夢心地
「クロノ!!」
優也の叫び声と共に世界の全ての時間が一瞬にして止まる…
フワリ…
リルの頭を抱いたメイド服姿のサブリナの身体は真っ逆さまの状態から一度浮かび上がったかのような感覚に襲われる…
あれ…私…上に…
トンッ…
彼女は固く瞑っていた目を恐る恐るゆっくりと開けた…
…ああっ!!
そこには真っ青な大空と…シルクハットの男性の顔が…
「優也…様…⁉︎」
ブラッドムーン…
紅い瞳のその男性はサブリナに優しく話しかけた…
「…大丈夫か…?」
「は、はい…」
シルクハットにタキシード姿の優也はサブリナをゆっくりと芝生の上に下ろした…
「ダーリン!!大丈夫…⁉︎」
バルコニーから下を覗き込むプラティナ…
変身を解いた優也はニッコリとプラティナに微笑みかけた。
「ふうぅぅぅっ…」
大きな息を一つ吐いて彼女も優也に微笑み返した。
すると…優也のすぐ側に…スウッと具現化したヴァルプルギスが姿を見せた…
「危なかったのう…」
「うん…ゴメンよ…ヴァル…僕がもっと気をつけるべきだったよ…」
「パパ…」
「あの…私…」
リルとサブリナは優也に歩み寄ってきた…
「おっと…」
ヴァルプルギスは優也の中へと戻っていった…
「ゴメンよ…リル…」
「うん…ぼくもちょうちょにみとれちゃって…」
「すいません…お怪我はありませんか…⁉︎」
「えっ…ええ…わ、私は大丈夫…です…」
優也はサブリナの手の甲から少し出血しているのを見つけた…
手摺りを飛び越える時に何処かに引っ掛けたのだろう…
ポケットから白いハンカチを取り出すと端を口に咥えて…ピリピリピリピリ…と裂いた。そしてハンカチで傷口を優しく縛った…
「あっ…⁉︎」
「リルを助けて貰ってありがとう…失礼ですがお名前を教えてもらえますか…?」
「あっ…あの…サブリナ…です…」
「サブリナさん…妻の身の回りの事やいつもミスやリルの面倒を見て頂いてありがとうございます。」
優也は深々と頭を下げた…
「そんな…私はメイドですから…当たり前の事です…」
「子供の命を救って貰った方の名前も知らないなんて…父親として失格です…
また改めてお詫び致しますね…
それと明日は忙しくなるのでどうか妻を支えてやって下さい…宜しくお願いします…」
「は、はい…分かりました…」
憧れの優也と話せてサブリナは夢心地であった…
「ああ…こんな事って…
優也様が私に…私の名前を聞いて下さった…」
じっと手のハンカチを見つめる彼女…
プラティナが庭に降りてきた…
「ダーリン…サブリナさん…リル…」
「ママ…!!」
プラティナに一直線に向かうリル…
「サブリナさん…リルを助けてくれて本当にありがとう…」
「だ、大丈夫です…優也様…プラティナ様、リルくん…ミスちゃんも私が一生懸命守ります…
……あっ!!」
プラティナの涙ぐんだ表情につい、気持ちが口から
飛び出してしまったサブリナは自分の言葉に恥ずかしくなって真っ赤になってしまった…
「ティナ…ゴメンよ…」
「ううん…リルもサブリナさんも…だれも傷つかなくて本当に良かった…
彼女達には本当に良くして貰っているのよ…
本当に守ってもらっているわ…」
「確かに…僕なんかよりずっと頼りになるね…」
「まあ…あなたったら…ウフフッ…
さあ…私がお茶でも入れますからサブリナさんも中に入りましょう…」
「は、はい…」
サブリナもやっと笑顔を見せてみんなで王宮の中へと入っていった…
近くの繁みから様子を見ていた二人もプラティナと同じように安堵の溜息を漏らしていた…
「ふうぅぅぅ…良かったわぁ…」
「本当でございますね…お嬢様…」
「…社長って言えって言ってるでしょ…!!
あの男の子が落ちた時はどうしようかと思ったわ…」
「お言葉ですが…あの子はお嬢様が偵察用に召喚した小型の召喚獣…ジュエラモルフォンに驚いただけでお嬢様に責任は…」
「馬鹿ね!!あなた…子供は国の宝じゃないの…
そんな事言ってるとお年寄りになってからみんなに見向きもされないような人になるわよ…」
「でも…あの子はプラティナ王女の子ですよ…」
「それが何よ…私が憎いのはプラティナ王女よ…
子供に罪はないわ…」
マーブルの言葉にテラゾーはニッコリと笑った…
「な、何よ…」
「それでこそ私の大好きなお嬢様です…
このテラゾー…一生お嬢様について行きますね…」
「フン!!お好きになさい…」




