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ヴォイドミッション  作者: 冠 三湯切
4/10

ミッション4 東雲組幹部を捕らえよ

 ブリーフィング


 『ヴォイド、以前の君の調査から我々で調査した結果、その女性について少し分かった事がある。名称、年齢は不明。身体的特徴で分かっているのは二十代前半と言う事と顔に傷。そして持っているオートマチックは45口径、ロングスライドのM1911モデル、ハードボーラー。そこまでは把握したか?』


 「あぁ、しかし銃の種類を探していたとはな」


 『まぁ調べられるところはとことん調べなければいけなくてね。だがこのハードボーラーはやはりこの世界で作られている。今日君に与える任務は一つ、我々はその女性が現れる可能性のある場所をある程度絞り込んだ、そこで君はその女性を生きて捕らえ、ここに連れてくることだ』


 「了解した」


 


 セレス 


 話によれば、例の女はここで何件かバーを経営しているオーナーらしい。だが同時に耳に入ったのが、武器商売だ。その女はここ近郊の市販されていない武器等を取り扱っているという話だ。


 まずは一件目からだ、今回は闇雲に話しかける真似はしない。東雲組を探るという事をすれば変に警戒されかねない。ここは待つ。


 俺はしばらく待ち続けていた、その時だ。


 「おるぁ!!!しののめさんよぉ、この間はやってくれやがったな!!」


 このタイミングで強盗か・・・面倒だ。突如ドアを蹴破り大男が乱入してきた。


 「てめぇら動くんじゃねぇぞ!!俺ぁな、無駄な暴力はしたくねぇんだ。東雲の奴らをブチのめせりゃそれでいい。奴らぁな、ここを支配しようとしてる大悪党だ。だから少しでも知ってる奴は俺に協力しろ!!」


 脅迫まがいなことをしておいて、協力しろと言われても誰も声を出せなくなるぞ、阿呆か。


 まぁいい、ここは大人しくしていればもしかするとそいつが姿を現すかもしれない。


 「おい!!そこのデカイの!!こっちにこい!!」


 「お、俺ですか?」


 何故ここの中から俺を・・・ビビっているフリをするのは結構大変なんだ。俺は仕方なく大男の方にショボショボ歩いた。


 「聞こえてるか東雲!!五、数えるうちに出てこねぇとこいつの命はねぇぜ!!」


 「そ、そんな・・・俺何もしてないじゃないですか!!」


 「うるせぇ!!無駄に目立ったお前が悪いんだ!!それに言っただろ!!東雲は大悪党だ。これは革命なんだ!!セレスとフロンティアの自由を賭けたな!!お前はその為の犠牲だ!!」


 犠牲、だと・・・戦いを知らぬ屑が、その言葉を易々と使うんじゃない。


 「ん?」


 少し頭に来た、目立つのは癪だがここは仕方ない。犠牲の意味を、その体に刻み付けてやるか。そう思って咄嗟に肘で大男の腹を殴ろうとした。しかし、どうやらその必要はないな。


 「何度も何度も・・・てめぇらいい加減にしてくんねぇかなぁ。あんたみたいな輩のせいで、せっかくの観光名所が最近評判下がってんだぜ。それに、うちの事探してんのに後ろを警戒しないとか、とんだ阿呆だな」


 俺の目からは見えないが、今この大男の後ろには例の女がいる、そしてこれは頭に銃を突きつけられているな・・・


 「くそ・・・いつの間に!」


 「今の間にだ、にしてもたまたまうちが良かったなぁ。おかげで誰も殺さずに済んだじゃないか。無駄な暴力嫌いなんだろ?なんてな、てめぇがここに来るのは知ってたぜ。ドリトス タコルスだったっけか?」


 「な、なんで俺の名を!!」


 「東雲の情報網は結構広いんだ。さて、あんたは今その男にナイフを突きつけた。私はどうだ?あんたの頭にハジキ一丁。よくナイフの方が銃より早いとか言うが、うちがあんたを撃ちぬくのが早い自信はあるぜ」


