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親友が女になっちゃったので全力で愛でたいですが。  作者: 落単 竜念
現実は甘くない。かといって理想も甘いわけじゃないらしい。
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かわいいは作れる

今までの俺たちなら、真面目な会話を挟んだとしても、その前後で俺たちの空気感が変わることはなかった。


真面目な話も、バカな話も、祥吾とならきっと全部楽しいから。


だからこそ、俺はコイツとずっと友達でいたいと思ってたし、それは今も変わらない。


けれど、今回は流石に事情が違う。


祥吾の人生が本気でかかっているような話の直後で、そう簡単に割り切れるわけがない。


どうにかして、この重い空気を払拭しないと。


「そういえば学校に行くにあたってさー」


「ん?」


なんとか空気を変えようと、俺から話題を切り出した丁度そのタイミングで、ダンッダンッっと階段を降りてくる足音が聞こえてくる。


母親が洗濯物を干し終わって戻ってきたらしい。


くっそー、もうちょっと前に来てほしかったな。


こういう冷静に何度も考えなければいけない話題こそ母親の力を借りたいところなんだが……


あんまり友達云々の話を繰り返すのも個人的には気が引ける。



戻ってきた母親も少し重い空気を感じ取ったのか、慣れた手つきで二人分のお茶を用意しながら、

俺たちが全く考えてなかった視点からアドバイスをくれた。


「あんまりいい話はしてなかったみたいだけど……こういう時は外に出て気分転換したらどう?


家の中にずっといたら、考え方まで窮屈になっちゃうから。


はい、お茶飲んで一息つきなさいな、二人とも」


さっきの謎テンションはどこへやら、いつもと変わらない母親がそこにいてくれた。


確かにそうかもしれない。


言われてみればさっきまでの俺たちは何とも言えない閉塞感に包まれていたような気もする。


これじゃあ良いアイデアなんて出てくるわけもない。


「祥吾君、おばさんもあなたの味方だからね。月並みな言葉しか言えないけど、頑張って!


困ったらウチの息子を使ってもいいから」


流石だな、こういう時は年の功が活きる。


俺が誘うよりもよっぽど効果的だろう。何より説得力が段違いだし。


やっぱり、俺の母親を頼りにしたのは大正解だったようだ。


「確かにそうですね。んじゃ、一回出かけようか」


「しゃーねえ、行くか。つーわけでいってきます」


「はーい、いってらっしゃい、二人とも気を付けてねー」


母親のアドバイスに押されて、俺たちは家を出ることにした。


いつのまにかボサッとしていたはずの祥吾の寝癖が直っていたことで、結構な時間が経っていたんだな……。と実感する。


そうか、女性は髪の毛のケアもしなくちゃいけないのか……。辛そう。


そもそも寝癖直してから来いよ。



とはいえまだ12時だ、今からならどこにでも行けるだろう。


「外出るっつってもなぁ……。


どこ行く?俺はどこでもいいけど」


と言い終えてから気づく。


あ、これ『俺もどこでもいいけど―……』ってなって面倒くさくなるやつじゃん……


しまったか?


と思ったが流石は祥吾、いつものように俺の予想の斜め上を行っていた。




「じゃあアウトレットモール」


は????


「は??????    ????」


「いや、だから、アウトレットモール」


ア ウ ト レ ッ ト モ ー ル 。


ショッピングモールではない、アウトレットモールである。


何がスゴイって即答できたところだよな、絶対前々からこの答え用意してただろお前?


「一応聞くが、なんで?」


「服買いたい。かといって街中で友達とエンカしたらお前が面倒だろ?よってアウトレットモール」


自信満々に威張って答えてくる祥吾。


本人的には威張ってるつもりなのだろうが、女になっちゃった今ではもうその仕草はπを強調しているようにしか見えなくてちょっと眼福ですありがとうございます。


うーん、筋道は全く間違ってないように聞こえるんだけどなー、何がおかしいんだろうなー。


いや待て、もう一度考え直してみよう。どこが間違っているのかが分かるかもしれない。


服を買いたいからアウトレットモール→服を買う場所だからまあ間違いではない。


街中で友達とエンカしたら面倒だからアウトレットモール→郊外にあるので、99%友達と出会うことはないだろう。つまりはまあ、間違いではない。


うーん、何故かどこもおかしくないように見えてしまう。


何故だ?何が違うんだろう?


