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第二十三話

 

「「つ、疲れた…」」

「…奇遇だな。俺もだ」


 野営地(予定)までは思っていた以上に遠かった。いや、距離的には大したことはなかったんだが…


「まさか、いくら毒を食らったからって、9割方取り除いてやったし日頃訓練を受けているにも関わらず牛の歩みになるとはな」

「「……」」

「…団長は、その、なんとも思われないのですか?」

「何が?」

「…えと、その」


 何か聞きかけた7番が目を白黒させて真っ赤になって口ごもった。言い難いなら最初から聞かなければいいのに。


 ま、それは置いといて。


「この状態じゃ、テントは張れねぇだろうな…」


 歩くのもやっとな生まれたての小鹿(ゆうしゃと騎士たち)にテントを張らせて一人傍観するほど、俺も鬼畜ではない。


「この際、仕方ないか…。リア、よろしく」


 なるべく人工精霊(リア)のことは隠しておきたいが、そうも言っていられない。毒を食らわば皿まで、リアの存在も出しちまおう。便利だし。


 〈りょーかい、御主人サマ〉


 リアは久しぶりに外に出られてノリノリだ。あんまり調子に乗らないでほしいが…


 〈オ前ら、テント張って支度しろッ〉


 …時すでに遅し、調子に乗ったリアを見てリアの配下の精霊共も調子に乗り始めた。


 次々と地面から黒い手が伸びてきて、テントを組み立て、ついでに料理をし、どこからか長テーブルを出し、テーブルクロスを引き、料理を並べ、花を飾り、勇者や騎士たちを座らせ、給仕まで始めた。


 …やりすぎだろ。


 〈ワタシもここまで命じてないゾ〉


 一応、こっちの方が目上なんだけどな…。俺をガン無視してさっさと晩餐始める度胸とかすごいよね、いや俺食わないけどさ。


「だ、団長…これは、一体?」


 騎士の1人が口をぱくぱくさせながら聞いてきた。金魚かよ。


「この場合、お前の『これ』は何だ?リアのこと?それともこの状況?」

「両方でお願いします。」


 副官が金魚の真似をしている部下の代わりに言った。


「リアは俺に仕える精霊で、リアの部下の精霊が今お前らの給仕をしている」

「…!?え、団長、魔法使えないはずでは?」

「そうだな」

「魔法使えなければ精霊を使役できないはずですよね!?しかもほかの精霊を従える、少なくとも中級以上の精霊となると特に…っ」

「まぁ、そうだな」

「じゃあ何故団長は使役出来てるんですか!?」

 〈使役じゃないからな。ワタシが望んでやってるんだ。カイトはワタシより強いし。〉

「……!?そんなことがあるなんて%〇#*◇¥☆…」


 あ、部下が壊れた。


「…好戦的な精霊さんですね」


 副官のそれはフォローのつもりだろうか。


「ふぅ…。まぁとにかくリアは…あー、めんどくせ。一言で言うなら便利。戦闘力はお前ら以上だから下手に手出しすんなよ?俺はもう寝るから、わかんねぇ事あったらリアに聞け。それじゃ、おやすみ」


 今日はさっさと寝よう。めんどい。


 〈…って、ちょ、おいっ!投げるなよっ ワタシにっ〉


 いいじゃん。あー、便利だなー


 〈利用法雑だな!てか棒読みすごいな!〉


 お、なんか今日はやけに流暢じゃん、リア。すごいすごい。


 〈ヒトの話聞け!それから、明らかにこっちに向かって言ってることは口に出せよこのめんどくさがり屋っ あと馬鹿にしてるだろっ〉


 知ってる知ってる。あと、馬鹿にしてないよー?ちょっと毒でヤバいかもってだけで。テンションがイカれてるんじゃない?


 〈…寝ろ〉


 もちろん、そのつもりだから。


「…リア様はテレパシーを使えるのですか?先程から、カイト団長との会話(?)を完全にこなしているように見られたのですが…」


 そういや、どうでもいいけど『リア』って名前、『リアル』を省略してるみたいだよなー。


 〈…確かに1種のテレパシーかもな。でも、一般的なテレパシーは使えない。ワタシは、カイトが頭に浮かべた言葉がなんとなくわかるだけだから…〉


 もしかして、リアが獣化すれば、リアじゅ…


 〈…に、なるかっ!安心しろ、獣化しないから!〉


 最後まで考えさせろし。あ、でも普通にリアが日々充実して過ごせば…ぷっ


 〈変なこと考えてないでもう寝て!お願いだから!〉


 はいはい。


「…団長?」


 あー、もうリアが叫ぶから副官(寝てる子)訝しんでる(起きちまった)じゃねぇか。


「明日は通常通りの訓練をしてろ。多分、ここから2、3日動かねぇから。あと、俺のテントにはリア以外入れるな」


 俺はそれだけ言って、テントの中に入っていった。

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