第十六話
騎士は何かと忙しい。
街で困った人を見つけて助ける。夜中には突然起こされて魔物狩り。昼間も魔物狩り。犯罪者は見つけ次第捕まえる。探しにも行くし。だるい。
騎士団長も忙しい。野郎共の世話は意外と大変だ。
あーあ、なんでこの仕事受けたんだろう、俺。
「…団長、いつもに増して無気力っぷりだよな」
「夜中起こされて不機嫌なんじゃないか?」
「まぁ、寝ているところを起こされて嬉しくは無いよな…」
「仕事辞めるとか言い出さないかな…」
諸君。俺の聴力舐めすぎじゃないか?
あと8番。喧嘩売ってるのか?
とりあえず。
俺は鉄槌を振りかざした。
はぁ…
勇者に飽きた…
「仕事は飽きたからといってやめられませんよ」
「だってアイツら、いつまで居座る気なんだよ…」
勇者が来てから3ヶ月が経つ。その間、アルザナからの連絡は一切ない。
「めんどくせぇ。早く魔王倒せよ…」
「…」
副官は沈黙する。現在、勇者たちは件のワイバーンの討伐に挑戦中。3ヶ月前はコボルトやゴブリンに善戦していたのだから、第九騎士団の中で急成長したことがわかる。が…
「女神の力つきで、ワイバーンレベルではかなり難しいかと。」
そう、元のレベルが低すぎて話にならない。クソっ
あー、世の中そう簡単には上手くいかねーもんだな…
「はぁ…もういっそ、無理やり倒させようかな…」
「!?」
5年も待ったのに、さらに3ヶ月。しかも、あの勇者たちのアホさを目の前にしながら。とてもじゃないがもう我慢できそうにない。
「うん、よしそうしよう。それがいい」
「はい!?どの辺がいいんですかそれ!!」
副官が慌てたようにツッコミを入れてきた。
「んー、第九騎士団に魔王を瀕死まで追い詰めさせて、勇者サマにトドメを刺せさせればいいかなー、っと」
「どうしてそうなったんですか!!いくら強いとはいえ、第九騎士団と魔王の差は歴然、兵の無駄打ちです!」
うーん…この世界の人って、勇者以外の攻撃は魔王に届かないって思ってる節あるよなー
「大丈夫、お前らの方が勇者より100倍は希望がある」
ニッコリ笑って俺がそう言えば、副官は絶句して固まった。爆笑。
「おい、勇者どもー、明日か明後日遠出するから適当に荷物用意しとけー」
「き、急ですね…」
隣で副官が白目を向こうが知ったことない。
「遠出って、どこですか?」
女子生徒Aが恐る恐る聞いてきた。俺がニッコリ笑うと、女子生徒Aが何故か赤くなった。
「もちろん、魔物の巣窟だよ♪」
あ、キャラに合わないことをしちまった。ちょっと、テンションが上がってな…
騎士たちも、生徒たちも、ある者は悟ったような顔をし、ある者は白目を剥き、ある者は明後日の方向を見、ある者は観念したように目を閉じた。
失礼な。まるで死刑宣告をしたみたいじゃないか。
にしても、この口調でも誰も驚かないな。まさか、いつぞやの思考とか、あれとかあの時とか全部バレてた?…まっさかね、ハハッ