訳をしながらゲームにログインしていく。
◇ ◇ ◇ ◇
Now Loading ………
…Are You Ready??
「Yes!!」
『Welocome to Bombardeo Flash Carnaval』
さて、遅刻したのは謝るとして、とりあえずフレンド申請を送るべきだな。
VAULT はフレンド申請のメニューを開き、教授からの手紙に書いてあったプレイヤーネーム〝KNP_nyaka〟を検索する。
その結果が目の前に表示された。
KNP_nyaka
Rank:100(JPサーバー126位)
Memo: KotoNextPsychology所属。基本的にオフィサー!フレンド申請はあんまり承認しないかも〜。
申請ボタンを押しかけるが、目の前に表示された情報を見て躊躇う。
Rank100…?日本で126位??
身近な存在でいうとSharangAがランク100、この前苦戦した青山田高校の猛者2人もランク100だった。恐らくこの前喧嘩した革命世代J-Kidも同様だろう。つまり、今から自分のコーチになる彼女は日本のトップ層で争う猛者の1人だったのだ。
前情報から勝手にメンタルコーチだと思っていたが、技術的にも優れている人なのかもしれない。
一応、自分の認識確認のためにフレンド欄からシャランガを表示した。
SharangA
Rank:100(JPサーバー46位)
Memo: スナイパー。直接許可とった奴以外誰も申請送るな。
なんともメモ欄が彼らしい。おそらく有名人すぎて毎日大量のフレンド申請が届くのだろう。それに、Rank100というのはシャランガと同程度の実力を示すもので間違いない。
自分のコーチが実力者という嬉しさと共に遅刻という粗相を思い出し、すぐさま申請と謝罪のメッセージを送った。すると、ヴォルトが一息つく間もなく返信が返ってきた。
-Message ———————
VAULT:教授から聞いていると思いますが、今日からコーチングお願いします。(22:46)
VAULT:そして、遅刻してすいません。今すぐランクタワーの50階に向かいます。(22:47)
KNP_nyaka:君さぁ、にゃかの時間を割いておいて初日から遅刻とはいい度胸じゃん?(22:47)
KNP_nyaka: 23時までに来なかったら破門やから。(22:48)
ーーーーーーーーーーーー
めちゃくちゃ怒ってる…。初対面で、しかも教えて貰う立場で遅刻しているのだから至極当然なのだが、俺も仕方なかったんだよ。
何はともあれ俺は急いで待ち合わせ場所の50階に行くしかない。Rank:70のヴォルトはリスポーン地点の70階からテレポートゲートで50階へと向かう。ちなみに、大会前に64階まで進んでいたのはご存知であろうが、大会の合間を縫ってランクを少し上げていた。
ブォン…!
70階から50階に転送されたヴォルトは周りを見渡しながらKNP_nyakaのプレイヤーネームを探す。通常のプレイヤーは灰色で名前が頭の上に浮かび上がっているのだが、先程のやり取りでフレンドとなった2人はお互いの名前が緑色で表示されてる。探すのは手こずらないはず……。
だが、見当たらない。50階は多くのプレイヤーが待ち合わせに使う場所なので他のフロアよりも人が多いが、雑多な灰色の中に緑色を探す事は簡単だろう。しかし、自分の目線には緑色のプレイヤーネームをした人はいない。時間を確認すると23時になろうとしているので、ログアウトしてしまったのだろうか…。
「ねぇ、そこの白髪マスクマン。」
「え?」
声がした方向、後ろを振り返り視線を下に落とすと身長が130㎝ほどの幼い少女が居た。刹那、ヴォルトは少女の殺し合いには似つかわしくない姿が仮想世界のスキンなのかと考えたが、BFカルナバルは現実世界の本人の体を資本に戦うゲームである事を思い出し、否定した。考えられる可能性は一つ、目の前の少女が誤ってゲーム内に迷い込んでいるのだ。ならばいち早く現実世界に戻さなければ!
「お嬢さん、迷子のなってしまったのかな?ログアウトの仕方は分かる??」
ヴォルトは体を屈ませてMeTubeで使う商業用の笑顔で目の前の少女に優しく対応する。
対する少女も商業用の笑顔をしていたが、次第に眉間に皺が寄る。我慢の限界を迎えた様にその場で跳躍すると目線を合わせる為に屈んでいるヴォルトの額にドロップキックをかまして吹き飛ばした。
「え!え!?」
突然の吹き飛ばされた事に現状理解が追いつかず、脳内が大混乱を起こした。だが、少女が緑色プレイヤーネームを冠している事を確認して全てを察した。
少女が、いや彼女が自分のコーチなのだと。
「急用、遅刻、子供扱い。貴方は歴代にゃかの弟子史上最低ね!」
プレイヤーネームnyaka。日本で126位の実力者、そしてヴォルトの師匠となるコーチとの初対面は最悪を極めた。
ここ数話で更新間隔が空いたのと、登場人物が増えたので簡単な相関図を最後に掲載しました。是非、ご覧下さい。その他質問があればご気軽に。
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