絶望
今回は、超絶短いです。
と言いながら、編集により文章量が大幅にUPしました。
戦線に魔王の存在が伝わってもやることは変わらなかった。ひたすら戦い,護る……しかし、疲労の蓄積だけはどうしようもなかった。出来るだけ怪我人を下がらせてはいるものの、魔物と言う群と騎士団と言う軍の戦いでは上手く身動きが取れない為に、治療を受ける頃には重傷と言う言葉すらも生ぬるい怪我になっていることがほとんどだ。しかし、死者の数は少しずつだが、確実に減っていた。疲労は溜まっていくが魔物との集団戦に騎士達が……そして、騎士団との連携に冒険者達が適応してきた為である。これを観察したノアは
(…………これは予想外だった。疲労は蓄積されている筈なのに、ここ数日の皆の動きがよくなっている。これならばこれ以上、アリシア様のカバーを考える必要はないか?)
と、少しだが安心することができた。
(だが油断は出来ない。あと二日程で攻城兵器の運搬が完了する筈だが、魔王がどれ程の力を秘めているかはわからない。もし、魔王一匹に今の戦局を崩される様なことになれば…………あれを使うことになる)
ノアの持つ最大の武器。それは、ノア自身をも傷付ける諸刃の剣。彼にとって出来るだけ使いたくない…………まさに切り札。彼は国の為にそれを使うと秘かに覚悟を決めていた。
そして五日後にそれはやって来た。絶望と言う厄災となり……
* * *
それがやって来たのは本当に突然であった。魔物の数が目に見えて減った昼頃。これに、経験の浅い冒険者や騎士は喜んでいた……しかし、それ以外は逆に警戒心を上げていた。その行為は正解であった。実際にそれはやって来たのだから。
「――――――――――――――っ!」
それは、正に魔王と呼ぶに相応しい魔物であった。配下の魔物を喰らいながらやって来た鬼……オーガと呼ばれる魔物は、視界に敵が入った途端に天に声を響かせ駆け出した。
「はやっ―――」
一瞬……一瞬で目の前に移動したオーガに硬直してしまった騎士は、虫を振り払う様な横薙ぎによって吹き飛ばされてしまう。あり得ない角度まで曲がった首に、彼がもう助からないことがわかる。その現実に思考が追い付くまでの一瞬で、近くにいた騎士二人の頭がオーガに喰われた。そして場は混乱と恐怖に支配され、皆,我先にと逃げ出してしまう。しかし、背中を見せた者からオーガによって殺された。手当たり次第に吹き飛ばされ,踏み潰され,喰い千切られ……近くに居た者たちは撤退しようと振り向いた瞬間に死んでいく。
「……これが…………魔王」
絶望による蹂躙が始まってしまった。
* * *
「魔導部隊,魔力の持つ限り魔法を放て! 奴の足を少しでも止めるんだ!!」
恐怖で声が掠れそうになる……総隊長は、そんな恐怖を押し退けて指示を出す。僅か数秒でも足止め出来れば……そんなことを考えるもオーガの足は止まらない。魔法が目眩ましになっているため、撤退時に殺される者は減ったが零ではない。
(もし俺が囮になっても…………否,囮にすらなれない。魔王……ハッキリ言って勝てる気がしないな。これ程までに強いとはな……甘く見ていた)
頭に浮かぶ故郷の滅亡の文字。総隊長だけでなく、戦場にいる全ての人間の心が絶望で埋め尽くされようとしていた……
「……れ……う……………これ……以上は! 私の目の前で仲間を殺させはしない!!」
そんな中で一人の女性……アリシアは立ち上がる。この場にいる誰もが戦意を喪失したが、彼女は怒りを力に立ち上がった。しかし、怒りは冷静さを失わせる。彼女はオーガに向けて、魔力で引き上げた身体能力で力任せに斬りかかるものの、剣が折れてしまう。オーガに吹き飛ばされるそんな未来を誰もが幻視し,彼女の死を予感した。
「……本当に勘弁してくださいよ」
しかし、ノアの行動によりその未来は訪れることはなかった。アリシアが吹き飛ばされる寸前でオーガの腕を受け止めたのだ。
「アリシア様に斬りつけられた腕でこれかよ……化物め」
「――――――っ!」
オーガは腕に傷を負い,更に目眩ましにより十分な威力を出せなかったものの、自身の攻撃を受け止められ激昂した。そして、ノアを敵と認識し対面した。
今,ノアとオーガの戦いが始まる。
次回に一気に話を進めるつもりですので、今回はこんな駄作で許して下さい