 堂々として威圧を与える。このドリトスという男の心拍数が明らかに上昇しているのが分かる。こいつには自信がない。だが女にはある、既に勝負あったな・・・


 「くっそが!!」


 案の定だ、ドリトスは俺を突き飛ばし女に向かった。まともな判断ができなくなっている。そして女は即座に反応し、右肩に二発撃ち込んだ


 「ぐぅあああ!!」


 「どこまで行ってもうちらを目の敵にしやがって・・・うちはあんたらと敵対するつもり何てねぇし興味もねぇ。支配権がうんたらかんたらとか言ってるが、フロンティアの支配なんざだれがするか。ただうちらは生きたい、それだけだ。ただそれを脅かすからうちはお前らを撃つだけなんだぜ」


 そう言うと女はドリトスの顔面を盛大に蹴飛ばした。


 「おい、大丈夫か?」


 顔に傷、そして右手には情報通り、これはハードボーラーだ。


 「えぇ、ありがとうございました。ぜひお礼をしたいのですが・・・あの、お名前は」


 「うちの名前は知らない方がいいぜ。それに礼は要らねぇよ。知っておいて放置させてあんたを危険に晒せちまったのはうちだ。悪かったな」


 名は語らないか・・・ガードは固いようだな。裏で武器商人をやっているんだ。名はおいそれとは出さないだろう。せいぜい出されたとしてもそれは偽名だ。


 「さてと、うちはこいつを署に届けてくるから。おいとまさせてもらうぜ」


 女はこの店から男を担いで出て行った。後を追うか・・・俺は店を逃げ出したかのように外に出た。


 女はここの警察であろう人物にドリトスを渡した。


 「お、またこいつらここに入り込んできたのか・・・一体どこから来るんだ?セレスに入るにはあの橋一本だけなのに」


 「こいつらの事だ、変装かなんかで来てんだろ。警戒強めたほうがいいんじゃねぇか?」


 「とは言ってもなぁ、観光地として規制を厳しくするのはどうかって感じなのよ」


 「そんな悠長な事言ってると、ほんとに痛い目見ちまうぜ」


 「すいませんね若頭。いかんせん俺、この自由に行き来してる橋を見てるのが好きだからさ」


 あの警官・・・まさか。


 「それよりも若頭、この後は」


 「あぁ、あいつに会いに行ってくる。しかも今日はあいつ自ら来るらしい。なんでも新兵器が出来たってな」


 「あいつがあそこから出てきたのか。一体どんなんだろうな」


 「さぁ、なんだろうな。さてそろそろ時間だ。お前も見回り頑張れよ巡査部長」


 新兵器・・・そう言う事か、兵器の出所は女ではなく恐らく取引相手だ。しかも今の話を察するに今日は、兵器を作った張本人が来る。


 『今の話・・・ヴォイド、これは願ってもないチャンスだ。武器職人の方も同時に捕らえてくれ』


 「了解だ」


 俺はそつなく後を追った。


 女は路地裏に入る、どうやらこの先が取引場所だ。俺は隣の路地から回り込んだ。俺は他より五感が鋭い、ここの位置ならば声は聞こえる。


 「よぉ、久しぶりだな」


 「おー、おっひさー。会うのって何年振りかね」


 相手側・・・この声のトーンはまるで、子供だ・・・


 「それよりも、例の物は」


 「できてるぜぃ、あんたのくれた資料役に立ったよ。前、スティンガーを売ったよね」


 「あぁ、だが何者かの襲撃で奪われた」


 「マジ!!カールがいたんでしょ!?」


 「あぁ、奴はやられていたよ。いや、自ら命を絶ったと言った感じだ」


 「まさか・・・奴らが動いてるのか?」


 「うちらも目立った行動を起こす事が多くなったからな。警戒しないと」


 「だね・・・そうだ、ここは大丈夫だよな?」


 「あぁ、ここにはない」


 「よっしゃ、じゃあこれだ。調べたらマイクロウージーって名前らしい。こんなちっこいのに銃弾を滅茶苦茶にバラまけるんだぜ!!」


 やはりこの子供が作ったのか・・・それにしても資料か・・・


 「へぇ、そいつはすげぇな。ほれ、釣りは要らねぇぜ。それよりも、それちょっと見せてくれ」


 ん?  あの女、俺に!!


