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2学期の始め、蘭が倒れた後に再び席替えをしたので、蘭と僕の席は少し離れた。それでもしばらくの間は蘭と話していたのに、あの一件以来、お互いに何となく距離を取るようになっていた。あれから1週間くらいが経っていた。友達は僕を心配するようになった。
「なあ響也、蘭と何かあった?最近全然話してないじゃん」
「あーうん…まあ、ね」
「響也達、付き合ってんのか?!ってくらいにあんなに毎日喋ってたのに、急に2人とも距離置いちゃって。喧嘩でもした?仲直りしなくていいの?」
「良ければ俺達がお手伝いしましょうか?鉄は熱いうちに打て、だよ。俺達が恋のキューピッドになってやるぞ~」
友達はみんな優しい。今も思いやってくれている。
でも、この気遣いがその時の僕にはとても苦しかった。
「いいって、自分なりに色々考えてるから。ありがたいけど、今は遠慮しとくよ」
「そっか…また蘭と仲良くできればいいなぁ」
「あんだけ仲良かったんだから、仲直りできるならしといた方がいいぞ。響也と蘭、お似合いだもんな~」
「な!蘭美人だし、密かに狙ってる奴もいるみたいだけど、お似合いだから、俺達誰も響也のこと邪魔してないんだぞ」
…そんな風に思われていたとは。
蘭とお似合い、と言われて、嬉しくなかったわけがない。でもどうしたらいいのか分からなかった。
きっとずっと信頼してくれていた。なのに、心ない言葉で蘭を傷つけてしまった。良い関係を築くのには時間がかかるのに、関係にヒビを入れることは一瞬でできてしまう。蘭が負ったであろう傷を、癒すことは僕にできるのか。全く自信がなかったし、僕にその権利があるとも思えなかった。
その後もさらに1週間くらい、悩んで悩んで悩み続けて、伯母に「やだ響也くん、痩せた?!」と言われるくらいになっていた。食べる量は変わっていなかったけれど、エネルギーとして蓄える能力が落ちていたのかもしれない。
でも、そんな時だった。
消え入りそうな声で、「今日、暇…?」と教室で聞かれたのは。




