第三十六話
ひとの黒歴史を全力で暴露していく女神さん(笑)
しばらくシリアス
「いや、違う、この魔力は…?」
まだまだ自称女神の他人の黒歴史への攻撃は続いている。やめて。マジでやめて。
「まさか、熾天使ミカエル!?」
マジか、あいつそんな名前だったのか。随分聞き覚えのある名前だったような気もしてたけどさ。ミカエルって言えばすごい有名天使じゃん。
って思考が逸れた。ほんとに現実逃避したい。
「っ!?そ、その腕の模様はまさか、古代よりこの世界を支えてきた双頭竜ウーヌスプローオムニブスオムネスプローウーノー!?」
長ぇ。名前が長ぇ。呪文かよ。名付け親誰だよ。あ、お前か元女神。ってそれどころじゃない、いい加減この元女神を止めなさせないと。
「はっ!!お、お前の影、それは精霊か!しかもこの気配、まさか精霊王クラス、いやそれ以上!?でもそんなはずは…でもこの気配、間違いn…」
「ごちゃごちゃうるさい」
ゴスっと音を立てて、女神の頭にチョップを仕掛けた。混乱してる女神は見事にそれを食らって地面に向かって時速120キロの速さで落下していく。
「…ったく。なんで私の魔力に気づかないんだろ」
やっぱ魔石埋め込み過ぎたかなー?
〈激しク同意。〉
だよね。
「おーい、だいじょーぶぅ?」
ガバッと瓦礫の中から女は起き上がった。
「なんなのアンタ!色々な魔力纏いやがって…!正体隠したって無駄よ、すぐに見極めてやるから!」
いや、隠してるつもりは全くないからね?
てかいい加減気づいて欲しい。全ての原因は元女神にあるんだから。
「ほら、そんなとこに頭突っ込んで生まれたての小鹿みたいに震えてないで、さっさと上がってきなよ?私は逃げも、隠れもしてないよ?」
キレて怒鳴ろうとした女は、私の殺気に触れて、真剣な顔になった。
「この気配……実力まで本物ってわけね。アンタ、一体どこのクソ神に送り込まれたの?」
その言葉に、思わずぷっと吹き出してしまう。いやいやいや、クソ女がそれ言っちゃう?
「ククク……ねぇ、知りたい?クスッ」
「もったいぶらずにさっさといいなさいよ!」
「いーよ、教えてあげる…私をこの世界に送りこんだのはね、」
スッと、女のところまで舞い降りて、顔をグッと近づけて、私は言った。
「……………あんただよ、バァーカ」
その瞬間、女神の目は、魔力を視た時よりもさらに見開かれた。
「ま、まさか……」
ああ、ようやく思い出してもらえたか。
「私は、36人目の元クラスメートにして、今代の元聖女。まぁ、1回死んでるけどね?あんたのせいで。」
笑えるよ全く。復讐したくてずっと殺し続けてきたってのに、まさかこんなに《彼女》が弱かったなんて。
「もっと、早くに来てあげれば良かったね。」
もっと早く、おわらせてあげればよかったかな。
一一この世界ごと、全てを。
「さてさて、5年前の私からの伝言だよ。……おいで、リア」
私は、歌うように呟く。事実、歌でもある。
〈…坂口 莉亜。見知らぬ異世界に喚ばれ、望まぬ役に仕立てられた〉
「信じた勇者に裏切られ、そして女神にも裏切られた」
〈“おぞましき女”の欲望によって、この世のあらゆる痛みと苦しみを与えられ死んだ〉
一一みんナ、死ねばイいのニ…
「憎しみ故に、この世界から去れず」
〈魂でさまよい、倒れたヒトの身体を乗っ取り第二生を始めた〉
「再び“女”に出会い、復讐するために。」
〈その為には、何ものにも邪魔はさせない〉
この世界の主を超える力を持とうとすれば、この世界の管理するモノ達全員がそれを阻止しにやってくる。魔神、天使、精霊、古代竜…etc.それらを、復讐心で倒しきった。
一一あァ、こノ世の全テがメんどくサい…
自然界にいれば、すぐに管理者に見つかる。人間に混ざれば、人間の柵に縛られる。でも、強くなるまでは《彼女》に見つかる訳には行かない。
ふと、私は“リア”を造った時のことを思い出した。
悪魔も天使も堕ちた私を処分しに来た。世界を守るために、仕事として淡々と。あるいは世界を背負った顔で、正義として。
でも精霊王たちは違った。哀しそうに微笑んで死んだ。だから身体は残してやることにした。
そしてできたのが、精霊王たちの身体を刻みはぎ合わせて造った、自分と同じように歪な人形。
一一へぇ、キミ、意思があるんだ…
一一名前、無いの?そりゃそうか…じゃあなんかつけよっか。
一一って、なんか、性格濃くね?え、風の精霊王の頭使ったから、それが影響?ふぅん…そっか。確か、風の精霊王の名前って、“カイト”だっけ?
一一んー、せっかくだし、名前、交換しよう。丁度いい目くらましにもなるかもしれないし、どっちにしろ“2番目の”私の名前だって付けなきゃいけないよね。
一一それじゃ、キミは今日から“リア”。私は君の主の“カイト”。世界の終わりまでよろしくね。
一一って、カイトって男名?ま、いっか。ちょっと男らしくしてみるのも面白いかも。それこそきっと、あの女にだって見つけられなくなるよね。
ああ、ようやく…
「……あんたを殺せるなんて、ほんと、最っ高♪ ねぇ、たくさん愉しませてよね?」
双頭竜の名前の意味は『一人はすべての為,すべては一人の為』。わりといいドラゴンだった。倒しちゃったけど。




