歩くだけで騒ぎになる2人
目標だった50階に到達した2人は?
ランクタワー50階。
全プレイヤーにとって最初の目標であり、1つの節目でもある。それ故にこの階で解禁されるシステムも多い。髪色変更や、武器のスキンの変更もそのうちの一つだ(武器は各階で購入できるデザインが違う)。
1月23日。
ヴォルトとスサノはゲームを始めて2週間という驚異的なスピードで50階に到達した。平均は4ヶ月というデータが彼らの非凡さを際立たせる。
ランクタワーの内装は1階から49階までは全て同じデザインなのだが、50階から上の階は毎階異なったデザインになっていく。2人は初めて50階に訪れたので初見の筈だが、何故か見覚えのある街並みであった。
「ヴォルトくん。この階初めてとは思えないんだけど。」
「分かる。間違いなく初めて来たんだけど見覚えがあるよな。」
う〜ん。
2人は頭の中の記憶を掘り返すが探しモノは中々発掘されない。
見かけないスキンの銃と刀と爆弾、巨大なモニターに流れる銃撃戦、熱狂する人々、オシャレすぎるバー、ネオンが輝くお店、ランキング上位を印すボード、そして西洋風の大広場…何処かで見た筈だ。
…………………、、、
もういっか…と諦めようとした時、制服姿のロボットが目の前を通過した。この制服も見覚えのある……あ!!
ヴォルトは分かりやすく閃いた顔をしていた。
「思い出した。駅前のビルの40階にあったカルナバルベースだ!あそこのデザインと似てる…ていうかほぼ一緒じゃないか?」
「カルナバルベースの内装はゲーム内の風景を再現してるって言ってたね〜。ここだったのかぁ〜!!」
次に訪れた時は前回以上の感動ができる筈だ。ゲームの世界を現実に再現…なかなか粋な事をしてくれる。
ヴォルトは50階に到達したらやりたい事があった。
「スサノ!髪色変えてきていい?」
「この階から出来るようになるんだよね。行ってきていいよ。」
「スサノは髪色変えなくてもいいの?」
50階に近づくにつれて感じたのだが、黒髪のままだと舐められやすいというデメリットを抱える。ヴォルト達の場合は仮面効果で不遇に扱われる事は無かったが、黒髪=初心者という思い込みで不当に扱われていた黒髪の仲間を何人か見てきた。
「うん。私、黒髪の私が好きなの。ゲーム内でも変えたくないかな。通り道に刀のスキンのお店があったから見てきていい??」
「俺も髪変更以外に見たい店もあるし…お互いお買い物タイムにするか!」
「賛成〜!1時間後に再度集合ね!」
「OK」
ゲーム内で楽しい楽しいお買い物タイムが始まった。
◇ ◇ ◇ ◇
1時間後。
ヴォルトは時間ギリギリで集合場所に戻ってきた。いや、正確には3分遅れている。髪色変更所が予想通り人気施設で待ち時間を浪費したのと、アサルトライフルのスキンを楽しく選んでいると、あれよあれよという間に時間は過ぎていった。
「ヴォルトく〜ん?今回も遅刻ですか?いい加減もう見飽きてるからね。」
「ごめんって!」
「いつもの事すぎて私も麻痺してきた。ヴォルト君が遅刻しても何も感じなくないもん。」
「本当にすいません……。」
怒りを通り越して呆れられる。怒られる以上にメンタルにくる。
「そんな事より、ヴォルトくん!結構変わったね。」
ヴォルトは髪を白髪に変更し、雰囲気がガラリと変わっていた。アサルトライフルのスキンも赤を基調としたカッコいいデザインを持っている。
「いいでしょ!いつか白に染めてみたいって思ってたんだよね。ゲームで先行してお試しできるのが凄くいいね。気に入ったら現実でも白にしようかな。」
憧れだった白髪を見せびらかすべくクルクルと回る。
「校則ゆるゆるのうちでも流石に白髪は怒られそうじゃない?」
「あ、そっか。じゃあ大学生になってからだな。」
「その時までに遅刻癖を治さないとね。悪目立ちふるよ?」
「は、はい。すいません。」
「その気持ちのこもってない謝罪も改めて下さ〜い。」
「は、はい。すいません。」
「善処してね。それと、アサルトライフルのスキンを買ったんだ。ショットガンじゃなくて?」
