ユニークスキル
‐青山田高校・モニタールーム-
「奴が弾を避ける原理が分かった。」
直接対面した4SUは驚きを隠せない。
「どういう事です?普通に化け物級の反射神経で避けているんじゃないんですか?」
「どんな超人でもフィクションじゃない限り発砲後に反応して避けるのは無理だ。特に先程の一対一は近距離だったろう?彼女は龍造寺の爺さんと同じ挙動が目立つ、つまり同じ方法で弾を避けている可能性が高い。」
龍造寺右京は世界一であるがゆえにプレイスタイルや戦闘手段が細部に至るまで全世界に知られている。それでも圧倒的な強さを誇るからこそ世界一に君臨し続けているのだ。30年前の世界で例えればバルセロナのメッシの状況に似ている。彼も全世界に知られ研究し尽されているのに止めることは出来なかった…世界一とはいつの時代もこの様な存在なのだ。
そんな龍造寺の独自技術の一つ“弾避け”。
本人の身体能力の異常性からスキルなのでは?と疑われる事もしばしば…。その原理は異常な視力と反射神経だ。射線スコープを装着し射線を把握、敵の手が引き金を引く直前の小さな筋肉の微動を観察した瞬間に射線から体をズラす…この一連の動きで弾を避ける事を可能にしていた。
龍造寺は剣道の指導として“動作前の筋肉の微動を観察する”事を徹底的に教えている。スサノは龍造寺の最後の弟子…必然的に驚異の観察眼が身についていた。彼女本人に自覚はないが知る人が見れば同じ挙動だと判断できる。
「龍造寺の爺さんと同じって事は、撃つ前の腕や筋肉の動きで判断しているんでしたっけ?」
「あぁ。彼のいるスペインや世界大会では対処法も編み出されているのだが一朝一夕では無理だ。私たちは人数で彼女に対処するのがいいと思う。特にスナイパーは相性が悪い、4SUは引き続きシャランガを頼む。」
1人では避けられるなら複数人で仕留める…即席にしては理に即した作戦だ。
青山田高校はBossのオートアーマーと解除時に必要な煙幕を追加購入し、後半へと挑む。
‐仙ヶ谷高校・モニタールーム-
「やったー!ギリギリだけど勝ててよかったー!」
「私は何もしてないけど、生き残っただけでも成果はあるよね?」
先程まで敵チームを恐怖に陥れたとは思えぬ良い笑顔のスサノと微妙な顔のニトがモニタールームに転送されてきた。
「後半が相当楽になるから2人生存できたのは大きい。結果的にスサノが蘇生できたのが大きかったな。そう考えればテレス先輩がスサノに1キル取らせてくれたのが功を奏したな。」
シャランガは淡々と勝因を分析しキチンと褒めたたえる。この辺りに世界で戦ってきた人間を感じる。テレス先輩は憧れのシャランガに褒められて感無量といった感じだ。
「いえ、僕はカバーしただけですし…その後も見事に挟まれてキルされちゃいましたし…。」
「あれは相手が上手だった。こちらに優秀なガンナーがいない以上あの作戦をされると対処法がなかった。」
モニターには前半の結果が写されている。
仙ヶ谷高校
SharangA 3キル
Susano 2キル(スキル使用済み)(生存)
NitoO 0キル(生存)
TeLeS 0キル
VAULT 0キル
「察してはいたけど2人が無双してるわね。」
「敵もキルしたのは主力のBossと4SUだけなので似たようなものですが、本来なら……。」
テレスが言おうとして辞めた言葉は理解できた。ヴォルトは悔しさで口をゆがませている。シャランガに主力の一人だと期待されながらも、何もできずに死んだ。それだけでなく自身の力を過信して身勝手な行動をしたことでチームを窮地に陥れたのだ。ヴォルトは何も言えなくなっていた。
「後半は俺とスサノを軸に作戦を進める。ヴォルトはニト先輩と共にサポートを頼む。」
直接言葉にはしなかったが、期待外れだったと言われたようなものだ。いつものヴォルトなら反抗していただろう。だが、先程の戦果を考えれば当然なのかもしれない…と言葉が出ずにいる。
そんなヴォルトに耐えきれず反論したのはニトだった。
「ちょっと待って。一回失敗したぐらいでサポートに回れって酷すぎない?ヴォルトくんなら次はちゃんとキルするわよ!」
シャランガは厳しい顔のままヴォルトを見つめている。作戦を変えるつもりはないみたいだ。
「この試合は調子の悪い仲間を勇気付ける為のものじゃない。本番なんだ。俺はヴォルトと仲良しごっこがしたい訳じゃない。」
「で、でも!」
自分の失敗を他人が庇う。正直見ていられなかった。
「もういいよ。ニト先輩…、俺が失敗したのは本当だし。奇襲がバレてると気づいたのにシャランガに言われたことを忘れて勝負を仕掛けたんだ。外されて当然だよ。」
「分かった…、、、」
仙ヶ谷高校はブラックマーケットで〝蘇生キット〟を追加購入した。スサノとシャランガが思い切りよく行動できる。
運命の後半ラウンドが始まる。
◇ ◇ ◇ ◇
注目を集める今回の対戦。放送を担当する実況の嬉野と解説の多気は素晴らしい前半に興奮していた。
「手に汗握る前半戦でしたね!多気さん?」
「最後の最後まで勝敗が分かりませんでしたよね。これほどいい試合が予選から見れるとは思いませんでした。」
「やはり、シャランガの凄さが現れた前半戦と言った感じですかね?」
「そうですね。ですが、私が1番驚いたのはスサノという剣士です。シャランガが凄いのは当たり前ですから。」
「これ程のパフォーマンスで当たり前…と思われているのは流石シャランガです。確かにスサノという剣士も目を見張る活躍をしていましたね。」
「最近では剣士を大会で見る事は殆どなかったので、注目をしていましたが…予想以上の活躍ですね。特に銃弾を避ける姿は龍造寺さんを彷彿とさせます。」
「弾避けと言えば龍造寺さんですもんね。同じ剣士ですし…。彼女もユニークスキルが使えるという事ですか?」
ユニークスキル。
この言葉はゲーム内の用語ではない。特異なプレイヤーが異常な身体能力から生み出した常人には再現不可能な動きを指す。(つまり、凄すぎて勝手に世間が名付けただけ。)今回のスサノの動きも異常な視力・反射神経から生み出されている龍造寺右京と同じ動きであるのでユニークスキルである。
「検証は必要でしょうが、その可能性があります。想像以上にシャランガのチームメイトのポテンシャルが高い。個々がキチンと役割を果たしています。
ですが、このヴォルトという男はダメですね。状況判断もできずに突っ込んで死ぬ…、大会でしてはいけないムーヴですよ。」
「まぁまぁ、個人への批判はほどほどに…」
「そうですね…失礼しました。話を戻しますとチームのポテンシャルが高いのは確か。仙ヶ谷高校が今回の試合に勝てば、今大会のダークホースになるかもしれませんね。」
「仙ヶ谷高校は今回の大会に波乱を巻き起こせるのか!?運命の後半、ボンバルデオラウンドは…この後すぐ!!」
ユニークスキルって?
身体能力が現実世界とリンクしているBFカルナバルでは非現実な挙動は存在しないはず。だけど、身体能力が異常などの特異な天性を持っている人は常人にはできない挙動ができる。
→これをユニークスキルと名付けよう!と、とある実況者が言った為に生まれた。
→配信会社が注目を集めるために強いプレイヤーを神格化させて同接を増やそうとした作戦だったという噂アリ。




