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親友が女になっちゃったので全力で愛でたいですが。  作者: 落単 竜念
昨日の自分と今日の自分は、似て非なるものなのかもしれない。
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真実を探して

面倒な物事はこの世に腐るほどあるが、最も面倒なのは自分の心のコントロールなのかもしれない。


人を好きになるという言葉の聞こえはいいが、その実は、案外自分が相手に釣り合うかどうかを内心で葛藤して、その自己評価を上げられるかどうかの戦いなのかもしれない。

月曜日の朝がやってきた。


いつものアラームと共に目を覚まして、祥子の姿を探したけれど、彼女はもう自分の部屋に戻っていたようだった。


上半身だけを起こしてぼけーっとしながら、昨日の夜の出来事をもう一度脳内で反芻する。


昨日の最後のあの温もりは多分キス……なんだと思う。


その感触は覚えていないのに、その記憶は忘れようとしてくれない。


温もりを感じたその部分だけが俺の身体から切り取られてしまったかのように未だに熱を帯びているような気さえする。


そもそも、深夜にあんなに無防備な姿を晒しながら男の部屋に来ている時点で、アイツもなかなかにとんでもないことをしてきやがった。


一歩間違えば俺に襲われていたかもしれないというのに。


俺にそんな度胸はないと決めつけていたのか、あるいは、もしそうなったとしても構わないということだろうか。


多分両方だろうな。あら、もしかしなくてもなめられてる?



とにかく、祥子は自分に出来る最大限のことをして、俺に迫ってきたのだ。


流石に、ここまで直接的にアプローチを受ければ、その行動が、「覚悟を決めろ」という意味なのは嫌でも理解できてしまう。



いや、「俺が祥子の告白を受け入れるための覚悟を決めろ」という方がもっと正確だろうか。



だって――



俺の思い浮かべている未来にも、彼女の思い描く未来にも、俺の告白の答えは「YES」しか存在しないのだから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



いつもと同じ速度で歩き、いつもと同じような会話をしながら、学校へと向かう。


普段と変わらないような2人の時間が流れていても、それは微妙に今までとは違っていて、俺に立ち止まらせることを許そうとはしてくれない。


お互いがその存在を異性として認識してしまったときに時折流れる一瞬の静寂が、その事実を強く訴えかけてくるような気がした。


祥子が俺に向かって笑う度に、その顔が昨日の情景と被って上手く冷静になることが出来ない。


昨日は悪戯好きの子どものような小悪魔な笑みを浮かべていたというのに、今朝は純白な天使のように素直な笑みを浮かべられて、


俺の感情が、その笑顔の落差に面白い程に揺れ動いてしまう。


くそっ、なんでお前相手に俺の心が乱されなきゃならんのだ……。


今朝の俺は、いつもの風景を目に焼き付けながら、心の平静を保つのに必死だった。


そうして必死に保っていたはずの平穏は、またしても別の方向から破られることになる。




それは、学校まで着いて、靴箱で靴を履き替えていた時だった。


「あっ」


隣で同じく靴を履き替えていた祥子の足元に、一通の手紙が落ちていた。


!?


こ、これは、もしや。


アニメや漫画なんかではよく目にするけど現実では滅多に目にしないと噂のアレか!?


「まさか、それは、もしかして、恋文、というものでは、なかろうか?」


動揺のあまり、何故かカクカクとした言い方になってしまった。


お、落ち着け、俺。


「う、うん。どうやら、そうらしい、ですよ?」


お互い様だったしなんなら伝染していた。


慌てるな、こういう時は、まず、いつも通りの行動を取ることが一番だ……。


コイツの行動から学んできたことを活かして、まずは心を落ち着けるべく、地面に置きっぱなしの靴を靴箱に預けてスリッパを履きながら再び隣を見ると、


祥子は二つ折りになっていた手紙を開き、じっくりとその中身を読み込んでいるようだった。


すぐに声をかけたかったけど、あまりにも真剣に手紙を見つめるその瞳を前にして俺が声をかけるのは無粋な気がして、


俺はじっと祥子がその手紙を読み終えるのを待つことにした。


手紙のあらかたを読み終えて、ふぅ~、と祥子が一息ついたところで、俺はようやく口を開く。


「んで、本当にそれは、ラブレターだったのか?」


「うん、そうみたい。」


未だに慌てている俺とは対照的に、祥子は既にその動揺を収めているようだった。


「そ、そうか。う、受けるのか?」


まるで負けヒロインの幼馴染のように、みじめなセリフが口から零れてしまう。


「勿論、断るつもりだよ。


でも、この告白は受けることにする。」


「え?」


予想に反した答えを聞いて思わず出てしまった素の本心に、祥子の言葉は痛いほど突き刺さった。


「自分の思いを頑張って、伝えてくれたんだから、せめてそれには答えないとその想いに失礼だよ。


それは、今の私が一番身に染みて分かってるから」


「……っ。」


何も言い返せなかった。



そこに行ってもし気が変わったらどうするんだ、とか、


もしその男に強引に迫られたら大丈夫か、とか、


掛けたい言葉はいくつもあったのに。


俺にはその資格がない、と言われているようだったから。


昨日の行動で、言葉には出さずともその意図は理解しているつもりだったけど、こうしてハッキリとその意図を言葉に直されてしまうと、


俺の逃げ道を塞がれてしまったかのようで、上手く形容できないもやっとした後ろめたさや罪悪感が心に募る。


「あ、ああっ!


