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“強く”なる  作者: チビ助
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「ひぃ!ちょっと待てって」


そう言ってやっと掴んだ腕はあっけなく振りほどかれ少年は少女に睨まれ一瞬怯む。


そして少年は、うっすらと瞳に涙を浮かべる少女を宥めるようにゆっくりと口を開いた。


「頼むから…、話を聞いてくれ」


「話なんて…」


少女は少年から目を逸らし、掠れるような声を絞りだした。


「聞かなくても分かってる…」


勇気を振り絞って言った告白に返事もくれず、一週間後に自分の親友と付き合いだした。


それが…


「…瑞樹の答えなんでしょ」


「それはっ」


少年は口篭り下を向いてしまう。


「バカにしてる…」


少女は溢れ出そうな涙を少年に悟られまいとその場から駆け出した。


が、すぐに少年に追いつかれ


「だから、待てって!」


再び腕を掴まれた。


「ヤダ!離してよっ」


「離さない」


今度はさっきよりも強く腕を掴まれていて、いくら腕を振っても振りほどくことは出来ない。


「っ、…瑞樹の顔なんて見たくないよっ」


「じゃあ、目を瞑ってていいから…その代わり話を聞いて…」


「…いやだ」


「ひぃ…。お願いだから」


小さい頃からいつも一緒だった少年の切ない声色に少女は観念して


「分かった…」


と呟いて固く目を閉じた。



その時、


「あらあら、お取り込み中ですか?」

「邪魔して悪ぃな」


そんな声がどこからか響き、二人は驚き固まった。いきなり聞こえてきた2つの声に、少女と少年は戸惑いながらも声の主を探した。


すると、ついさっきまで誰も居なかったハズの真横に何かのコスプレなのだろうか、白い大きな布を器用に纏った2人が立っていて、少女と少年は驚きのあまり呆然と立ち尽くす。


片方は筋肉質な男で腰に剣のようなものを差していて、もう片方は長い髪を一つに束ね肩のところから前に垂らしていた。


二人とも共通して言えることは整った顔とキレイな金色の髪の毛…。


違っているのは髪の毛の長さと…性別?


「…え、何?」


まるで何かの神話から出てきたみたいな格好を見て少女が顔に恐怖の色を滲ませたのを敏感に感じとった少年は少女の前に立ち両手を広げた。


「なんだんだよ!お前ら!!」


少年は精一杯の威嚇をするが、


「おい、本当にコレか?」

「…う~ん、私も何か違うような気が…」


などと少年の声を聞こえているのかいないのか、2人で一生懸命に何かを議論していた。


「おい!無視すんじゃねーよ!」


「み、瑞樹っ!!」


今にも掴み掛かりそうな勢いの少年の腕を少女が慌てて捕まえる。


掴み掛っても向こうは2人…、きっとこちらに勝ち目は無い。


「と、とりあえず、落ち着こうよ、ね?」


諭すように言った少女の顔を少年はチラリと窺い


「落ち着けって、いきなり変な格好で現れた外人さんに訳の分からない言葉で話しかけられて、尚且つ無視されてんだぞ!?普通落ち着けねぇだろ!」


早口で捲くし立てたが、少女は不思議そうに首を捻った。


「…え?何言ってるの?あの人達、すごい流暢に日本語話してるよ?」


少女の言葉に驚いたのは少年だけではなかった。


目の前の2人も目を見開き少女を見つめた。


「…え?」


少女が戸惑いの声をあげたと同時に二人は少女の前に跪き頭を下げた。


「「ご無礼を御赦し下さいメサイア様」」


「へっ?な、何??」


メサイアって…っ


「私共は貴女を御迎えにあがりました」


「え?」


突然のことに、少女が目を丸くしていると、二人は立ち上がり、長髪の人物が


「さあ、参りましょう」


と手を差し出した。


が、少女の元へ届く前にその手は少年に叩き阻まれた。


「ヒナに触るなっ!」


「瑞樹…」


必死に自分を守ってくれている少年の背中に少女の胸は期待で膨らんだ。


彼が好きなのは本当は自分で、最近よく連れて歩いてる女は彼女なんかじゃないんだと…。


が、その淡い期待は、


「あれ?瑞樹くん??」


後方から聞こえてきた声に脆く崩れる。


「沙耶…」


振返った先に、同じ制服姿を見つけたからだ。


「っ、…陽菜?」


数日前までは親友だった二人の間に嫌な緊張感が漂った。


奇妙な出で立ちには目もくれず、友人は


「どうして、陽菜と一緒にいるの?」


少年の元へ歩み寄るが、


「来るなっ!」


少年の怒鳴り声に、その場に立ち竦んだ。


そして、少年が、友人に気を取られてる一瞬の隙に、少女は少年の手を払い退け消え入るような声で言った。


「お願い…、早く、ココから消えたいの。早く…連れて行ってっ」


「御意」


その返事と共に少女は少年と友人の前から姿を消し、残された二人は


「「陽菜!?」」


必死に消えた少女の名前を叫び続けた。



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