 『バラララララァァン!!』


 俺は咄嗟に伏せた。奴は俺のいる方向に向かって全弾発射していた。


 「ちっ、外したか・・・」


 「おいおい!!一体どったねん」


 「うちが気付かないと思ったか?出てきな・・・」


 「まさか俺に気が付いていたとはな」


 俺はゆっくりと外へと出て行った。


 「あんたはさっきの・・・てめぇ一体何者だ?」


 「お前と同じくだ、名前は聞かなくていい。俺の任務はお前とそいつを連れていく事」


 それにしても驚いた、まさか俺の尾行がバレるとはな。世界は広い、今は少し楽しい気分だ。


 「お、成程そう来たか。流石に行動が目立ちすぎちまったかな?」


 「どうやらそうらしい、だがこれではっきりしたぜ。お前らが根城にしてるのはあのクレーターの先だな、フロンティア内のいざこざは滅多な事では外に出ねぇからな」


 これでこちらもはっきりと分かった、ここ最近、野盗共にクレーターの先の噂を流したのは東雲組だ。


 「流石だな、正直感激しているぞ」


 「は、褒められても何にも嬉しくないね。それよりもあんた、うちらを連れて行くとかぬかしたな、今は二対一、こいつはこんなんだがうちが認めるぐらいには強い。一人で勝てるか?」


 「こんなんってひっでぇねー」


 確かに、先ほどのこの女の身のこなしはただ者ではなかった。そしてそいつが認めるこの子供。何となくは感じていたが、やはりこいつもかなり異質だ。


 「だが俺はそれでも任務をこなさなければならない。それが俺に与えられた戦いだからだ」


 俺は瞬間的に攻撃を繰り出したが、女も常識外れの反射神経で反応し、取っ組み合いになった。


 「このパワー・・・お前も同じなのか?」


 「全然違うぜ、これは覚醒じゃねぇ。見た所あんた完全な力は持って無さそうだ。だとしたらパワーはうちが上だぜ」


 女は俺の腕を払いのけ、直後にタックルをかました。衝撃で俺の体が数メートル押し出された。そして間髪入れず、銃弾を数発撃った。


 「お、こりゃ俺っちの出番はねぇな」


 俺は銃弾をかわし反撃に転じた。


 「あんた、銃は抜かねぇのか?」


 「俺の任務はお前らを生かして連れていく事、その場合は無傷で連れて行くと決めている」


 「意外と紳士だったんだな。だがうちは生憎そんな紳士的な性格じゃねぇんでな、敵は容赦なくぶっ殺すぜ!!」

 

 女は瞬間的な動作でマガジンを交換。そして狙いを定め撃つ。


 俺は女の目線や銃口の向きから弾丸の飛ぶ方向を予測し避ける。そして近接戦闘に持ち込むが、この女、格闘戦にも慣れている。この動きは空手か?俺の使う近接戦闘術をはじくような拳の捌きに少し手こずっていた。