ヴォルトはこの階に来るまで基本的にはショットガンを使用してきた。アサルトライフルを使うこともあったが数えるほどしかない。それ故にアサルトライフルのスキンを買った事を疑問に思ったようだ。
「シャランガの言い方的に今後はアサルトライフルの使用が多くなりそうだろ?これからの階は扱い方に慣れるためにもアサルトライフル使うつもりだからこっちのスキンにした。このデザインも格好いいしな。」
「確かに、シックでカッコいいね。私の刀は良いのが無かったからまた今度にする事にした。」
スサノは目ぼしいものはなくウィンドウショッピングをしていた様だ。何も外見の変化がない。
「無理矢理買っても良い事ないしな。」
「それでね。刀屋の店員に脳内診断をしてもらってオススメのデザインを検索してもらったの。そうしたらね、64階のお店で売ってる〝黒蝶刀〟を勧められたんだけど見事にお気に入りになっちゃった。買うならこれかな。」
脳内診断。
人間の脳内を調べる事で判明する嗜好をランクタワー中のお店の商品と照らし合わせてオススメを提案してくれる。
スサノは64階で販売されているデザイン〝黒蝶刀〟を勧められてまんまと気に入ったらしい。
写真を見せてくれたが、黒色の刀身に優しい鎬の文様…紫色の柄…黒色ベースに金色の蝶と花の紋様を施した鞘。一言で表せば落ち着いている大人が好みそうな刀だ。
「でね?シャランガくんと約束した日にちまで後4日あるじゃない?だからさ、この勢いのまま64階まで行かない?この刀で大会に出たいなぁと思ってさ」
やっと終わったと思っていたランク戦の延長戦を提案され、正直気乗りはしない。だが50階までスサノに助けてもらっていたのは事実だ。時間もある事だし承諾をした。
「それじゃあ早速戦いに行きましょう!!」
え!?今日からぁ〜〜!?
結局、2週間みっちりとランク戦をやり込んだ2人は1月27日。64階に到達し、スサノは黒蝶刀を手に入れた。
スサノはウォーダウンシティを歩いていれば黒髪に初期衣装という初心者に間違えられかねない風貌ながらも、しっかりと話題を残した白仮面と美しい黒刀は自然と注目を集めた。
その横を歩くヴォルトも初期衣装ながらも黒色の仮面に白髪というコントラスト、50階よりも上階のランク戦で暴れた赤色のライフル。彼はスサノの注目をかき消す程の存在感を放っていた。
歩くだけで注目を集め、騒ぎになる。
BFカルナバル日本サーバーで現在最も注目される二人組であった。
◇ ◇ ◇ ◇
2050年1月28日。
約束の日がやってきた。現実世界の学校で久しぶりの部室に颯と八都寧の2人は足を踏み入れた。
水篠 梵は2人を歓迎するのではなく睨みつけている。
「おい、お前ら。学校ではぐらかし続けやがって。俺がランクマッチで目立つなって言ったの覚えてるよな?」
「「はい、すいませんでした。」」
「蓋を開けてみれば、なんだこの結果は…。初日からバズり、そして終盤には歩いてるだけで目撃情報が拡散される。どんな生活したらそんなに注目を集めれるんだ?お前ら広告業が天職なんじゃないか??」
「いやー、褒められましても〜。」
「褒めねぇよ!!目立つのを避ける筈がここまで大バズりするとは…流石に予想してなかったよ。」
「いや〜、現実世界でも私や颯くんは目立っちゃうからねぇ。必然だったんだよ。諦めな?」
「なんでお前らが宥める立場なんだ!」
2人に振り回される梵の苦悩はこれからも続いていく…
刀のスキン変更について。
基本的にスキン変更で武器の性能に変化は無いが唯一刀だけスキン毎に性能が異なる。
分かりやすい例で言えば、両刃と片刃。
それぞれに一長一短がある。初期スキンならばウォーダウンシティで片刃から両刃に変えれるので高ランクの特権ではない。
勿論スサノは片刃の日本刀です。
ランクタワー編が終わりました。
描き始める前は2話8000文字ぐらいでサッと終わらせるつもりが、描き終わって確認してみると4話15000文字という倍増具合…
モブキャラで登場させたはずの博識ングが脳内で暴走し始めたのが原因です…
計画性のなさが露見してますね。
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