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運が良かっただけ
「ヒカリ!」
自分の名前を呼ばれて目を覚ました。
目の前には幼なじみのハルの顔。
いつもならばその事に安心しておはようなどと挨拶でもしていただろうけれど、痛む背中と周りの状況がヒカリに危機を知らせていた。
一瞬で自分の状況思い出した彼女は、ハルの差し出す手を必死で掴み背中の痛みを耐えながら走り出した。
自分達がいるこの孤児院はそれなりに人数がいる為か広く、そして古い。
1度火が着いてしまったら木造で山奥にあるこの建物はひとたまりもない、とまだ幼いヒカリにもわかってはいたが、先程までいたはずの食堂はどうなっているだろうと部屋から出た際に確認した方角は既に煙が充満していて何も見えなかった。
その事に足を止めかけた自分を力強く引っ張ったのはハルだった。
「戻ってる時間は無い、ヒカリ、逃げなきゃ!」
ついさっきまで同じ場所で笑っていた友人達が頭の中で苦しむ映像が浮かんでくる。
自分の無力さが悲しかった。