 「この実力・・・もしお前が向こうにいたらバディを組んでもいいくらいだ」


 「なんだ急に、口説いてんのか?」


 「純粋に思っただけだ、それほどまでにお前の実力は高い。俺の足元ぐらいには及ぶ」


 「前言撤回、あんた紳士というより自意識過剰なだけだな」


 さて、少し楽しかったせいか、俺としたことが遊んでしまったな。そろそろ任務に戻らなければ。


 行くぞ・・・


 「ん、こいつ・・・雰囲気が!」


 「きゃるぅぅっ!!」


 「んなっ!ぐっ!!」


 あまりに突然の出来事で、反応が出来なかった。キャロットが急に飛び出し俺に突撃した。


 「キャロット・・・貴様何を・・・?」


 なんだ?怯えているのか?キャロットは俺に抱きつくようにへばりついている。そして体が小刻みに震えている。こんなキャロットは見たことが無いぞ・・・


 「あれ・・・おいおい、こりゃやべぇ。こまっちゃん!!」

 『ヴォイド!!聞こえるか!!』


 ジョシュからの通信と武器職人の子供がほぼ同時に叫んだ。


 「何だ?」

 「どうした?」


 『ビーストの反応だ!!ヴォイドのすぐ近く!』


 「ビースト?何故あれが?」


 『分からない!!ビーストはアウロが管理してるはずだ。だけど、そこの近くに識別不明のビーストの反応が急に出てきたんだ!!』


 「こりゃやっべーぞ、この反応『子』の方じゃなくって『親』だ」


 子供は何かタブレット端末のようなものを取り出し操作している。


 「おいあんた、何か知ってるのか?」


 女は俺に質問する。ごもっともだが・・・


 「俺の方にもわからん。識別不明のビーストの反応が出たと言う事だけだ、その子供の様子を見る限り、それは事実のようだな。何故お前がそんなものを探る装置を持っているかは聞かないがな」


 「なっはっは!!」


 その時だった、奥の方から人間とは明らかに違うピタピタという足音が聞こえた。そして奥から現れたのは、二足歩行のトカゲのような生き物だ。


 「ジョシュ、ビーストを発見。だが変だ、反応はマザービーストの方だと言っていたが、マザーは確か必ず巨大になる・・・しかしこいつはかなりの小型だ。それに特徴で言えばタイプリザードに近い。間違いじゃないのか」


 『いや、反応はマザービーストだ。あれは紛れもない元人間・・・』


 「クギャアアアアアアアア!!」


 「んぐ!耳が!!」


 突然ビーストは雄たけびを上げた。耳をつんざく雄たけびは三半規管が狂うほどの音で立つ事が出来ない程に強烈だ。


 『なんだよ今の・・・危うくこっちの通信機が壊れかけたよ』


 「そんな事よりも奴は俺を狙っているようだぞ・・・」


 ビーストは俺を標的と見ているようだ、姿勢を低くし牙を鳴らしている。そして一気に駆けだした。


 「かなり早いな・・・」


 『ズガン!!ズガン!!ズガン!!』


 かわすと同時に俺はホルスターから銃を引き抜いた。そして三発頭に撃ち込んだ。だが・・・


 「死なない・・・やはり奴はマザービーストか」


 ビーストは頭から血を流しているものの、何食わぬ顔のままじっと俺を見つめていた。だが今度は他の周囲の奴らも同時に見ている。


 『クギャアアアアアアアア!!』


 「また!!」


 咄嗟に耳を塞いだが、それでもなおこいつの声は強烈だ。しばらく立てなくなりそうだ。


 「こいつ、相当厄介だな・・・ジョシュ、指示は・・・」


 これは・・・通信機が壊れた。奴の声でスピーカーがいかれたようだ。


 「おいあんた・・・あんたが襲われたって事は、本当に偶然の出来事みたいだな。だったら今は一時休戦で、奴を仕留めたほうがいいんじゃないか?」


 女は俺にそう提案した。おれの任務は二人を連れていく事、こいつをうまく利用すればむしろ任務をさっさと解決できるかもしれない。


 だが、お前は任務の邪魔をした。任務に支障をきたしたお前は、排除する。


 「いいだろう、通信が断たれた今は指示する存在がいない」


 「お、決まったな!!ほい兄ちゃん、こいつ使いな!!」


 「これは・・・M4カービン?」


 子供は俺にアサルトライフルを渡した。M4カービン、見た目はそれだ。だが刻印やらがない。この子供が作ったのか。


 「それそんな名前なのか。試作品だけどよ、使い勝手はこのジュニアが保証するぜい!!」


 「どうやら接着剤を詰めてるわけでもないな・・・遠慮なく使わせてもらう。タイプラプター討伐任務を開始する」


 「あ?たいぷ・・・なんだって?」


 女はどうでもいい所につっかかって来た。


 「奴の見た目からそう判断しただけだ。昔映画で見たヴェロキラプトルという恐竜に似ていた、そこから取ってタイプラプターと呼んだ、標的対象は名前があった方が区別をつけやすく混乱しない」

 

 「おー、いいネーミングだねぇ!!よっしゃぁ!!俺っちも手伝ってやるぜい!!タイプラプター討伐開始ぃぃぃ!!」



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