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藍色のrequiem  作者: 水無月やぎ
11. 象牙色のbelief
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11-2

蘭はあっという間に骨になった。この骨すら、元々試験管で作られたもの。でもここにはやっぱり、蘭がいる気がした。僕は彼女を家に持ち帰った。リビングの柔らかな日光が当たる場所に置いて、伯母さんが色とりどりの料理を彼女の前に並べた。


雛さん達とは全く連絡がつかず、伯母は珍しくイライラしていた。

僕は蘭を引き取るために学校を休んでいて、リビングにいた。テレビをつけると、夕方のニュースが始まったところだった。


「以前お伝えしました闇治療問題に、新たな動きです。昨日、薬を入れられていた10代の女性が亡くなりました。体内バランスの急激な変化によるものと見られています。また、この研究に関わっていたのは、共にアメリカを拠点に活動する研究者、上島拓也氏と平野雛氏であることが分かりました。また、2人が元夫婦であったことも判明しました。2人は今晩国内で記者会見を行う予定ですが、それに先立ち、共同で次のようなコメントを出しています」


”この度、我々が犯してしまった過ちは、決して謝って済むものではないと承知しております。人を救うとはどういうことか、倫理とは何か。その問いに対する答えの導き方を誤ってしまいました。命を軽視している、そう思われてもおかしくありません。この程度では消えた命の重さと全く釣り合わない、その事は重々に承知しておりますが、彼女や患者様、医療関係者の皆様、共同研究員だった方々に対するせめてもの償いとしまして、現職を依願退職させていただきます。全ての研究に対して、(おご)ることなく真摯(しんし)に向き合い、常に誠実であること。研究の大原則を無視した我々は、もはや研究者を名乗る立場にありません。皆様には大変な失望と悲しみを与えてしまい、誠に申し訳ございませんでした”


「ご覧いただきましたでしょうか。…えー、研究の経緯や今後の治療など詳しいことは、記者会見にて発表する予定だということです」


両親が日本に揃い、コメントを発表した。迅速な対応を見る限り、前日、いや、それよりも前から病院は記者会見の準備を進めていたようだった。伯母はテレビを睨みつけ、でも必死に情報を追いかけていた。


記者会見は大変なことになった。取材陣からの非難轟々で、一時的に会見を進行できない場面もあった。テレビをぼうっと見つめながら、両親が揃うのを見るのは初めてだな、と思っていた。

学校は一定の取材に対応するため、臨時休校になった。そしてそのまま冬休みへと突入したので、僕は真理達に会うこともなかった。


程なくして両親は辞職した。彼らに課せられたペナルティーは相当重く、2人の博士号は取り消しになった。その上、査読を通過した数々の論文も、医療分野を中心に削除された。長年積み上げてきた実績は、瞬く間に脆く崩れ去ったのだった。

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