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5人の革命児

J-Kidに喧嘩を売り、完敗したシャランガ。

彼は何を思う。



射撃練習場に来るやすぐさま「俺、1人で射撃してくる」と高台を登っていた。


「拗ねてるな。」

「うん、拗ねてるね。」

「ボコボコだったもん。」

「まぁまぁ、シャランガさんも思う所があって喧嘩を売ったんだと思いますよ?」


気持ち悪いほど正確なリズム・正確なエイムで的を撃ち抜いているが、イライラしている雰囲気が溢れ出ていた。


「てかさ、テレス先輩ってそんなに畏まってる人だっけ? 俺達とかシャランガにも敬語だし。」


「じ、実は…。シャランガさんのファンなんですよ。」


テレスは恥ずかしそうにカミングアウトした。


「へぇ〜、そんなにアイツ有名人なのか。」


「僕はリアルタイムで見れてませんが、伝説のU-16日本代表なんですよ!この前のU-17も本当に興奮した!!そんな人と同じチームなんて今でも信じられません!」


「て、テレス先輩…、圧が、、圧が強い…。」


「あんな喧嘩をした後で言う事では無いですが、ジェーキッドさんを一目見れたのにも感激してたんです。」


え、あんな暴れん坊を見れて嬉しかったの…??彼にも何か凄い勲章があるんだろうか。


「あの人、シャランガ君と昔チームが一緒だったみたいな事言ってたよね。」


「ご存知ないなら説明してあげましょう!僕が大好きな〝革命世代〟について!!」




革命世代。

eスポーツ弱小国・日本は国際大会で一度も優勝したことがなかった。そんな不名誉な記録を打破したのが一昨年のU-16日本代表である。世界中の金の卵を集めた大会で見事優勝を果たし、日本に初の栄冠を(もたら)した。彼らに刺激されたプロ達も若い者に負けじと去年の世界大会で過去一番の結果を残した。

日本全体のレベルを高める引き金となった彼らの優勝は日本のeスポーツ界にとって〝革命〟であったと評され、U-16優勝メンバーの5人は〝革命世代〟と呼ばれるに至る。


〝悪童〟J-Kid(ジェーキッド)

〝精密機械〟SharangA(シャランガ)

〝幻影〟KaFuu(カフー)

〝軍曹〟Sir(サー)

〝狂科学〟NitRo(ニトロ)


二つ名を持つほどの強者である彼らも17歳の高校生。

全員がNF杯に自身の学校からエントリーした事で今大会の注目度をいつも以上に高まっていた。


最強の5人の中の最強は誰なのか?

一部のファンの中ではNF杯の最注目ポイントだと囁かれている。





「ちょ、ちょっと待って……」


「どうしたんだ?スサノ?」


「軽く聞き流したんだけど、シャランガくんって世界大会で優勝してるの?控えとかじゃなくて?」


「勿論です!それどころかシャランガさんは主力の1人ですよ。」


スサノは顔が真っ赤になり、地面に転がりながら発狂しだした。


「お、おい。どうしたんだよ。」


「だ、だって、恥ずかしすぎるじゃん…。私。」


「え?なんで?」


「私、これまで世界一の男の前で日本一自慢してたって事だよね?」


ヴォルトはこれまでのスサノの言動を思い出した。「私日本一なんですけどー?」「日本一の私を…」など思い出せるだけでも多数ある。

こ、これは…恥ずかしい…。


「もう私、シャランガくんに合わせる顔ないわ。自分が滑稽すぎる…。」


「貴方は少し調子乗りな所あるからね。因果応報よ。」


「ニトちゃん〜!言わないで〜〜。」


スサノはニトに抱きつき、顔を埋めた。



◇ ◇ ◇ ◇



シャランガが個人練習を始めてしまった為に、集団練習の筈が個人練習になってしまった。


相変わらず一定のテンポ・同じ場所に撃ち続けるシャランガ、使い始めて日が浅いアサルトライフルを確かめるヴォルト、万全のサポートをするべく仲間をイメージしながら動きの練習をするテレス、未だ恥ずかしさが消えず悶えているスサノ、いい加減解放しろ!とスサノを引き離した事で鬼ごっこが始まったニト。


それぞれの時間を過ごしていった。


1時間後、現実世界と同じ動きをするウォーダウンシティの太陽も姿を地平線に隠そうとしていた。

綺麗な夕暮れに目を奪われていた時、シャランガの声がトランシーバーから全員に伝えられる。

『集合してくれ』


全員が揃った段階でシャランガが口を開く。


「皆、ごめん。ジェーキッドとの私情で勝手にアツくなって、勝手に負けて、勝手に不貞腐れてた。」


「気にすんなよ、男なら譲れない事ぐらいある。ここでお前を許さないと俺も好き勝手できないしな!」


「そうよ。そんな事でクヨクヨしてる方が私は嫌。自分が世界一なの黙ってたのは許さないけどね…?」


「まぁまぁ、スサノさん。とりあえず私に抱きつくの辞めてくれない?」


「嫌!ニトちゃんしか甘える人いないんだもん。」


「私は甘えていいって言ってないよ?(ヴォルトくんなら喜んで甘えさせてあげるのになぁ…)」


余程の辱めだと感じているのか、未だにスサノは不貞腐れている。日常の節々での言動全てが恥になったのだから分からない事はない…のか?


「皆…ありがとう。俺の過去について話すべきだと思う……、だけど…、今は話せない。」


話すべき事。

シャランガが気にしているのはジェーキッドの〝子分〟発言だろう。彼がどんな人生を送ってきたかは知らないが、仲間を捨てるような男なのだとしたらチームメイトとして話を聞く必要がある。

だが、シャランガは今話せないと言った。待って欲しいなら待つべきだ。


「待ってるよ。シャランガが話してくれるのを。」


「悪い……。必ず話すから…。」


シャランガは深呼吸をし、虚ろだった目を決意に満ちた目に変わった。


「今、これだけは言わせてくれ。俺は皆を仲間だと思っている、このチームなら負けないと思ってる。皆で優勝しよう!!」


「「「「おう!!!」」」」



ジェーキッドとの一件によって、寡黙で謎が多い男だったシャランガの内面を少し覗く事ができた。チームメイトが少しとはいえ彼の秘密に関われた事は結果的にチームの結束に繋がる。


チームとして未だ不完成な5人は少しづつその形を組み上げていく。


次回vs青山田


※革命世代は高校2年生の世代だが、一年飛び級しているシャランガも含まれる。


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