第十話
シリアス?主人公の夜。短い
ガチャン
ドアが閉まる。と、同時にオートロックで鍵がかかる。
リヨル王国の騎士団には寮が用意されている。俺は第九騎士団の寮にいるが、団長室の仮眠部屋で寝ることが多い。え?女子力?女子力はあっても女子力はない。知るかそんなもん。
鍵のかかった部屋で、仮面を取りコートを脱ぐ。何となく重いから1日に1度は脱ぎたくなる。サラシもね。
夜の、ほんの僅かな時間だけ俺は…私にもどる。月は、好きだ。ことに…
「蒼い、月は」
呟いてからハッとする。出た声はいつもと変わらなくてホッとした。
だがまぁ、弱気になるのはよくない。明日の訓練メニューを考えねば。走り込みと魔剣は試したし、兵と組手でもさせるか。
悲鳴をあげる勇者を想像しつつ、ニヤリと嗤って仮面とサラシをつけて横になる。すぐに起きれるようにしておいて損は無い。多少窮屈でも、まぁなんとかなる。
〈…ほんとオマエ、性格歪んでルよな〉
俺の影がゆらりと立ち上がって言った。
影はゆらゆらと、人の形をとろうとし…角の生えた子供の姿に落ち着く。ただし、若干宙に浮いている上に真っ黒な半透明。
「うるさいよ、リア。お前には言われたくないし。」
俺はチラッとその姿を見つつ言った。
「その姿見られないように気をつけろよ?」
〈分かってる。そんなヘマはしないからな〉
〈それより、いいのか?勇者たちのこと…〉
「いいのかって、何が?」
〈勇者たち、探してるんだろ?36人目のくらすめいと。場所、教えてやれば?せっかく会えたんだしさ〉
「いいや、まだその時じゃねーし、お楽しみはとっておく主義。」
〈…そうか〉
クスリとリアは嗤って、また影に戻っていく。
〈その時が、楽しみダな〉
「ん、お前ももう少し言葉が流暢に話せるように頑張れよ?」
〈あァ、もチろん。ま、普段は話せルからいいト思うんだケどナ…〉
まだまだ。まだ早い。
┈┈┈┈┈┈復讐の時は、キっと… かな、ラず…