閑話 第九騎士団の副官
どうもこんにちは。カイト団長のもと、副官やってます。名前?そんなことはどうでもよろしい。カイト団長に覚えられている通りで結構。団長が判断できればよいのです。
…一年前と少し前、突然現れたカイト様はとんでもなく強い鬼畜でした。
僕は元々、強い方ではありません。団長がカイト様に替わるまで、恥ずかしながら、第九騎士団の中でよくいじめられていました。
弱肉強食の世界です。仕方ありません。しかし、もちろんそれで満足出来ていたのかと言われればそんなことはありません。
いつか見返してやろうと思いつつも、日々自分の食料を奪われないように、より暴力を振るわれないように生きていくことで精一杯でした。
…そんなある日、カイト様が現れたのです。カイト様は、荒れ果てた騎士団を立て直し、鍛え、そして僕を地獄の底から救ってくれました。
第九騎士団の中でも落ちこぼれだった僕を、なぜ副官に引き立ててくれたのかとカイト様に聞くと、
「んー、お前が1番書類作るのが上手そうだったからな。俺の代わりにやってくれるかと。」
面倒くさがりで、鬼畜で、でも本当は心優しいカイト様らしい答えでした。
それからというもの、私はカイト様の副官として、伊達メガネをかけつつ、見た目だけでもキリッとして、あの人にふさわしい副官となれるように日々努力しているのです。
…しかし、伊達にあの人の副官を一年以上務めていないとはいえ、驚くことはあります。
例えば、突然団長が死にかけの勇者にき、キスをした時とか。
一瞬、団長はそっち系の趣味があるのかと思ってしまいました。毒を受けた身体で、もう長くは持たないとわかっている時でしたから、せめて私の意識が無くなっていれば良かったのに、と思ってしまいました。
私の見た目が、そこまで悪くないということも城の女性たちの反応で分かっていましたから、子供っぽい勇者の方にキスをしたことにもなんだか複雑な気持ちになりました。い、いや、私はノーマルですけど。団長が綺麗な見た目をしていると思うことは、男女共通意識ですからっ!
…まぁ、私の認識が間違いであったとはすぐにわかりましたけど。
カイト様は、毒素を口から取り除いてくださっていたのです。心優しいカイト様の行動に、変な想像をしてしまうなんて、失礼極まりないことです。深く反省しました。
…もちろん、私も取り除いていただきました。少し恥ずかしかったのですが、平然と行うカイト様は、さすが場慣れしていらっしゃるのでしょう。…少し複雑な気持ちになったのは、気のせいです。
全員に処置を終え、野営地に着くと、カイト様はテントに入ってしまわれました。あれほどの毒を体内に取り込んだのですから、当然でしょう。まだ生きていることに驚きです。こういう時、本当にカイト様の人外さに感謝します。
…それにしても、カイト様は“処置”をしても全く顔色を変えませんでした……女性の勇者辺りが勘違いしそうになっているというのに…皆の顔が真っ赤になっている理由に、カイト様は全く気づいていないようでした。
だいたい、カイト様は鈍感すぎるのです。敵意には異常なまでに素早く反応するというのに、好意には疎すぎます。城の女性たちが頬を染めてうっとりと見つめていても全く理由がわかっていないのです。
カイト様は昔、冒険者としてダンジョンを攻略していたと聞いていますが…あまり人と触れ合ったことがないのかもしれません。人の名前も顔も覚えられないようですし。
それに、カイト様はご自身の外見についてもわかっていないようなのです。スラリとした、長身で、僅かにとんがった耳と、長い綺麗な茶髪の髪。僅かに見える顔だけでも十分に顔の美しさが滲み出ていますし、顔の半分を覆う仮面もまた、ミステリアスな雰囲気を作り出し、よりいっそうカイト様を美しく演出しています。
姿をほとんど隠しているこの状態ですら男の私も魅了しかけるほどの美しさだというのに、これで仮面を外したら一体どれほどの人の魂が口からとびだしていくことか。