日本語の計算ミスかな?


というか今気づいたわ、


「基本的に制服着るから服そんなにいらねーだろお前」


「あ、バレた?まあ隠してないけど。てか街中で友達と会ったらどうするの?」


「バレなくね?もし見つかっても


『いやいや、見間違いだよなー。義明がかわいい女子と一緒に歩けるわけないもんなー』


つってスルーするでしょ」


「確かに。まあ俺がお前の立場でもそうなるんだけど。」


「おお、すげーブーメランじゃん」


言ってて悲しくなってきた。


しかも自虐ネタなのに一瞬自分でも認めちゃったよどうしてくれるんだ。



悲しげな俺たちの心情とは裏腹に、春を目前に控えた太陽は雲一つない青空で堂々とその陽を輝かせていた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


中心街までは自転車で行ってもいいのだけれど、祥吾の体型の変化に考慮して、今日はバスで行くことにした。


バスの停留所まで歩いて、中心街行きのバスを待ちながら、他の話題を探す。


停留所には俺たち2人しかいないし、こんな田舎道でまさか聞き耳を立ててくる奴もいないだろう。


「そういやさー、学校どうすんの?


まさか女になりましたーって馬鹿正直に伝えるわけにもいかないだろ?」


「大丈夫、その辺はきっちり考えてる。親が」


他人任せかい。


「まあ男の俺を転校させて、女の俺を転入させるはずだよ。


書類とかは俺が書くとこねーし、何故転校、転入するかの言い訳を必死に考えてるんじゃないの?」


「ふーん、お前は考えなくていいのか?あと、編入試験とかは?」


「そりゃあ、まあ、被害者だし……その辺は、ね? 


編入試験って、実質ウチの授業の確認テストやろ?へーきへーき、普通にやれば大丈夫でしょ」


「死亡フラグやめろ、流石に笑えんぞ」


意地の悪い笑みを浮かべやがって。


被害者でもあると同時に当事者なんだからその辺の話題も考えないといけないに決まってるが、面倒くさいから親に押し付けたのだろう。


親の方も親でそう言われたら断れないだろうし、なかなか姑息なことを思いつくもんだ。


へー、じゃあ顔も中身も知っている幼馴染の転校生がウチに来ることになるんか。


嬉しくねぇ……。いや、嬉しいけども。


ロマンの欠片もねーな。


あ、そうそう、そのことについて、一つだけ注意しておかないと。


「転入の時に、キチンと俺と同じクラスになるように言えよ?じゃないと……」


「お?じゃないと、どうなんだい?」


ちょっとだけ身を乗り出すようにして俺に迫ってくる。


近くで見る祥吾の肌はきめ細やかで、女の子の白い肌に思わず視線が止まってしまった。


そんなの、そんなの……決まってる。


学校でもずっとお前と一緒にいたいからだ。


もしお前が、俺のいない時に他の男に――


「お前が下ネタぶちまけた時のフォロー役がいないとお前の高校生活詰むやろ」


「えー?それってそんなに大ごとか?」


「大ごとだろ、女子でボッチになってみろ、人権消えるぞ!?」


分かってない。分かってないぞ、コイツ……っ!!


女子の縄張り争いは苛烈だ、一歩間違えると死に至るんだぞ……!!


と俺が無駄に頭に血を上らせている中、


「え?今までと変わんないじゃん。むしろ人扱いされるからランクアップだろ」


コイツは平常運転だった。



「確かにーーってそうじゃねえ!!」


あまりに自然体な返事過ぎて一瞬納得しかけたじゃねーか!


「男時代の汚名を捨てられる大チャンスなんだぞ、今度こそまともな高校生活送りたいとか思わねえのか!?」


「うん、思わない☆」


「でしょうねぇ!!!」


そんなところで満面の笑みの無駄遣いすんな。


無駄にかわいいから可愛さ余って憎さ百倍だわ。実際1倍もないけど。


「違う、違うよ!俺やっぱり他のクラスに行った方がいいじゃん!」


と思いきや、突然、祥吾がいつものようにとんちんかんな事を言い始めた。


え、なんでだよ、俺の話聞いてたのか?



