第三十三話
「「「……!」」」
突然現れた女神に、勇者・騎士たちは驚きに目を見開いて、それから慌ててひれ伏した。幾人かは頬がほんのり赤くなっている。
〈男が頬を染めルとか、キモくね?〉
リアよ、それは思っても口に出すもんじゃない。
〈口には出しテない〉
…他人の心ん中でくだらないことを言ってるリアは置いておいて、まぁつまり何が起きてるかというと、皆が女神の美しさに驚いてるというだけの話。
〈ホント、無駄に顔だケはいイよな〉
…リアがうるさい上に聞き取りづらい。まぁいいやそんなこと。
「…勇者たちよ。よくぞ世界に影をもたらす魔王を倒しました。これで、この世界にも平和が戻るでしょう……」
女神が静かに話し始めた。夢の中で見た邪神と同一人(神?)物とはとても思えないような、慈愛に満ちた微笑みを浮かべている。
「お、おいっ!頭を下げろっ、本物の女神様だ!」
遅まきながら、王太子が小声で俺の頭を下げさせようとしてきた。無理だけどね。
「いいからいいから。」
俺に、アレに下げる頭などないからな。
「あ、あのっ!女神様、お願いがあるのですが…」
イインチョーが代表して口を開いた。女神は、緊張しているイインチョーを慈愛のこもった眼差しで見つめ、微笑んだ。
「何かしら?申してみなさい」
「あ、えと、僕らには5年ほど前、3人の仲間が行方不明になってしまったのですが…なるべく一緒に日本に帰りたいので、差し支えなければ、探して頂けませんか?」
おお。イインチョー、頑張った。おつかれー。冷や汗ダラダラじゃねーかキモッ
〈…カイトが普通に失礼な件について。〉
わー、リアがいつになく滑らかに話せてる。すげー
〈……〉
「…ふむ、まぁよいでしょう。あなたたちはよく頑張りましたし…探してみましょう」
どこか上から目線な口調の女神は、そう言うと目を閉じた。いわゆる『探査』を使用しているのだろう。世界単位で。
………と、一般的には考えるだろうが、俺は絶対何もしてないと確信している。何しろ、彼女はその3人の行方をほぼ正確に知っているのだから。
「…あのな、女神様は偉いから、上から目線は当然だぞ?」
ボソッと王太子に注意された。
ば、バレてらー……
つか、それ、口に出してて平気なのか王太子。まぁ、不敬罪の塊みたいなやつは俺がいるしな…あんま目立たないだろうけど。
不意に女神は目を開き、そして悲しげに目を伏せた。
「…残念ながら、3人は、既に……亡くなっています。」
ハッと息を呑む音と、諦めたようなため息、小さな嗚咽が勇者たちの中から聞こえてきた。泣いているのは、おそらく死んだ勇者の親友だろう。諦めたのは、5年も見つからないことから死んでいることを想定していたやつら。
「お、おしえて頂き……ありがとう、ございます」
イインチョーが鼻声になっている。感受性豊かなタイプだったらしい。知らなかったなー。どうでもいいけど。
「他に何かありますか?」
女神が気遣うような言葉を口にする。
〈100%社交辞令だろ〉
リアに同感。
「…いえ。大丈夫、です。」
イインチョーがイインチョーらしく1拍ほかの生徒らの反応を見てから返事をする。万年イインチョーのあだ名は伊達ではない。
「…わかりました。それでは、わたくしから、試練を無事に乗り越えたあなた達への褒美を与えましょう。」
その言葉に、待ってましたとばかりに生徒たちは、期待と好奇心でいっぱいの顔を上げた。
「それと、後にいる方々もいらっしゃい。皆で、楽しく“パーティ”をしましょう」
女神はさも愉しげにわらった。
カイトは絶対にナレーター向きじゃない(確信)。




