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ファースト・キス

目を閉じて優也を待つマーブル…


彼女は彼に抱き寄せられて口唇を重ねてくると思っていたが…いつまで経っても彼から口づけどころか身体を抱かれもしなかった…




…ああ…じれったいわね…早くしなさいよ…




その時、ふうわりと清々しいミントの香りがして彼女は驚いたが、直ぐにその理由が分かった。




マーブルが目を開けるとそこには自分の頬の涙をハンカチで優しく拭いている優也がいた。






大きく瞳を見開くマーブル…




「い…一体この男は何を考えてるの…


なんて真っ直ぐに私の眼を見つめるの…」








「マーブルさん…泣いちゃダメだ…ダメだよ…


君が泣いたら、今、何処かで自分と向き合って必死に闘っている弟さんが報われないよ…



もし、あなたが無理矢理捜して連れ戻しても…きっと弟さんは…


いや、男という生き物は自分の道を切り拓いて進んでいる時には自分の大切なひとにはじっと信じて待っていて欲しいものなんですよ…」




そう言うと優也はマーブルの手を握ってチェーンの付いたロケットペンダントをポケットから取り出して彼女の掌に置いた…





「これは…?」





「僕も大切なひとの写真を入れて肌身離さず持っていました…



あはは…女々しいですよね…でも…



あなたが弟さんといつも一緒にいられるように差し上げます…



もし良かったら着けてみて下さいね!!」



ニッコリとマーブルに向かって笑う優也に言葉を失うマーブル…



「あっ…あの…………どうも…」



その言葉だけを絞り出して彼女はペンダントを見つめたまま俯いて黙ってしまった。


「どうか弟さんを信じて待ってあげて下さい…


不安になったらいつでも僕に話してくださいね…」



優也はフウッと大きな息を吐いてサブリナの方を見た。そして彼女の方に向かって歩き始める…




サブリナの表情がハッキリと分かる場所まで近づいた時、彼は少し驚いた…



「サブリ…ナ⁉︎」



彼女は目を潤ませながら優也をじっと見つめていた…



「優也様…優也さまぁぁぁぁぁぁ!!」



彼の元へと駆け寄るサブリナ…



その胸で受け止める優也…





「ど…」



…どうしたんだい?


優也の口からその言葉は出なかった。


…何故なら…




愛する男性との初めての口づけ…



サブリナの柔らかな口唇が優也の言葉を遮っていた…



彼女の涙混じりのしょっぱいファースト・キスに優也…そしてマーブルは一段と大きく瞳を見開いた。



湖から吹き上げてくる風が三人の髪を大きく揺らす…



高鳴る心臓の鼓動とは裏腹に火山の展望台は静けさに包まれていて風の声だけがあたりに響いていた。

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