第十三話
地味にグロ注意
王太子が馬に乗って駆けると、ちょっと王子っぽくなる。
「よっ、王子!」
「…突然どうした」
まぁ、普通そうなるか。
王子様と遠乗り。普通、乙女なら誰でも憧れる系ルートだろう。たぶん。
実は今、俺はワクワクしている。もちろん、それは…
「ギシャアアアアアアア」
魔物が出るから、だけどな。
俺は、軽く右手で剣を引き抜いて腕を振る。ボトリ、とゴブリンの首が落ちる。サッと剣を振って血を拭う。仮面越しの血は緑。仮面を外せば紅い血がみえるだろうが、手を顔に近づけただけでやめた。ここでとるのはまずい。王太子もいるしな。
代わりにペロッと指に付いた血を舐めとると、王太子にドン引きされた。ひでぇ。
今度は、ナタを持ってやってきたゴブリンナイトの腹に剣を差し込んでから腕を振り、死体を次のゴブリンにぶつける。死体ゴブリンはぐしゃっと潰れて、内臓が飛び散った。僅かに息を吸い込んでみたが、ほとんど血の匂いを感じない。いや、あることは分かるが特に何の関心も抱かない。ふむ。よし。仮面の性能は間違いなさそうだ。成功して何より。
やや青ざめた顔で王太子が俺に言った。
「なんだか、お前と来ると余計に血を見そうだ」
失敬な。今日だけ、今日だけ。今日だってもうしないし。たぶん。
でも念の為、口鎧もつけた方が良さそうだな。暴走すると困るし。
俺は、腰につけた鞄から銀の口鎧を出して、ガチャリと仮面に合わせて嵌めた。この口鎧、口鎧と呼んではいるが、これを付けると顎を開けなくなるし、呼吸の穴もなく常人は呼吸困難になるので、たぶん口鎧とは違う何かだろうと思う。仮面とセットになってるしな。ちなみに、これを着けると俺の怪しさがさらに上昇する。
さてさて。次の獲物はなんだろう?
あ、穴みーっけ。
チラッと王太子の方を見てから穴の方を剣で指す。
「…いや、今回はダンジョンに潜る気はないんだが」
じーっと、王太子を仮面で見つめる。
「…わーかったわかった!わかったからこっち見るな!いいか、日暮れまでには帰るし、服を汚すわけにもいかないからお前1人で狩れよ?」
とうとう王太子が折れた。よっしゃ。
ま、王太子を守るのは朝飯前だし?
…その日の夕方頃、第九騎士団から新たなダンジョンの発見と速やかなる攻略の報告が届いた。何気に仕事をする俺。まぁ、書類作成は副官がやったけどな?