愛の弾丸、世界の弾丸
次か次々回には決着予定・・・。
「奇襲におススメの場所はAタワー最上階だ。」
「ちょっと待って!そこで待ち伏せできるなら良いだろうけど、Aタワーに行く前にバレるでしょ。俺はパルクールで壁は登れるけど、足の速さは人並みだよ?」
シャランガは要領が悪いなと言わんばかりにため息をつく。
「お前に買わせた道具を見てみろ。」
「えーと、隠密剤と加速剤…だな。」
「隠密剤は10秒間足音を消せる。加速剤は10秒間足が速くなる。これを組み合わせれば敵にバレずにAタワーにたどり着ける。念のため俺がBに行った情報を敵に与えて、ヴォルトがAにいる可能性を減らしておく、絶対にバレない。」
「加速剤で敵よりも早くAサイドを渡って壁を登り、隠密剤で気配を消してAタワーに潜入するって事だな。」
「あぁ、それに最上階なら俺が援護射撃できる。いいか、ヴォルト。奇襲は倒せた人数が0人なら失敗、1人だけなら大きなリスクをかけたリターンに釣り合わない、2人倒してやっと成功だ。必ず2キルするんだ。」
作戦は成功しつつある。
ヴォルトは敵にバレる前にAタワーに潜入し、最上階でTeLeSをキルした。ゆっくりと標準を合わせてから引き金を引く。他に意識が向いている敵を外すわけはない。
さぁノルマまであと一人、目の前のマッチョマンを確実にキルする。
ヴォルトはショットガン、キャッスルはアサルトライフルだ。二人は同時に引き金を引いた。近距離での撃ち合い双方の弾は確実に体を捉えた。
アサルトライフルの銃弾1発、ショットガンの弾丸3発が2人のオートアーマーを破壊した。(※ショットガンは1度の発砲で6発の弾丸が出るが1度の発砲で何発当たろうとアーマーのみが壊れる。つまり、もう一度発砲しなければ本体には届かない。)
ここからは生身の人間での勝負…、一度の選択のミスが負けに直結する。
アサルトライフルは火力が高い。胴体に数発食らえばこちらのショットガンを当てても負けるのは俺……、ヘッドショットや左胸は一発でキルされる。それでいてエイム力は劣っているし、道具はもう使い切った。何もかも敵より劣っている。
だが、唯一身体能力だけは俺の方が優れている…。
ならば!相手の予想外の動きで照準を乱し、致死量を避ける。
我の方が武器性能は上、焦らずとも十分な勝率だ。刹那、目つぶしの閃光爆弾の使用を検討するができれば後半ラウンドに残したい。銃のみでの決着を決断する。冷静に敵の頭に標準を合わせる。
1発頭に当てる…それだけで我の勝利だ。
「ここからは瞬き厳禁だぜ?マッチョマン!!」
「これからお前が負ける瞬間を見逃すはずなかろう!!!」
ヴォルトはリロードと共に背後の柱へバックステップで下がっていった。ショットガン使いがアサルトライフル使いから距離をとるというFPS経験者なら誰でも知っている禁忌にキャッスルは大人げなく銃を連射する。ヴォルトが柱まで下がり切った時、左腕に2発、左わき腹に1発の銃弾が貫通していた。左腕はもう使い物にならない。
だが、準備は整った。
「IT'S SHOWTIME!!!」
柱をいつものようにウォールランで駆け上がりそこからバク宙……パルクールの技名でいえば“ウォールバックフィリップ”をして空中でキャッスルとの距離を詰める。
勿論、キャッスルはその動きを眺めていたわけではない。しかし、フルダイブFPSでは珍しい上下の動きはキャッスルが培ってきたエイム力の範囲外。無理矢理照準を合わせ弾を当てるが致死量には至らない。現にヴォルトに当てた弾は右太ももに1発、左肩に1発の計2発。