「そしたら事あるごとにお前がこっちに来るじゃん?


そして俺の言動を聞いて(お前、何やってんだあああ)って心の中で叫んで発狂するじゃん?


それを見てる俺が楽しいじゃん?



ほらー、想像しただけで楽しい、あっはっは」


そう言った祥吾の意地汚い笑い顔は、なんとなく男の時の面影に似ているような気がした。


無性に殴りたくなってしまうところも綺麗に再現されている。


そんなとこも再現しなくていいんだよ!!


というかさっきの意見訂正します、本当は可愛さ余って憎さ70倍くらいはあります。嘘ついてごめんなさい。



「あのさぁ……。俺の心をそんなに弄んで楽しいか?」


「うん☆彡」


「なんでそんなに無邪気な笑顔を浮かべられるんだい?」


「楽しいから!」


「なんで君は僕の友達なんだい?」


「にひひー、あー楽しい楽しい」


コイツがにひひーと笑う時は、本当に機嫌がいい証拠だ。へぇ、よかったね。


女の子からそんな風に無邪気に笑われると、本来なら手放しに喜べるはずなのに、それを絶対に許してくれないあたりが最高にコイツらしい。


あー、辞めたい。コイツの友達辞めたい。どっかに辞表落ちてねーかな。


イライラを必死で抑え込みながら、なんとか祥吾の話に付き合う。


「とにかく、頼むから一緒のクラスにしてくれ。俺の胃が死ぬ」


「分かった、おけ、把握、理解」


祥吾は相変わらず、無邪気な笑みを浮かべているが、その笑みがなんだか俺を煽ってるようにしか見えなくなってきた。


う~ん?そろそろ怒っちゃうぞ~?


「絶対分かってねえな?」


「大丈夫だってー。


それとも義明は俺が友達との約束を破るとでも思ってるの!?ひどい!!」


「うん☆」


当たり前だよな?


と言わんばかりにそう答えた俺の顔は、これ以上ない程の満面の笑みだったことだろう。



まあどう振る舞うにせよ、女子の輪の中には溶け込めないと詰むからなぁ……


どうせなら、外を出歩いている今、女として振る舞う練習をするべきな気がする。


「それはともかく、女としてバレないための作法くらいは必要なんじゃない?


くしゃみを我慢するとか、屁をこかないとか、語尾に気を付けるとか」


「それはあるな。……あるね。


 ……。ねぇ、これ死ぬほど面倒くさくないか?」


「別に今はいいけどな。 絶対にノーミスは無理だから、いかにダメージを抑えられるかでしょ」


「じゃあサポートの練習しようぜ。今から俺が男っぽい振る舞いするから、義明がフォローして」


「違うんだよなぁ、そうじゃないんだなぁ」


なんでこう、俺限定で物事を素直に受け取るのが苦手な子なんでしょうね?


そんなところで俺を特別扱いしなくていいんだよ。


「え?ノーミスは無理ってお前が言ったじゃん?」


「お前一休さんみたいな揚げ足の取り方するよな」


そんなことを話し込んでいる間に中心街行きのバスが来て、俺たちは中心街に向かった。


今までの俺たちのノリで喋ったら、赤の他人だらけのバス内で間違いなく色々とバレてしまうので、バスの中では二人とも無言を貫くことにした。


何もしないのも退屈なので、ズボンのポケットからスマホを取りだして、女らしい振る舞いについて調べてみた結果、これは男には無理ゲーであるということが判明した。


これ意識し続けても男には絶対できないシリーズじゃん?


というか、女性視点でみてもなかなかに難しいものばかりではないだろうか。


でもまあいっか。


俺は嫌な思いしてないから。

書きたいことをいろいろ詰め込んだ結果、デートだけで2万文字くらい書く羽目になったので、流石にそれはアレだと思って、一旦計画を見直しました。嘘ついてごめんなさい。


その場のノリで書き足すことが多すぎてだいぶんプランが破綻してますが、まあ何とかします。


日本語の計算ミスって表現好きなので入れてみました。多分使い方はこれであってるはず。

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