第三十一話
「しかし…困ったな」
俺は前髪をかきあげた。いや、うん。ほんと困ってる。
〈魔王軍と勇者共の意気投合は台本から外れスぎだろ…〉
影の中から、リアの困ったような、呆れたような言葉が聞こえてきた。同感。まぁ、一心同体だからそりゃそうなんだけが…
いや、今はそれどころではなく。
俺は一斉にツッコミを入れてきた勇者と魔王軍を見回した。せっかく治癒の魔石を使って全員を全回復させたっていうのに、まるで点で戦おうとしない仇敵同士。いや、お互い別に仇ではないのか?仇代表なだけで。
「お前らさ、戦わねーつもりならどうすんの?」
とりあえず、単刀直入に聞いてみる。
「どうするって…」
「うぅーん…」
「どうするか?」
「でも、なんかもうぶっちゃけ戦う気力失せちまったしな…」
「同感」
「俺も」
「それな」
「我も」
「「我らは魔王様と同感」」
「じゃあ確認するが、勇者、お前は何のために戦ってたんだ?」
俺は、歯切れの悪い勇者共を鋭く見つめた。
「そ、それは…」
「世界を救う、ため…?」
そこで疑問形になっちゃまずいだろ勇者。
「だ、だって、神殿の人に言われたし…」
「女神様にも頼まれてるし…」
「そ、そうだ、魔王は魔物を生み出して人間を襲ってくるからって…」
「へーえ。頼まれたから?人類の危機だから?それですぐに命をかけられるとは、随分と世間知らずで心優しー能天気なお人好し集団なんだな、勇者ってさ」
俺がわざと挑発するように言うと、勇者たちはガバッと顔を上げてこちらを睨みつけ、一斉に反論しだした。
「誰がやりたくて勇者なんか…っ」
「俺たちは攫われて、選択肢なんてなかったんだ!」
「だいたい、お前らが勝手に呼んでおいてなんだよっ…!」
「今まで平和な世界で暮らしていたのに、突然知らない世界に召喚され、知らない世界を救えだのほざきやがって…!」
「私たちがやりたくてこんな殺しをやってるとおもう!?」
「帰りたくても帰れない、帰るためには魔王を殺せって女神にいわれて…!」
「私たちを召喚するための魔力があるなら魔王さっさとたおしちゃってよっ…!」
「無責任に人を呼び出すんじゃねーよ!」
ふむふむ。なかなか不満が溜まっていたようだ。俺は、殺気立つ勇者を見て、心の中で嗤った。
「で、お前らは何のためにこの魔王城まで来たんだ?」
俺の言葉で、勇者たちはハッとしたように顔を見合わせた。
「そっか…」
「私たちが帰るためには、この魔王を殺さなきゃいけないんだ…」
「真面目な魔王には申し訳ないけど…」
「「魔王っ、俺たち(私たち)の平和な日常のため、お命頂戴する!」」
…あれ?勇者ってこんなキャラだったか?もしかして俺の思い違い?