合計5発の銃弾を受け満身創痍のヴォルトだが彼はすでに空中。壁を蹴りバク宙した勢いでキャッスルとの距離は空中でどんどん近づいていく。使い物にならなくなった左腕・右足を諦め、右手でショットガンを構え左足で安定させる。近距離なのも相まって標準は完全に頭に定まった…そのまま引き金を引く。
「なんなんだ!?曲芸師みたいにちょこまかと!!」
近距離であることが幸いし、ショットガンの弾は三発が頭に当たった。キャッスルは崩れ落ち、光の粒子になって消えた。
ショットガンの反動でヴォルトは吹き飛ばされ床に横たわる。
【VAULT killed CASTLE.】
「よっしゃあ!ノルマ達成だ!」
ヴォルトはガッツポーズを空に掲げた。
ピッ、ピッ、ピッ、
彼は作戦を成功させた。だが、忘れていた。敵がもう一人いることを…。
ピッ、ピッ、ピッ、
下の階から上がってくる赤い髪のショートカットの女性の姿…NitoOが現れる。
ピッ、ピッ、ピッ、
「ヴォルトくん、やはりあなたは強いのね。」
ピッ、ピッ、ピッ、
「まだ敵がいたのか。お前も倒す…。」
ヴォルトはフラフラと立ち上がり銃を構える。
ピッ、ピッ、ピッ、
「でも、やはりあなたは初心者なのね。」
ピッ、ピッ、ピッ、
「はぁ?どういう・・・・・、」
ピッ、ピッ、ピッ、カチッ。
ヴォルトの足元が揺れ、爆発音とともに床が崩れる。ヴォルトは下階に落ちていく。
「ゲームをプレイしているなら、爆弾の音を聞いたら一目散に逃げる筈だもの。」
ニトはハンドガンを落下中のヴォルトに向ける。
「ごめんね。ヴォルトくん。」
パァァン(銃声音)……。
【NitoO killed VAULT】
ニトの役職はSPECIAL ONE。スペシャルワンは4つのキャラの中から1つを選ぶ。スサノの使う剣士もその1つだが、彼女はボマーを選んでいた。15個の爆弾を使い、相手を追い詰め爆発でキルする。BFカルナバルのスペシャルワンの中で最も使用率の高い万能キャラをニトは使いこなしていた。
「さて、1vs2。どうしようかな。」
索敵要員であるテレスを失ったことで、危険を冒して情報を獲得しなくてはならない。Aタワー5階、一番見渡しのいいこの場所からマップ全体を見渡す。
(パンッ)
遥か遠くから小さな銃声が聞こえる。ニトが振り向いたその時…、
遥か遠く…Bタワーから放たれた弾丸はニトのオートアーマーを突き破り、頭に当たった。
ヘッドショットを食らえばそこでゲームオーバーだ。
「うそっ、でしょ!?」
【SharangA killed NitoO】
シャランガがニトをキルするのに要した弾丸は一発。
BFカルナバルにおいてオートアーマーを着ている敵を一発で倒す方法は1つしかない。
“スナイパーライフルで頭を撃ち抜く”
そんな神業をマップの端から端と同義であるA・Bタワー間で成功させた。
去年末のU-17の世界大会で活躍した彼は天才スナイパーの名と共にある二つ名で世界に名を売った。
『精密機械SharangA』
世界に精密機械と認定された彼には今回の一発など造作もなかったかもしれない。
悠々と敵のいないマップを進み救難閃光を設置した。
その後、閃光が上空に打ち上げられ、その輝きと共にTeam Redの前半戦勝利が確定した。
【Flashラウンド Winner Team Red】
【Team Red 生存者2】
【Team White 生存者0】
【Bombardeoラウンドに移行します。】※後半ラウンドのこと。
二戸ちゃんサイコパス入ってない!?
忘れている方もいると思うので、再度掲載。
スナイパーライフルはアーマーを貫通できる。
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