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急に不登校になったら逆に怪しまれる、施設の人にも迷惑をかけたくない、と言って蘭は頑なに学校に通い続けた。
教師にバレないように、陰湿ないじめが横行し始めた。もちろん首謀者は真理だった。
蘭が精神的にも弱っていく姿は、目も当てられないほどだった。僕は学校の外でしか、蘭を慰めて抱きしめることができなかった。
1週間くらい経ってから、蘭は校長室に呼び出されたようだった。
施設の部屋で蘭は状況を伝えた。
「自主退学という形で、準備を進めてくれ、って」
「そんな…」
「早くて来週くらいには学校辞める。辞めたくなかったけど、校長先生から言われちゃしょうがないよね…施設長には、理事長から直接伝えるって」
蘭は少し痩せていた。僕も精一杯支えていたつもりだったけれど、蘭にかかる負担は計り知れないものだった。
「こんなのわがままでしかないんだけど…学校辞めちゃっても、響也とは会いたい…ダメ、かな」
僕は真理の側につくしかなかったのに、それでも結構傷ついているはずなのに、蘭はそう言った。
「当然だよ。蘭が求める限り会うよ」
蘭の方から僕に抱きついてきた。前よりも幾分骨ばった腕が、弱々しく僕を包み込んだ。僕は蘭の体が折れないように、優しく、でも決して離すまいと誓って、強く抱き締めた。




