第三十四話
三年ほど失踪してました。すみません
「皆で、楽しく“パーティ”をしましょう」
女神の言葉に、勇者たちは一瞬呆気に取られたような顔をしてから、パッと嬉しそうな顔をした。
「女神様の、パーティだって!」
「マジかよ…すげぇ!!」
「どんなことやるんだろ?」
ワクワクとしながらひそひそ囁く勇者たちを眺めながら、騎士たちはもぞもぞと居心地悪そうに動いた。
「これ、俺らがいていいのかな…」
「なんか、申し訳ないな…」
俺はというと。
ポケットに両手を突っ込んで、静かにタイミングを待っていた。
「ふふ…それじゃあ、楽しい“パーティ”の開幕っ!」
不意に、女神は子供っぽい仕草で両手を広げて叫んだ。と、同時に、勇者と騎士たちの体を氷の槍が貫く。
「「「ッ!!!?」」」
声にならない叫びをあげて、勇者たちが崩れ落ちる。さすがの騎士たちは叫びこそしなかったが、ガクッと膝をついた。
「あははははっ……ははははははははは!」
《彼女》は可笑しくて仕方がない、とでも言うかのように笑い転げた。
って、いつの間にやら出口がなくなってやがる。閉じ込められたのか。
「愚かしいゆーしゃ!まさか、本当に元の世界に妾が帰してやるとでも?ばぁか、あはは、笑っちゃうね!己の腹に槍が刺さってるのを見た時の顔ったら!あはははっ当分これで笑って暮らせちゃうわ!」
…女神の本性が現れたらしい。夢で見た時よりもより一層醜く見える。
「ねぇ、あんたたちが倒したまおー、誰が創ったか分かる?だぁれがこの世界を侵略するように言ったか、わかるぅ?」
《彼女》は、イインチョーの髪を掴んでぐいっと持ち上げ、顔を覗き込んで嗤った。
「それはね、わ・ら・わ、なの。うふふ、つまり、全部妾の手のひらの上で踊らされてたに過ぎなかったってこと。」
《彼女》は、イインチョーを後に投げ捨て、近くにいた別の勇者の頭を踏みつけた。
「ぜぇ〜んぶ、茶番だったのよ。本当に人が死ぬ、ただの遊びでしかないのよ。あははっ、あんなのに命かけて全力で生き汚く足掻く姿って、ホント、無様で惨めな虫けらよね!」
クスッと笑いをこぼすと、両手に槍を持って、《彼女》は近くの勇者たちを順繰りに串刺しにしていく。
「もちろん、最期まで遊びには参加してもらうからね?うふ、大丈夫、妾は急所を外すのが得意だからね…心が粉々に砕けて壊れるまで、たっっっぷり遊んであげるね…」
はぁ…
ったく。
俺は、こほんと咳払いした。
「………あら。」
俺に気づいた《彼女》はゆっくりと振り返った。
「随分と頑丈なのか、よっぽど素早かったのか。あの槍を受けても立ってられるなんて、なかなかの実力持ちなのね。褒めてやるわ」
…はぁ。
「…言っとくが、あの氷の棘、掠りもしなかったぞ?まさか、当てる気あったのか?」
俺は、心底驚いたかのように言って、挑発した。
「…下賎のモノが。調子に乗りすぎれば痛い目をみるよ」
《彼女》が、瞳の奥に怒りを燃え上がらせ、俺を睨みつけた。
「…え、マジ?もしかしてコンプレックスだったのか、攻撃速度の遅さ。そりゃ悪ぃことしたな。コンプレックスえぐっちまったか?」
「いやいや何挑発してるんですか団長っ!ふざけてられる事態じゃないんですよ!」
副官が焦ったように声をあげた。
悪ぃな、これは俺が個人的にやりたかったことなんだ。
あ、でもその前に。
「よっ、と」
俺は、副官に向かって一通の手紙を投げた。手紙は勢い余って、副官の首のすぐ横に刺さった。…あれ?紙ってなげれば石に刺さるもんだっけ?
「それ、王太子用。とりあえず渡しとけ」
「いやいや王太子すぐそこにいるじゃないですか!なんで一旦私に投げたんですか!?」
いや、近かったし。
「ったく、この団長ときたら…こんな時に一体何の手紙ですか……って、これ!?」
「どうしたんだ、副官殿……ってこれは、まさか!?」
「「辞表!!?」」
俺は2人を横目にチロッと舌を出した。
「まぁ、そのうち渡さねーとって思ってたし?」
「そ、そうなんですか!?っていうかなんで今!?」
「私は受理しないぞ!」
「え………」
それは困る。気分的に。
「まぁ、それは気持ちの持ちようってだけだけどな。」
やることは変わらないし。つまり…
「しばらく『第九騎士団長』の地位、放棄するから」
「「なんで今!?」」
俺は、後ろでごちゃごちゃ言ってる2人を放置して、ポイっと手元の双剣を放り投げた。速さはおよそ2万km/sってところか?光速にするにはこれの15倍で投げればいいのか。なるほど。
双剣は、《彼女》の金髪を切り裂いて、さらに1万キロ離れた氷山を塵にして止まったらしい。いやー、物騒な剣だな(泳ぎ目)。
あ、《彼女》が激怒してる。肩を脱臼してるが、自力で戻せるようだ。便利だなー
…1番の顎が外れてる。お前、それネタか?ネタなのか?
思わず笑いそうになって、くいっと口角を片方上げると、女神だった女はぷるぷると震えながら言った。
「…なんっなのよその馬鹿力!く、いいわ、本気で相手したげるから!この『邪神』でありこの世界の創造主様直々に、ね!…私の髪の恨み、たっっっっぷりと晴らしてあげるっ!」
「………神だけに?」
《彼女》は無言で氷の槍を振りかざした。
キチンと完結します。あと数話かかりますが。




