タバコ
初めて煙草を吸った。
先輩に誘われ、断る気分でもなかったのでそのまま吸ってしまったのだ。
感想としては「最悪」。良くもまぁ、こんなものを吸いたくなるもんだと思う。
「どう?」
先輩が自分の煙草を吸いながら聞いてきた。
「そうですね……。不味いです」
先輩は「ははは」と笑いながら。「12ミリだしな」と言った。
12ミリってなんだ?長さか?
「でも、灰の捨て方は様になってんな」
「まぁ……。周りにあんだけ吸う人がいるんで、見様見真似で」
「飲むか?」
先輩がコンビニで買ったカフェラテを出したので、すぐに飲んだ。
甘い液体が、口の中に広がった煙臭さを流してくれる。
多分、二度と煙草は吸わないだろう。どうしてこれを吸いたくなるんだろうか?もっと吸えば欲しくなるのか?愛煙家の気が知れない。
「なんかあったのか?」
「え?」
「いや……なんか雰囲気暗いぞ」
「はぁ…まぁ、いや……」
曖昧な返事しかできない。
理由は色々ある。昇任試験に落ちたこと。休暇が無くなったこと。そして何より、1番大きな理由が、女の子に振られたこと……。
期待させるだけさせといて。向こうから求めてきて。いざ告白したら無視された。
そして、無視されて1ヶ月経つ。未だ連絡は無し。
嫌な事が重なりすぎて辛い。このままいい方向には行かないんじゃないかって気もする。
先輩からタバコを勧められて断らなかったのもこれが理由。
いつもしない事をすれば、いつもと違うことをすれば、何か変わるんじゃないかって気がして、タバコを吸った。
結果、何も変わらない。変わらないんだなぁ……。俺は。
逃げてきた報いだろうか?
変化が怖くて逃げてきた。一度環境が落ち着くと、それを変えるのが怖くなる。億劫になる。
だから無難な選択ばかりしてきた。その方が楽だから。でも、楽な道に、変化の無い道が楽しいわけが無い。
いつだったか、上曹の先輩が言っていたな
「反省すべき選択はいくらでもしろ。後悔のある選択はするな」
難しい。後悔したかなんて、結果を見て見ないとわからない。
「不味いですね。タバコ」
話を変えたくて、そう言った。
これも逃げだろうか……?
先輩は「お前にタバコは絶対やらねぇ」と笑った。