勿論、義明が私のことを考えてるから答えもまだ考えてるんだなっていうのは分かってるんだよ!?」


さっきの自分の言葉に気づいたのか、祥子からもフォローを入れてくれたけど、俺にはさっきの言葉の影が未だに残っていた。


今のも、きっと祥子の本心なのだろうけど、


今のが本心であるなら、さっきの言葉もまた本心なのだから。



靴箱から教室に移動するまでの間は、先程まで祥子に支配されていたはずの頭の中が、また別のことに支配されてしまっていた。


祥子はそんな遊びで付き合うようなタイプじゃないと分かってはいないし、断ると言ってくれた。


付き合うようなことは99.9%ないだろう。


それでも、脳が残りの0.1%のもしもを考えることをやめてくれない。


もし、何かの間違いで他の男と付き合うことになったら?


その情景を想像しようとして、頭を振ってその幻影を振り払う。


だけどまだ、告白の返事をしていない俺に、祥子と本気で向き合うことから未だ逃げてる俺に、バチが当たるかもしれないと警鐘が鳴り響いて止んでくれないのだ。


そんな憂鬱な気分になりながらも、いつものように2人並んで教室に入るのだから、中々に俺も自分に都合のいい奴である。



まあ、隣のやつは、更にいつも通りだけどな。



「今日ラブレター来てたー」


あっけらかんと、祥子は友達の前で言い放った。


「え!?マジ!?」


「うん、マジだよ。」


「え!?え!?どうするの!?受けるの!?」


思わずノリノリになって、友人たちもその話に噛みついてくる。


あれ?


人の思いを大事にするんじゃなかったんですかね?


拡散しちゃダメだと思うんですけど??


「受けないよ、意中の人じゃないもん、ねー?」


そんな俺をよそに、またしてもノリノリになってきた祥子は、そう言いながら後ろの俺も巻き込んできやがった。


うーん、この会話のボールは敬遠球くらいですね。こんくらいならまだ俺のバットがなんとか届く。


「いや、ねー?じゃなくてだな?


その話を俺に振ってどうしたいんだ?」


「ん?告白の返事を急かしてる」


「っ……。」


いきなりど真ん中剛速球を放ってきた。


いや、まあ言っていることの理論はおかしくないよ、それはおかしくないけどさ。


速すぎて打てねーよこんなの!!


心の中で冷や汗をかきながら、目線を祥子の後ろに逸らすと、生暖かい目線が後ろから飛んできていた。


やめて!もう俺のライフは0よ!


別に俺の失態ではないけど、その話をみんなの前でされるのは非常に心臓に悪いので、なんとか話題を変えようとしてみる。


「なぁ。俺、何度も言ってると思うんだけどさ。


その話、ここでするのやめてくれないかな?


俺思わず恥ずかしすぎて蒸発するよ?」


割と本当です。こんなに生暖かい目でずっと見られたら思わず昇天しそうです。


「やめてよ、後追いしちゃうじゃん……。」


「そのヤンデレ路線やめろ。あとツンデレ路線もやめろ。お前の性格でツンデレされると死ぬほど頭使う羽目になるから」



「え、頭を使うツンデレって何……?」と、後ろでつぶやく声が聞こえた。


むしろこっちが知りてえよそんなの。


「じゃあ全力でデレデレするわ。しゅきー」


何故かキス顔で迫ってきたので、ノータイムでアイアンクローをお見舞いしてあげた。


「ああ゛いででええすんません調子に乗りすぎましたあぁぁ」


どうみても反省していないけれど、まあこれがいつものやり取りなので気にしないことにした。


……。


思わず二人でいる時と同じような行動をとってしまったが、ここは学校の教室である。


その一部始終は後ろの方々にもバッチリ見られていたようで、何故か生暖かいを通り越して鋭い視線が俺へ向けられてしまった。


「……ねえ、二人って本当にまだ付き合ってないの?


もし気づいてないなら教えてあげようか?


それを付き合ってるというんだよ?」


「違う、これは俺たちの勝負なんだ」


流れるように言い訳をして、俺はまたしても逃げてしまった。


言われなくても分かってるさ。そんなことくらい。


今だって、ちょっとでも気を抜けば多分好きになってしまうに違いないのだから。


だけど、今の俺はその好きになる理由をまだ探している最中なのだ。


恋は理屈じゃない、って言葉もある。


付き合ってから好きになったって遅くないはずなのに、なんで俺はそんな理由を探さなきゃ満足できないんだろうか。


はぁ、こんなに面倒くさい性格だったかなぁ……。


いや、そもそも俺をこんなに面倒な性格にしたのはアイツだ。


よって俺は悪くない。


そんなことを考えているうちに、気づけばさっきの不安など頭から吹き飛んでいた。

ふう、ワールドカップは見てるだけで面白いですね。


義明くんの心の変化とか、もうちょっと鮮明に書けたら面白いんでしょうけど、まだまだ実力不足だな……。


と痛感させられております。



次回の更新は6/20を予定しています。


一日平均1000アクセスだったのが最近は2000アクセスくらいになって、じわじわ増えてる感じも好きですが、


やはり、ドーンと1万アクセスくらい稼いでみたいものですね。(いつもの承認欲求丸出し枠)



それでは、今回も、ありがとうございました!!

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